女神再臨 シギアの力が半分に
「えっ!」
突如、女神は再臨した。
まばゆい光はシギアだけでなく集まったメンバー皆の目を眩しくさせた。
「シギア」
「は、はい!」
「あのシギアが震えて怯えてる!」
「シギア、貴方は不手際で味方の戦士を死なせてしまいましたね」
「はい……」
「罰として力を半分にします」
「ええ!」
シギアの体が光に包まれ本当に力が吸い出されるような現象に見えた。
「うわ!」
レオンハルト達は駆け寄った。
女神は説明もなく姿を消した。
「力が入らない」
「どうしたんだ」
「レオン、俺と力比べしてくれ」
するとシギアはへなへなと負けてしまった。
「本当なのか!」
「そうみたい」
この話は場にいなかった者たちにもすぐ広まった。
「あいつは力を失った?」
「ざまあ! 罰が当たったんだ!」
家臣モイドンはシギアの度重なる問題を受け特別教育をする事になった。
ワンザからの通達で「厳しすぎない様に」と言われたが。
その為3人の騎士を呼び出した。
「ダルン!」
「マーシー!」
「ウィッグ!」
「はい!」
と3人の騎士は整列し答えた。
ダルンは太く体がかなり大きく、マーシーは細く口元が意地悪そう、ウィッグは不良すれすれの雰囲気の青年だった。
「たのむよ、3人共。あのアホ勇者に目に物見せてやれ」
モイドンが言うと3人はにやりとした。
シギアは朝起きて部屋で顔を洗おうとしたが、何かに引っかかって躓いた。
「いて。これはロープ。誰かが仕掛けたのか」
そこへダルンが凄い声を出しながらドアを開けた。
「おい起きろ! 貴様のお客様待遇はもう終りだ!」
「……」
シギアは言いかえさなかったが不快そうだ。
しかしどこか自覚している表情もした。
恨まれ憎まれているだろうと。
そして急に騎士達と午前中訓練をする事になった。
しかしこれがひどい。
歩いている所にわざと体当たりしたり、足を引っかけたりした。
「はーっはっは!」
大声の笑いと嘲笑が浴びせられる。
何度も倒され、その度騎士達に笑われた。
申し合わせた集団いやがらせの様だ。
騎士達は心底楽しそうだ。
陰湿なのは大笑いする人間とひそひそくすくす笑う人間の2タイプがいる事。
ただ、シギアは怒りをなるべく顔に出さないようにし無抵抗だった。
やれやれ、と言う気持ちだった。
さらに、次の柔道の練習でも蹴られたり倒れた所を数人がかりで蹴られた。
ここでも一応シギアは怒りを見せず、やり返さなかった。
それを一部の騎士がぼそっと噂する。
シギアは「ちぇっ」と言い溜息をついた。
そして虚しい顔をした。気づかれない様に。
先輩騎士に悪意的に何度か投げ飛ばされた。
シギアは悔しさを抑え、虚しさを吐き出すように溜息をついた。
ダルンは自信満々で続ける。
「今日から俺達と『教育計画』のプログラムをしてもらう!」
「教育計画⁉」
威圧の様で妙にたのしんでいる節がダルンには感じられる。
さらに勢いを増し続けた。
「そうだ! 貴様の歪んだ精神を叩き直すんだ俺達が!」
マーシーも同じように威圧と勢いをまとい、どかりと入って来た。
ダルンの後追いの様に言う。
「そうそう、貴様のせいで怪我をしたロンバス先輩は入院中だ」
「場所は」
それを気にしてはっとしたシギアは真剣な表情で聞いた。
「貴様が知る必要はねーんだよ!」
とウィッグは乱暴に言った。
「じゃあ、覚悟しとけ」
いきなり教育計画と言われ戸惑いながら、3人が出て行った後シギアはため息をついた。
そんなシギアの元にクリウが来た。
「力を失ったの?」
「あ、ああ」
「もう用済みね」
「え⁉」
信じられないクリウの態度だった。
そして翌日もシギアへのいじめは続いた。
「止めて下さい!」
「あ?」
かばったのはレオンハルトだった。
「やめて下さい」
「何だ逆らう気か? まあいい」
一応先輩達は去り道場は二人だけになった。
「どうした?」
「俺、もう必要とされてないのかな」
「何?」
「力をなくした俺には誰も用はない。生きてるのやめようかな」
レオンハルトはそれを聞き思い切り平手打ちした。
「!」
「お前はそんなに弱かったのか? 弱い人間だったのか? 勇者なんだろ! だったら自力で皆を見返してやれば良いじゃないか! これからなんだ!」
「これから……」
「俺も協力する」
「協力してくれるのか?」
クリウがやって来た。
「人が必要とされなくなるのは人格においてよ。能力によってじゃないわ」
「あれ?」
レオンハルトは笑った。
「クリウ、さっきは演技ありがとう。シギア、これから努力で皆の信頼を取り戻すんだ」