始まりの森
「ここが私の新しい世界!」
設定が一通り終了し、お楽しみくださいという掛け声と共に魔法陣が現れ、別の場所へと転送された。
転送されたのは『リリース帝国』の『帝都』。発売前から発表されていたマップの1つで、最も注目されていた場所だ。
ワーワー!キャーキャー!
それにしても凄い人の数だ。大通りは歩ける場所が無いくらい混雑してる。とりあえずこの大通りから抜けないと何も始まらない。
「ふぅ。疲れた。」
人混みに流されるように色んな場所をぐるぐるしていたが、やっと人通りのない裏路地に着いた。
でも確かこの裏路地ってゲームが始まる前に決めた、私のカフェの予定地の近くなんじゃ?
「あれ?人がいる。」
カフェの予定地に行ってみると、黒のローブに白の仮面をつけた男が扉の前に立っている。あれはまさか私の従業員?
「ね〜。もしかして沢田?」
「その声はもしかして、お嬢様ですか!?」
やっぱりそうだ。立ち姿から見て、私の秘書の沢田だということは何となくわかった。
「沢田はなんでここにいるの?」
「もちろん、他の人に買われないためですよ。」
てことは、ゲームが始まってからずっとここに居たってこと?そんなすぐに買う人が出てくるわけないじゃない!
「現在、他の者がこの土地の購入手続きをしております。」
「もう手続きしてるの!?早くない?」
「いえ。お嬢様が快適にゲームを楽しむ為に当然のことをしたまでです。」
うちの社員は優秀だけど、私たちへの愛が重いんだよな〜。沢田達も楽しんだらいいのに。
「では、お嬢様は引き続きお楽しみください。」
「いや……。うん、わかった。楽しんでね。」
沢田達にとってはゲームをすることよりも、仕事の方が楽しいのだろう。楽しんでとだけ言っておこう。
テクテクッ……
とりあえず帝都の外れにある『始まりの森』という場所に来た。ここは初心者ゾーンって呼ばれてる場所で、低レベルのモンスターがうじゃうじゃ居り、主にホーンラビットが出現する。
と、その前にストレージに入ってる『初心者の短剣』を装備しよう。これは選んだ職業によって支給されるものが変わる。
「キュウ!」
ホーンラビット Lv1
わぁ!可愛いうさぎ!でも今からこれを倒すか……。まあレベル上げのためだ。しょうがない。とりあえずそこら辺に落ちてる木の枝でも投げてみよう。
ポイッ
ホーンラビットの体に当たった。HPバーは1ミリも減ってない。まあ木の枝だし当たり前だけどね。でもこれで私の居場所が気づかれた。ホーンラビットは直線的な突進しかして来ない。当たりそうになるのと同時に避けて短剣を突き刺そう。
「キュウー!」
クルンッ、ザクッ!
角が目の前に来るのと同時に体を回して首の後ろを突き刺す。モンスターにはそれぞれ弱点が存在していて、そこを攻撃する時、相手が弱かったり、人間だった場合に限り即死する。
《アイテムがドロップしました。》
これは『ホーンラビットの毛皮』と『ホーンラビットの角』?確かホーンラビットの角はレアドロップだ。一発目からラッキー!よし、このまま周りのうさちゃんは全部狩ってしまおう。ーーー
「キュウー!」
よし何匹か狩ったけど角がいっぱい取れた!初心者はLUKにステータスを振った方がいいのかもしれない。最初から稼げるようになるし。
《レベルが上がりました。Lv1→Lv2》
《スキル『急所突きLv1』を習得しました。》
《スキル『回避Lv1』を習得しました。》
おお!レベルアップ!それにスキルもゲットした!『急所突き』は相手の弱点を突く技で、『回避』はレベルが上がるに連れて回避率が上がっての硬直が少なくなる。これはいい収穫だ!
レベルが上がったからSPも10貰えた。これはAGIに全振り。LUKもいいけど、レアドロップしても私はお金もってるし……。
まぁいいや。とりあえず疲れるまでこの作業を繰り返そう。ーーー
ゲーム時間で8時間、現実だと1時間20分が経過した。流石にもう疲れたよ。ホーンラビットを同じ動作で狩り続けるなんてとてもじゃないけどもうやりたくない。でも収穫はあった。
レアドロップはもちろんだけどレベルが2から8に上がった。SPも60ポイント溜まったし、AGIに40、STRに20を降った。これでAGIは100になった。
スキルの方もレベルが上がった。同じ動作を繰り返したことで『急所突き』と『回避』は統合して、新しいスキル『カウンター』に生まれ変わった。
それと何やら称号もゲットした。『うさぎの虐殺者』
うさぎ系のモンスターを連続で100匹倒した時にゲット出来る称号。効果はうさぎ系モンスターと対峙する際、STRとAGIが10%上昇するというもの。まぁもううさぎと戦うことはないと思うけど、貰えるだけ貰っとこう。ーーー
レアドロップが大量にあったので素材屋のNPCに売りに来た。
「へぇ〜、ホーンラビットの角がこんなに沢山!30個あるし、1つ10000ゴールドで買い取るよ!」
10ゴールド=1円だから、現金で3万円。こりゃ普通の人にとっては確かに破格だ。普通の仕事より全然稼げる。こりゃみんなゲームの世界に入り浸るわけだ。
とりあえず、こんなにやって現実ではまだ2時間くらいしか経ってない。とんでもないなこれ。
「お嬢さん。ちょっといいかい?」
「え、はい。なんですか?」
おばあさんが話しかけてきた。NPCだ。
「実はお願いがあってね。」
「はあ、お願いですか?」
《ユニーククエスト『お婆さんの頼み』が発生しました。受理しますか? YES/NO》
ん?ユニーククエスト?
現在のステータス
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プレイヤー名『ルナベル』
プレイヤーレベル『8』
種族『吸血鬼』
職業 メイン『暗殺者』
サブ『料理人』
HP『100/100』
MP『100/100』
STR『40』
VIT『0』
AGI『100』
DEX『15』
INT『0』
MND『0』
LUK『15』
スキル『カウンターLv1』
称号『うさぎの虐殺者』
装備『黒のローブ』『月の仮面』
武器『初心者の短剣』
アクセサリー『無し』
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