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『全属性勇者は魔王がいない世界で、殺された勇者の代わりに怒る』  作者: 南蛇井


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3/12

『全属性勇者、冤罪をかけられる』

坂上健吾は、朝から嫌な予感がしていた。


 理由は簡単だ。

 町の人たちが、やけに距離を取っている。


「……おはようございます」


「……」


(挨拶が、返ってこない)


 昨日まで「勇者様!」「井戸の神様!」と拝まれていたのに。


(あ、これ、何か起きたな)


 昼前、兵士が三人やってきた。


「坂上健吾だな」


「はい。無職です」


「無職は聞いてない。同行しろ」


(聞いてほしかったな)


 連れて行かれたのは、町の牢屋だった。


「今朝、町長が殺された」


「え?」


「死因は――魔法」


 健吾は思わず天井を見上げた。


(俺、また何もしてない)


 取り調べは雑だった。


「昨夜、町長の家の近くにいたな」


「井戸掃除です」


「魔法を使ったな」


「水を澄ませました」


「全属性だそうだな」


「はい。いらないですけど」


 兵士たちは顔を見合わせる。


「お前しかいない」


(理屈が雑)


 牢屋は湿っていた。


 健吾は壁にもたれた。


(魔王を倒すための力で、牢屋暮らしか)


 逃げることは簡単だった。

 地を割ってもいいし、

 闇に溶けてもいい。


(でも逃げたら、もっと面倒だ)


 夜。


 牢の外で、誰かが声を落とした。


「……あの」


 ヒロイン――井戸の水を汲みに来ていた娘だった。


「私、信じてます」


「ありがとうございます。でも、それだけで十分です」


 健吾は笑った。


(信じてもらえると、逆に重い)


 翌朝。


 健吾は兵士に言った。


「犯人、町の外にいます」


「なぜ分かる」


「昨夜、町の水が濁りました」


「それが?」


「水は、嘘つかないんですよ」


 健吾は説明した。


 町長は毒殺。

 魔法痕は、後から付けられた偽装。

 犯人は、町長に補償を打ち切られた商人。


 真犯人はすぐに捕まった。


「全属性勇者が犯人だと思った……」


「分かります」


 健吾は素直にうなずいた。


「俺、見るからに怪しいですから」


 釈放。


 町の人たちは気まずそうに頭を下げた。


「疑って、すみませんでした……」


 健吾は答えた。


「次は、ちゃんと話を聞いてください」


(俺の前世でも、これなかったな)


 その夜。


 健吾は井戸のそばで水を澄ませる。


 世界は平和だ。

 でも、人は疑う。


(魔王より、厄介)


「……まぁ、慣れてるけど」


 全属性勇者は、今日も救われない。


 罪を着せられただけで、何もしていないのに。

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