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死霊組成  作者: ボナンザ
9/80

9話 戦慄

よろしくお願いします




神社の境内、蜃気楼の様な靄が晴れ先程の2人が姿を現す。



「…… 行ったか」


何ともかったるそうに大男が呟く。その目からは先程の少年を警戒し、そして見下す様な色が伺える。



「…… 彼に対しての見解を聞かせて」


そんな彼の気分などどうでもいいとばかりに目付きのキツい女が、先程の少年についての見解を大男に聞く。



「ありゃあやべえな……

あのガキ自体に脅威はねえ、だがあの魔道具類は別格だ。その魔道具で完全防備してやがる……」


思い出して鳥肌が立ったのか大男は、自身の丸太の様に太い腕を撫でる。



「ええ、彼が身に付けていた魔道具は、どれも伝説級か神話級クラスの"オーバーユニーク''よ。」


「ケッ、まだ魔導書を後継したばかりの、駆け出しのガキに作れたり揃えられる様な品物じゃあねえぞ……アンタッチャブルの異名は本当だった様だな」


何ともウンザリといった素振りでそう吐き捨てる大男。彼等は鑑定系の能力を使えるのか、魔導具の存在に気付いている様だ。


伝説級や神話級の魔道具は、作ったり起動させるだけでもかなりの魔力を必要とする。それを彼は普段使い気分で使用している。



「それにあの坊や、地球人の割に魔力が高い。いや高すぎる……」


「そうか? 魔導具の凄さは分かったが、あの小僧からは大した脅威は感じなかったぞ」


目付きのキツい女は彼の異常性に気付いた様だが、大男の方はそうでも無さそうだ。



「それは貴方が木偶の坊だからよ」


「誰が木偶の坊じゃぁ!」


騒ぐマークを他所に目付きのキツい女は正確に彼の分析をする。魔力の扱い方は雑そのものだが、魔導具の扱いは完璧。



「流石は''黒幽斎''の後継者といったところかしら。まったく末恐ろしい坊やだわ ( あの年であれだけの魔導具を扱えると言う事は、魔導書自体もマスターしていると見て間違いない)


彼女がその将来に戦慄するのも頷ける事なのだ。



「…… 始末しなくてよかったのか?」


驚きの大男の言葉で場に沈黙が下りる。



「…… 私達''キープ.オフ.グリモア''は魔導書を見護るための組織。魔導書にそぐわない者や悪用する者を始末する。それが私達の使命…… 」



そう彼等が所属するこの組織が護るのはあくまでも魔導書である。


その魔導書に見合わない者や、後に魔導書を悪用し悪行に走りそうな後継者を抹殺するのが彼等の仕事なのだ。


そして2人への組織からの命令は『始末出来そうな相手なら殺せ。それと同時に魔導書の回収』だ。そのため彼等は、薬師寺清司の殺害を第一の目的としてこの場に来ている。



前所有者の“黒幽斎"が張った結界は広範囲に及び、魔導書と現後継者の存在を隠す様に隠蔽していた。


だが、彼が死んだ事によって結界の効力が弱まってり、感知に優れた組織や個人にセイジの存在が知られる事となった。


それでも彼が身を守るために身に付けている魔導具の力は大きく、彼の知らぬ間にその身を守っていたのだ。



これまでに彼の近くまで近付けた者は彼等だけ。強力な魔導具の守りを乗り越えて、彼の近くにまで迫れた彼等の実力は本物といえよう。



「だからこそ始末しておいた方がよかったんじゃないか? 生かしておけばあの小僧は後々厄介な存在になるぞ」


「そう言うけど、貴方にそれが出来て?」


「難しいな……

かなり無理をすれば何とかなると思うが、五体満足では済まなかっただろうな」


「そうでしょうね。私も1人だったら逃げ出していたわ」


嘘か誠か、そう言うと女は何とも気怠そうに髪を掻き上げる。



「俺の世界の賢者でもあそこまで守りを固めちゃあいねぇ。俺の切り札を使えば可能性はあるが…… 」


大男がため息混じりに強がりを言うと、彼女も納得した様に頷く。あの魔道具類の力は異質。その知識に詳しくそれなりに力を有した者でなければ近づく事すら難しい。



「 坊やが身に付けていた魔導具の一つ"カウンターマリス''は、彼に危害を加えようとする者に不運と言う形で地獄の苦しみを味合わせる。この世に存在してはならない、アレはそうゆう部類の魔道具よ。あの坊やは仲間に引き入れた方が得策だわ」


「……だな」



魔導書由来の魔導具は他の魔導具とは一線を画す存在。


"オーバー.ユニーク''と呼ばれるそれらの魔導具は魔導書が無くては作る事も出来ない。そのため滅多に世に出る事がない。


"オーバー.ユニーク''の魔導具は厄災の元凶とも呼ばれ、一度世に出たならば数多の惨劇をこの世に撒き散らすと謂れている。



今回は魔導具に詳しい者が彼等の中に居たため、彼を見つけた段階で作戦の変更を余儀なくされた。もし彼等が彼に悪意を抱いて接触していたら、間違いなく彼の魔導具の餌食となっていただろう。



もし他の誰かがこの魔道具の所有者に殺意を抱いたなら、その者は間違いなくこの世の地獄を味わう事になる。


身に付けた魔道具だけで百戦錬磨の強者を退かせる。その脅威に本人自身が気付いていないという事実。


彼等の第一目的は対象の殺害と魔導書の回収だが、彼等2人でも手に余る場合は組織への勧誘と保護が命令だ。


手に負えぬなら配下に加える。その方が管理がしやすい。



「今度会った時は改めて坊主を勧誘だな」


「…… ええ(魔導具だけじゃない。本人は気付いていないけど、あの子の魔力は封じられている。信じられない程に膨大な魔力。もしあの封じられた魔力が解き放たれたならば……)


彼女が神社のお堂を見ると、何かの鳥が飛び去って行くのが見えた。吉兆を告げる冥界からの使者、そう思えるのはあながち間違いでは無い様に思えた。



「…… 願わくばあの坊やに、下手なちょっかいを出す愚か者が出ない事を祈っているわ」


ありがとうございます。

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