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顔面で殴る皇女様ズ  作者: 月森香苗
ドラスニト王国編

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56 「生きた人形と呼ばれる皇女」③

 ルピナスは本が好きだ。幼い頃から講義の為に与えられる本を読み耽り、王宮の図書館の本も片っ端から読み続けた。

 神の加護は『速読』と『暗記』。一度読んだものを忘れることが無いルピナスの力はかなり重宝されていたが、長女のアナベルも『暗記』を有していたので唯一無二ではなかったから国外に嫁ぐ事も出来た。

 そんなルピナスは大陸中の本を集めたいという気持ちが強かった。婚約者のジェレミーはルピナスの為に本を集めると約束してくれたし、婚約してからはより一層収集量を増やしていたけれど、ルピナス個人も集めていた。

 とは言えど帝国の皇女が本の為にふらふらとする事は出来ない。

 ならば方法は一つ。手足となる者を使って派遣し、珍しい本を買い集めることであった。

 ルピナスには五人の収集の為の『手足』がいる。彼らをルピナスは『リベル()』と呼んでいた。

 『リベル』の者達は帝国皇族が使う隠密部隊からルピナス用に振り分けられたもので、戦闘技術より学術を極めた者が多い。必要な本かどうかを理解するには知識が必要だったからだ。

 そして買取の為の交渉術にも長けていた。

 そんな『リベル』をルピナスはもう一つの用途でも使っていた。


 即ち、情報収集である。

 皇族や貴族では分からない平民の間に流れる噂も馬鹿には出来ない。些細な事でも時間が経てば大きな出来事になる事はよくある話だ。

 それもあってルピナスは『リベル』に本と情報の収集を命じていた。

 ルピナスは『リベル』からの報告書が好きだった。彼等は主のルピナスの好むものを知っていて、まるで物語のように仕上げてくれるのだ。

 大切な情報を入れこみながらの物語調の報告書は一見すれば分からないだろう。本棚に並べてもそれが報告書だと露呈した事は一度もなかった。

 魔法が使えるようになった時、ルピナスはトレニア経由で知り合ったサーヤという女性から「魔法は自由」と聞かされた。

 最低限の規則を守れば魔法陣は自由に構築が出来る。

 そこでルピナスは膨大になってきた報告書を魔導書のように一冊にまとめられないかと考えた。

 全てを持ち歩くことはとてもでは無いが、一冊の本の中に纏めることができれば?そしてそれを自由に閲覧できるようになれば?

 好奇心で始まった魔法陣構築は、一年半の歳月を経て完成した。

 表紙、紙、インク、全てに拘り抜く事で完成した『本』にはサーヤのアドバイスもあり「精霊」が宿っている。この精霊のおかげで本の中に世界が生まれ、精霊に頼むことで望む文章が紙に浮かび上がるような仕掛けとなった。

 ルピナスの為の本は報告書のまとめにしか使わないと決めている。既存の本はそれその物に魅力がある。複製するなどの野暮な事はしたくなかった。


 魔導書とは別のその『本』はルピナスの武器であった。


「私の『リベル』が集めてきた多くの噂や事件、秘密などもここに納められています」


 『リベル』に所属している者の正体を正式に把握しているのは、皇帝と皇后、隠密部隊の隊長の三人だけで、ルピナスも変装した姿しか知らない。しかし、別に問題がないから気にしたことは無い。

 一応基準はあり、人の印象に残りにくいのが大事なのだそうだ。ルピナス達のような顔だけで相手の頭をぶん殴るようなタイプはまず無理だという。

 それに、地味な顔の方が化粧などで変装がしやすいというのもある。

 『リベル』としてルピナスの前に出てくるのは五人だが、彼らは更に独自の配下や協力者を有している。表向きの立場として商人をしていれば、商人仲間はいるし、様々な立場を彼らは持っている。

 おかげで、他国にすら潜り込んで民間レベルの噂を拾ってくるのだが。


「面白い噂があります。一つ目。王太后イゾルデが産んだ国王ゲルディオは実は先王の子ではない。二つ目。王太子グランヴィルは国王ゲルディオの子ではない。と言うものです」


 ルピナスが本の精霊に願うと、報告書が浮かび上がる。

 あくまでも噂でしかない。平民が貴族、ひいては王族のとんでもない醜聞を噂とはいえ流すなどありえないのだが。


「グランヴィルはまあ分かりませんが、イゾルデとゲルディオに関しては、貴族も関わっています。約四十年前に処罰された家があります。フロリッジ子爵家」


 今はもうないその家のことをダーレン大公ヴォルグは知らなかったようだ。


「きっかけはイゾルデが懐妊した頃の話で、嫡男が自死し、娘がイゾルデに不敬を働いたそうです。次代の国王になるかもしれない王妃を損ねようとしたとして責任追及がなされ、最終的に一家諸共処刑となりました。裁判はなかったそうですよ」

「なんだと……それは、許されることでは無い!どんな者であろうと、裁判無くして処刑は実施出来ないはずだ!」

「でも、実際にそうなのです。その嫡男の絵姿も何もかも処分されていました。しかし、何枚かは残っていました。ええ。嫡男ですから、見合い用の絵姿が。イゾルデの事を調べる為に『リベル』に頼んでいたのですが、無事に手に入れました。これです」


 実物は別の場所に保管されているが、情報はこの本に読み込ませているので本の精霊はそれを新たなページに表示する。


「……父上と、同じ色だ……」

「ええ」


 その嫡男はそれなりに遊びはしていたものの、引き際を見極めるのは上手く、その遊びも基本的には未亡人などで問題を起こすタイプではなかったそうだ。

 しかし、ある時を境に思い詰めるようになったある日、自死をしたという。だが、その時の状況は些か不審な点が合ったそうだ。


「……四十年近くも前のことを、何故知っている者が?」

「どこに住んでいるかなどは内密にしますが、フロリッジ子爵家には病弱だった娘がいました。当時十四歳。生まれた時から体が弱くて表に出ることはなく、療養は別の場所でした。嫡男が自死する前、その妹様は手紙を渡されていました。そこには、自殺に見せかけて殺される可能性。もしも死んだ場合は正体を隠し、他国に渡れ、と。イゾルデの名前もあったそうです。彼女は子供だった。家族が処刑され、復讐する術もなかった。他国に渡り何とか体調も持ち直し、それでもこの四十年忘れたことが無かったそうです」


 何が起きたのかは分からない。しかし、間違いなくイゾルデが関与している。


「なので、私、イゾルデの罪を暴きます。今の王家が正当でないならば、王の座は正しき場所に戻さなければならないですから」


 王の血を継がぬ者が玉座に座る事は許してはならない。

 王の冠は正しき場所に戻さなければならない。

ミステリーとかではないので、さくさくと情報開示はしていきます。

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