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顔面で殴る皇女様ズ  作者: 月森香苗
南の辺境伯領編

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46 可愛いに全振りした元皇女様①

カルミアの過去についての話になります。

カルミアの母チェルシーも出ます。

 カルミアはアンザス帝国の第三皇女として、第三側室チェルシーから生まれた。

 ホワイトブロンドの髪の毛に皇族特有の紫の目をした三人目の皇女、五人目の皇帝の子は元気にすくすくと育った。

 皇后が産んだ長兄ガルディアスとは十歳、次兄ナルディスとは八歳の年の差があり接する事はほとんど無かったが、六歳年上の長女アナベルと五歳年上のトレニアは同じ宮で暮らしていたので寂しさを感じたことは無かった。

 それに、第四側室から生まれた一つ年下のルピナスもすぐに生まれ、離宮は賑やかだった。

 後継者問題など生まれようもない位に後宮内では皇后と側室の関係ががっちりと出来上がっており、皇后を押し退けてのし上がれと命じた側室の家はいつの間にか権力を奪われている、なんて事もあった。

 そもそも、側室四人は皇后強火過激派同担大歓迎、と言う魔法の言葉を転生者が零したほどに皇后への忠誠心が強い。

 側室として後宮入りした四人は様々なしがらみを抱えていた。


 カルミアの母チェルシーはとても愛らしい顔で生まれ、それの所為で金に困窮した実家は帝都に作られている教育期間である学園で、金のある高位貴族の令息を籠絡してこいと命じた。

 チェルシーは臆病な娘で、そんな命令に従いたくは無かったが、その当時の彼女にとって親は絶対であり恐怖であった。

 しかも、歳の近い兄が見張っていて、チェルシーが男を誑かすような行動をしなければ実家に報告し、親からの叱責の手紙が積み上がるほどに来た。

 仕方なく行動に出れば令息達は下心満載に近付き、チェルシーから迫ってきたのだからと体に触れてきたりした。

 親からの命令と兄の監視から逃れられない弱い女の子でしか無かったチェルシーは、ふしだらの烙印を押されていた。

 令嬢達には汚いものを見る目を向けられ、令息達からは身もちの悪い使い勝手の良さそうな女として見られ、チェルシーの心は確実に削られて行った。

 そんな時に出会ったのが、皇太子トラディアスの妃、皇太子妃フィオレンティーナであった。

 公務の一環で学園の視察に来ていた彼女は、下位貴族の令嬢が令息達を惑わせていると聞いて、それはいけないことだとすぐに調べた。

 噂は誇張されるものであり、真実の割合は少ないことが多い。フィオレンティーナは自らが調査して知り得た真実しか信用していなかった。

 チェルシーの置かれている環境は直ぐに判明し、フィオレンティーナは哀れに思った。可愛いというのは時に重い足枷となる。チェルシーが割り切って武器に出来るような性格ならば良かったのであろうが、臆病な彼女には荷が重すぎる。

 十五歳の少女に娼婦のような真似をさせる親と、それを当然と思い監視役を務める兄への嫌悪と侮蔑をフィオレンティーナは隠さなかった。

 この時、フィオレンティーナは二人の皇子を産んでおり、その地位は磐石なものだった。更に、後宮には二人の(しがらみ)を抱えた側室が入っていた。

 最初に入った第一側室は皇女を産んだばかりで、第二側室は公にはしていないが懐妊している事が判明していた。

 皇太子の後宮は皇太子妃が管理するものであり、使用人の選別もフィオレンティーナの役割であった。二人の皇子と一人の皇女がいる上、第二側室は妊娠中。

 人手が足りなかったのもあり、フィオレンティーナはチェルシーに目をつけた。

 令嬢は教育機関の学園を卒業せずとも問題がない。そもそも令嬢にとって学園とは社交の練習の場であり、出会いや働く予定の令嬢にとっては就職先を探す為の場所である。

 チェルシーが中退したからと言って貴族でなくなる、なんてことは無い。

 フィオレンティーナがチェルシーに目をつけたのは、臆病ではあるがそれ故に心優しいところだった。人を傷つけるような物言いは出来ない。

 だからこそ、令息達がのめり込む土台を作ったとも言える。承認欲求の強い者ほど、チェルシーが柔らかく全てを肯定してくれる言い方に溺れた。

 チェルシーは優しすぎた。臆病で親と兄を恐れ、機嫌を損ねたくないし、令息達を怒らせたくなかったから。だから柔らかい物言いで傷つけない言葉を選んで。

 チェルシーは女しかいない後宮で働いた方が良い、とフィオレンティーナは判断した。あのままでは不幸にしかならない。下位貴族故に高位貴族の令息の愛人にされる未来しか見えなかった。

 チェルシーに接触したフィオレンティーナにより、チェルシーは家から引き離された。皇室の権力をもってチェルシーを除籍させ、信頼出来る家に養女にしてもらい、そのままフィオレンティーナはチェルシーを後宮の使用人として雇った。

 十五歳のチェルシーは後宮で働く使用人の中で最も若く、その為に皇子の遊び相手になった。

 ガルディアスの初恋がチェルシーだと知るのは彼の母であるフィオレンティーナだけだろう。

 フィオレンティーナに救われたチェルシーはフィオレンティーナに対しての敬愛と忠誠心がとにかく高くなった。

 何も知らない頃は、皇太子はお妃様がいるのに更に側室お二人まで召し上げて、なんてこと。と思っていたのだが、内情を知るとトラディアスの所為では無いのだな、とか、側室様方の心をお救いになったフィオレンティーナ様は流石です、と更に忠誠心が高くなった。

 チェルシーが三人目の側室になったのは、彼女の生家が関与していた。皇太子妃が目を掛けているとは言っても、使用人でしかないチェルシーの身に危機が訪れた。

 フィオレンティーナはチェルシーに一つの道を示した。側室になる道である。

 皇族は無闇に種を広めてはならない。その為、お手付きになった女性は後宮に入り、外に出ることは出来なくなる。外出の際には周囲を厳重に警護されることになるし、生家からの接触は完全に断てる、と。

 チェルシーはトラディアスの事は好きでも嫌いでもなかったが、側室になればフィオレンティーナやお慕いし姉のように思っている側室達とずっと一緒にいられる、と言われて即座に頷いた。


 そうして生まれたのがカルミアである。

 私はフィオレンティーナ様に救われたのよ。と母から何度も聞いていたカルミアは皇后フィオレンティーナを母と同じように尊敬していた。

 そんなカルミアが「武」の神の加護を受けているのに気付いたのは皇后であった。

 フィオレンティーナは観察眼にも優れており、カルミアの少しの動きに違和感を覚えてカルミア付きの侍女達に観察させた。

 そうしてカルミアの力強さや体力が判明した。神の加護は必要だからこそ現れるとされている。

 今代は皇女の誰かが辺境伯家に嫁ぐ事になっている。つまり、これはカルミアがそうなるべきという神の意思ではないのか、とフィオレンティーナは判断した。


 カルミアは幼い頃、自分の力を持て余して、いつでも不機嫌だった。有り余る力を無闇矢鱈に振りかざしてはならないと言うのは無意識でわかっていた。だからこそ発散出来ずに不満だけが蓄積していた。

 フィオレンティーナが気付いてくれたお陰で、カルミアは兄達に混じって剣の稽古が出来るようになり、やっと体の中のもやもやが無くなったと喜んだ。


 不満が解消されたカルミアは何時でも笑顔になり、そこでカルミアの可愛さが表出した。

 くりくりと大きな目。長い睫毛。きめ細やかな肌。頬は紅を乗せていないのにほんのりと赤い。小さな口はぷるぷるしていて、とにかく可愛いが詰め込まれたような顔をしていた。

 妹のルピナスも可愛いのだが、ルピナスは表情があまり変わらないぼんやりとしたお人形さんのような可愛さで、カルミアは笑顔満点で上目遣いをしたらころりとなってしまうような可愛さだった。

 姉二人がクールビューティとか妖艶な美女に対して妹二人は可愛いに全振りしたような顔をしていた。

 子供だからこその可愛さかと思えば、年々可愛さを増す一方で、カルミアは同年代の令息達の初恋を尽く奪い尽くしたが、全く興味が無かった。

 この頃のカルミアは剣の訓練が楽しくて男の子に興味は欠片もなかったのだ。

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