表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『全属性勇者は魔王がいない世界で、殺された勇者の代わりに怒る』  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/12

『全属性勇者、別の“偽勇者”が現れる』

坂上健吾は、自分より勇者っぽい勇者を見た。


(負けてる)


 町の広場。


 マント。

 光る剣。

 決めポーズ。


 群衆が沸いている。


「勇者様だ!」

「今度こそ本物だ!」


(今度こそって何)


 名乗りはこうだ。


七属性勇者・アルディオス


(増えてる)


 アルディオスは派手だった。


 火を噴き、

 雷を落とし、

 光で空を裂く。


 演出が、うまい。


(俺、演出ゼロだもんな)


 健吾は後ろで井戸を澄ませていた。


 誰も見ていない。


(まあ、いいか)


 噂は広がった。


「前の勇者は偽物だったらしい」

「無職だったしな」


(事実だけど、悪意ある)


 役所が来た。


「坂上健吾」


「はい」


「比較のため、立ち会ってください」


(嫌な単語)


 公開検証の日。


 観衆、満員。


 アルディオスは堂々としている。


「この世界を、俺が導く!」


 拍手喝采。


「次、坂上健吾」


 健吾は一歩出た。


「……何すれば?」


「奇跡を」


(雑)


 アルディオスが言う。


「君は、もう終わった勇者だ」


 健吾はうなずいた。


「はい」


(否定しない)


 検証は進む。


 アルディオスの魔法は――

 全部、見た目だけだった。


 火は熱くない。

 雷は痛くない。

 光は眩しいだけ。


(あ、これ……)


 健吾が水を澄ませると、

 観衆は初めて静まった。


 効く。


 ただ、それだけ。


 真実はすぐ割れた。


 アルディオスは、

 魔道具と話術の塊だった。


「なぜ、勇者を名乗った」


 健吾が聞く。


 アルディオスは笑った。


「勇者は、需要だからだ」


(正論やめろ)


 群衆は去った。


 誰も、謝らない。


 次の期待を探している。


 夕暮れ。


 健吾とアルディオスは並んで座った。


「君、本物なんだろ」


「はい」


「損な役だな」


「慣れてます」


 アルディオスは言った。


「俺は、派手な嘘を売った。

 君は、地味な本当を出し続けた」


「どっちが正しかったと思います?」


 健吾は少し考えた。


「……まだ分かりません」


 偽勇者は去った。


 本物は、残った。


 名前は呼ばれないまま。


 全属性勇者は知った。


 人は、救いより“物語”を信じる。


 だから今日も、

 物語にならない場所で、井戸を澄ませる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ