第8代目:「かきつばたと鬱」
どうも、久しぶりですね。
今回は「伊勢物語」をモチーフとした感じですかね。
……ほぼ、史実になるのかなぁ。いや、ならないか。
時は平安、場所は三河之国。
そこには、現在の自分に絶望した男と、その友人が2人ほどいた。
そう、かの有名な在原業平である。
あとの二人は、まぁ、藤原と田中にしておこうか。
「もうマジでだめだわ。俺、ほんとだめだわ」
太陽がぎらぎらと光り輝く中、暗くどんよりと業平はつぶやいた。
田中と藤原は「また始まったよ」と言って、ぶつぶつ言っている業平を放って前へ進んでいく。
10分後、進まれたことに気づき、業平は手に持っていたネコじゃらしを捨て、二人めがけ走っていった。
そして、二人に追いつくと、二人は川原に座り込んでいた。
「ちょ、お前ら何やってんの!?一応主人公俺なんですけど!?」
「知るかよ。なら、ちょっとくらい主人公っぽくしてもらえない?」
さっきとは打って変わって、大きな声で田中に業平は言った。
田中はうるさそうに耳をふさいで、機嫌悪そうに言った。
業平はまた少し落ち込んで、ふさぎこんでしまった。
「あーもう、うっとうしいなー……。ほら、乾飯やるよ。元気出せ元気」
「な、なんと!?ありがとう……俺、嬉しくって……」
「おいこら、お前が濡らしてふやけさしてどうすんだよ!それがオチなんだぜ!?」
田中はふさぎこんでしまった業平に、乾飯を渡した。
それを業平は泣きながら受け取り、そのままぎゅっと抱きしめた。
その乾飯は業平の胸の中で、汗やら涙やら鼻水やらでふやけてしまったようだ。
その光景に、華麗に藤原は突っ込んだ。
現代で言うと、さま○~ずの三○くらいの勢いではなかろうか。
田中はくすりと笑い、周囲を見渡した。
業平とは違い淀みのない水、心地のよい風、たくさんの緑……。
そのすばらしい景色の中で、一際目立ったものを田中は見つけた。
「お、かきつばた咲いてるじゃん。いとをかし、っていうのこれ」
「待て、それだと話変わるぞ!?」
田中と藤原は仲がいいのか、この茶番でゲラゲラと笑いあっている。
そんな中、一人だけ泣いている業平。
本当にこいつはなんなのだろう……。と、田中は思った。
それと同時に、田中に電流が走った。
「なぁ、業平。お前さ、歌うまかったよな?いいところ見せるために、ここで一句詠んでみたら?」
「えっ、いいの?じゃぁ、詠んじゃ―」
「まぁ、そう焦りなさんな。ただ一つ条件をつけよう」
調子に乗った業平の口をふさいで、田中が耳元でささやいた。
業平は田中から解放され、目を皿のようにして田中を見つめた。
「かきつばたの五文字を、句の頭にいれろ。いいな?」
「お、おうよ!」
田中の言葉に、威勢よく業平は答えた。
だがしかし、業平には一つ不安があった。
そう、落ち込みすぎてスランプに陥ってしまったのだ。
(やっべ、何も思い浮かばない…。どうしよこれ……)
持っていた乾飯をかじり、涙を流して必死に考えた。
それはもう、必死に考えた。
そして、ついに口を開いた。
「かれいいと きせいできない つれがいう ばかみたいな たびのどうちゅう」
とよめりければ、みな人、乾飯の上に涙落として、ほとひにけり。
最後の句はなんか適当に考えました。掛詞があるかも…?
これは、二次創作にはならないんですかね。ちょっと微妙ですけど、おそらく著作的問題は大丈夫でしょう。きっと。