月見亭
私はログアウトをしてカプセルから出たあと、自室のデスクで掲示板などを漁っている。
へぇ〜色々な記事が載ってる。ギルド員募集とか動画、生配信とか色々とあるけど、やっぱり私の記事が1番多いな〜。
【俺色んなところの風景撮ってたんだけど一枚の写真にこんなのがあった。】
ん、なになに。……ってこの写真に写ってるの私じゃない!これは、初めてログインした時にたまたま映っちゃったの?プレイヤーネームが丸見えだし、黒ローブと白い仮面の姿が晒されてる。
まあこの格好をしているのは1人で探索とかしてる時くらいだし、開店する予定のカフェではまた別の格好をしているから正体はバレない。
トントン!
ドアの方からノック音が響いてきた。
「はい!だれだれ?」
「お嬢様。沢田でございます。」
入ってきたのは私の専属秘書の沢田だった。
「沢田。あなた確か私のお店の前で待機してたはずじゃ?」
「その事でご報告があります。」
話を聞くと、リリース帝国の帝都にある私のカフェ兼情報屋本店の立地の購入手続きが終わったそうだ。その他の各主要都市の支店の購入も完了した。
「それで、以前考えておくと言われていた店名に関してなんですが、既に決まりましたか?」
「うん、決まったよ。私達の店の名前は『月見亭』。これでよろしくね。」
「かしこまりました。」
お店の名前は『月見亭』。本当は『月美亭』にしようかと思ったんだけど、私の本名が『美月』で、これじゃあ勘のいい人から正体がバレるかもしれないから変えたのだ。
まあそういう事で、土地も買ったし内装とかは要望通りにお願いしたし、私はご飯を食べたあと早速ログインしましょうか!ーーー
《プレイヤー『ルナベル』様。『release world planet』の世界へようこそ。》
食事はカップラーメンで軽く済ませて、早速帝都の中心でログインした。
「なーなー!あれってもしかしてルナベルじゃね!?」
「いや、まじじゃん!黒いローブに白の仮面!しかも仮面の額のところに月のマークがついてる!」
うわ!容姿変えるの忘れてた!いや、でもこれ以外の服持ってないし……。とりあえず身を隠さないと、
「スキル『隠密』。」
私は隠密スキルで身を隠しながら路地裏の方にひたすら走る。
「はぁ〜。疲れた。」
まさかログインして早速バレるなんてついてない。最初からプレイヤーネームの表示を消しておけばよかった。……あれ?ここの路地裏、本店の近くじゃない?
気がつくと私は『月見亭』の本店がある裏路地まで来ていた。せっかくだし様子でも見てみようかな?
テクテクテクテク……。
「着いたんだけど……、ここであってるよね?」
最初に来た時は少しボロボロだったのに、いつの間にか外見は綺麗に整えられていた。まさにレトロな喫茶店のような見た目で、壁は茶色いレンガで、『月見亭』と書かれた看板がある。
私がご飯食べてる間にここまで進めたの!?こっちは時間の流れが違うとはいえ、ここまで早く進められるんだ!さすが私の部下たち!
「お嬢様。早速いらっしゃいましたか。」
「沢田!お疲れ様!」
店の中から沢田が出てきた。さっきまで私の部屋にいたよね?切り替えが早すぎるよ!
「ではお嬢様、早速中をご案内致します。」
沢田に案内され中に入ると、私の好みそのものであった。席はカウンターとテーブル、たくさんのアンティークにコーヒーを作る器具一式、蓄音機から流れる落ち着く背景音楽。
「完璧じゃない!よくやったね!」
「当然の事をしたまでです。続いては隣の部屋に案内致します。」
私は店の奥の扉の中へと連れていかれた。扉を開くとそこには地下へ続く階段がひとつ。下ってみると沢山の個室へと続く扉がある。
「ここが情報屋として使うスペースです。」
そう、地下は情報の取引として使うスペース。情報を買ったり、逆に売ったりすることが出来る。情報の規模によって値は変動し、貴重な情報だとおそらく何億もの値が付くだろう。
情報は各地に配属されている部下が今も集めており、ゲームがリリースされてまだ少しにも関わらず、莫大な情報が集まっている。
「部屋の案内は終わりました。それでは『月見亭』の制服を渡しておきます。」
「ありがとう!早速着替えてみるね!」
ここの制服は全員が黒シャツに灰色のズボンと白ネクタイ。着替えて見たけどめっちゃかっこいい!私の白髪赤目によく合ってる!白の仮面は外して素顔だけど、顔も違うし顔を隠さなくても大丈夫!
「よくお似合いですよ。」
「でしょ?私に似合うようにこの制服にしたの。」
こんな感じで店の案内は終わり、これからは話し合うためにカウンター席に座った。話し合いというのは扱う商品についてだ。コーヒーはもちろんだけどその他の食べ物も考えなければいけない。
「沢田はなにか意見ある?」
「まずは飲み物についてですが、コーヒー以外にもラテや紅茶は絶対に入れるべきです。」
まあそうだよね。コーヒーが苦手な人もいる訳だし、他のドリンクがなきゃ話にならない。
「食べ物はどう?」
「定番ですが、サンドイッチやパスタ、パンケーキ、オムライスなどでしょうか?それにデザートのケーキやパフェなども必要かと。」
「本当に定番ね……。」
まあ、今思いつくのはそれくらいだろうね。目にゆがありすぎても仕入先はまだないし、最初の方はメニューが少ない方がいいのかもね。
「まあ、料理は私と沢田が作るわけだし最初は定番メニューだけでいこうか。慣れてきたら徐々にメニューを増やしていきましょう。それに私はまだ料理人のスキルを取得してないしまずは作る所からだね。」
「私は既にある程度は取得しているので大丈夫です。」
沢田も私と同じでサブジョブが料理人だ。メインの職業が『糸使い』だ。糸を使って相手を攻撃したり拘束したりするんだっけ?まあ、顔はイケメンでいつも無表情だし、意外と似合ってるのかも?
「まあ、そういう事で私はこれから料理スキルの取得に入るから、沢田はレベル上げとかしてていいよ。」
「そうですね。私はまだレベル上げをしておりませんので早速行ってまいります。」
「はい、がんばってね。」
それじゃあ私は早速料理スキルの習得をしよう。
料理道具は厨房に一式揃ってるし買わなくていい。食材や調味料も一応揃ってる。揃えといてと言ったのは私だけど、それにしても私の部下は優秀すぎて困る。たまには隙でも見せてくれたりしないかね〜?まあ考えるのは一旦やめて、早速料理を開始しよう!
ガチャガチャガチャ!!
……まずい。私料理のやり方なんもわかんないかも。
現在のステータス
ーーーーーーーーーー
プレイヤー名『ルナベル』
プレイヤーレベル『26』
種族『影の吸血鬼王』
職業 メイン『暗殺者』
サブ『料理人』
HP『100/100』
MP『500/500』
STR『100(+20)』
VIT『0』
AGI『150(+20)』
DEX『40(+30)』
INT『0』
MND『0』
LUK『50(+40)』
SP『0』
スキル『カウンターLv7』『隠密Lv6』『弱点看破Lv4』
『加速Lv7』『忍び足Lv1』『投擲Lv1』『跳躍Lv1』
『ボーンスマッシュLv1』『影王の黒煙Lv1』
『影王の両腕Lv1』『影の決闘場Lv1』
称号『うさぎの虐殺者』『影王の討伐者』
『ジャイアントキリング』
装備『影王のローブ STR+10 AGI+20』『月の仮面』
武器『影王の短剣 STR+10 DEX+30』
アクセサリー『影王の耳飾り LUK+40』
ーーーーーーーーーー