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死霊組成  作者: ボナンザ
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78話 Sランク冒険者1

アレスの作ったビヨンザワールドで魔導具作りをしていた僕。気付いて見れば午後の6時を回っている。



「うわ、もう6時。3時間も没頭していたのか…… 」



物作りが楽し過ぎて没頭し過ぎてしまった様だ。そろそろニャトラン達もお腹を空かせて居るかも知れないし戻るとしよう。



「ちょっと待たせちゃったから、今夜の夕食は少し豪華にしよう」



合成.錬成台の外ではアレスが椅子に座り本を読んでいた。



「ごめんアレス、待たせちゃったかな……」


「いいえ私の方こそ、国幽斎様のお手伝いが出来ず申し訳ありません」



まさかアレスの方から謝られるとは思っても居なかった。彼の中で僕第一主義の根本は変わらない。その為どうしても僕以外に時間を使う事を躊躇してしまうのだ。



「アレス、何も悪い事なんてないよ。君は良く尽くしてくれている。アレスとはもっと打ち解けた関係を築きたいんだ」



良く尽くしてくれている彼に僕の本心を話す。アレスとはもっと友達然とした付き合いをしたい。



「…… な、なんとありがたき言葉……

このアレハンドロ、更なる忠義をもって国幽斎様にお仕えしたいと思います」



僕の言葉に感極まった様子で頭を下げるアレス。

どうやら逆効果だった様だ……。



「あ、ああ、期待しているよ。そ、それよりどお? 彼女達の復活は上手く行きそうかい?」



変な方向に話が変わってしまったので、彼女達の復活の状況を聞く。アレスと共に魂を修復した彼女達の事も心配だからね。



「はい。国幽斎様のおかげで順調に進んでおります」



何とも嬉しそうな空気がアレスから出る。彼にとっては掛け替えのない存在の彼女達。その彼女達の事を僕が心配してくれた事が嬉しいのだ。


その彼女達の復活も近そうだ。どんな関係になるのか、あまり畏まった感じは好ましくないからね。



「よしここらで魔導具作りはお終い。あとは夕食をたらふく食べて、明日に備えよう」


「はい」



アレスの世界ビヨンザワールドから出た僕達は明日に備えてカツ丼を食べる事にした。やはり勝負事の前はカツ丼に限る。


因みにこのカツ丼は僕がお祖父ちゃんに教わったレシピで作った物だ。流石に店売りの様にはいかないが、なかなかのものである。


そして即席のお味噌汁と、スーパーに売っていた糠漬けの買い置きを一緒に出す。これで夕食の準備は完璧だ。



「美味っ!」


「ニャ〜! セイジ殿のカツ丼は最高だニャン!」


「にゃ」



皆んなが喜んでカツ丼に喰らい付く。ニャトランはいつもの様に貪り付き、エスメラルダは未知の味覚に目を見開きながら食べている。いつもはカル○ンゴールドしか食べないタマさんも、カツ丼のカツだけは喜んで食べる。


素人料理でも喜んでくれてよかった。アレスに頼めばもっと上手く作ってくれると思うが、僕が地球で作り置いていた物だからしょうがない。



「さあ明日に備えてお休みといこうか」



明日は激動の1日になる。そう直感出来る現状がある。ニャトランを責めるつもりは無いが、あのスキルに導かれている感は否めない。


それに偶然にも行動を共にする事になったエスメラルダの存在もある。あの成金との因縁を付けなければ、彼女にも迷惑をかけてしまう。



話し合いで終われば良いが、まずそれはあり得ない。ひょっとしたら争い事に発展して人を殺めてしまうかも知れない。


国分さん達の事はもちろん心配だ。だが今の現状では先に進む事は避けたい。



(いったい何でこんな状況に陥っているのか、確か吟遊詩人を探してこの町に来たんだよな…… )



予想だにしなかったこの現状を打破する為に出来る事は全てしたつもりだ。



(果報は寝て待てか、まあなる様になるさ)



そして僕はこれまでの色々を考えながらも眠りの途に着いた。



ーーー



私はタイタス.シュトルムハウゼン、Sランクの冒険者だ。今から10年前、私は悪鬼と恐れられ忌み嫌われた存在だった。


私が生まれたのは闘技場の奴隷が暮らす寂れた掘立小屋。私の母は、私を産んで直ぐに死んだと聞く。


巨人族の血を引く私を出産する事の大変さは、普通の子供を出産する事の比では無い。


だが奴隷が1人死んだとて悲しむ者は居ない。それは私の父でもそうだった。



「ガッハハハハハ! 母親の腹を裂き生まれ出たこの坊主は、俺様を超える剣闘士に育つだろう」



巨人の血を引く私の父は有名な剣闘士だった。戦う事だけが生き甲斐のこの男に褒美として与えられた母の命運はその時に尽きていたのだ。



生まれ出てより3年、父は私を一流の剣闘士に育てる為に地獄の様な鍛錬を強制してきた。そんな父の期待に応えるために、私もがむしゃらに地獄の日々を過ごした。



「殺せ! 情けを掛ければ死ぬのはお前だ!!」



5歳の時に初めて人の相手をさせられた。死に物狂いで向かって来る相手は恐ろしかったが、殺さねば私が殺されてしまう。


そんな日々を過ごす私は13歳にして、父を凌駕する剣闘士へと育っていた。戦えば殺し、欲しければ奪い犯す。


生来のトリプルスキルも、戦士としての私の成長を押し上げた一因。


この世に生まれ出て愛情など知る由も無かった私には、この修羅の生活が実に心地よかった。



それから半年も経たぬ間に父であった男にも勝ち、連戦連勝の私の名声は諸外国にも届く程に高まっていた。



「カッハハハハハ! 俺に勝てる者は居ない。俺がこの世で1番の剣闘士なのだぁ!!」



それから私は勝利を続け、20歳の誕生日に自身の自由を買い取ったのだ。晴れて自由の身となった私は更なる強者を求めて冒険者となった。


自分の力量歪んで名声も権力も手に入れられる。それ以上に強い魔物や冒険者を相手に無双するのが最高に楽しい。



「闘技場では自由が無かったがここは違う。争い事も、金や女にも困る事は無い、何でも出来る。何でも手に入る。闘技場の外でも変わらない、俺は最強だ!」



私は悪評と共に冒険者のランクを駆け上がる。

冒険者になって3年でAランク冒険者に成れた。


しかし上に上がるには余りにも私の悪評は酷かった。だが私のスポンサーになった貴族の権力で、揉み消し無かった事にすれば、その問題も簡単に片付いた。


それ以上にAランクの魔物すら相手にならない私の貴重な戦闘能力が、この乱世の世の中で貴重だった事は言うまでもない。



片方ではSランク間近の期待の星、だがもう片方では陰口が尽きない忌み嫌われた存在。


それが冒険者になった私なのだ。もちろん私の命を狙って幾多の襲撃が行われたが、その尽くを退けて北た。


冒険者になって5年、私も遂にSランクの高みに上り詰めた。当時でもこの世界に4人と居なかった冒険者の最高峰だ。



「カッハハハハハ! 俺は冒険者の世界でもトップに立ったぞぉ!!」



私は冒険者の頂点に上り詰め有頂天だった。そう、あの男に出会うまでは。



「お前がタイタスという巨人崩れか? お前はやり過ぎた。お前に無惨にも殺された者達の痛みを知れ」



私の前に現れたのは現在3人居るSランク冒険者の1人で、ミケーレ.ソアビという黄金のプレートアーマ"ロール.エペ''に身を包んだ冒険者。


このプレートアーマはオリハルコン製で、これまたオリハルコン製の黄金色の槍"ズラト.トトカ"を持つ人類最強と謳われる男だ。


なんでも世界評議会の賢者の護衛を務め、世界の調停者を自で行く男だという。それに彼はSランクに上がった者を見定める。冒険者組合での特務にも就いている。


そう彼はSランクに上がったタイタスを見定めに来たのだ。



「バカめ! 返り討ちにしてくれる!!」



戦いの結果は私の惨敗だった。"雷電''という雷を操るスキルを持ち、雷の速さで動く事が出来るミケーレに私が勝つ術はなく、半殺しにされた私は荒野のど真ん中に置き去りにされた。



「これで貴様に奪われた命も報われるだろう」



弱者の願いを聞き、弱者の願いを叶える。そんな自分とは正反対の存在に私は敗れ死を待つ身と化したのだ。


世界の調停者を名乗るのも頷ける強さだった。

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