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死霊組成  作者: ボナンザ
72/80

72話 親友

よろしくお願いします


アーゼナルワールドの4つある大陸の一つムーレムリア大陸。4つある大陸で1番小さなこの大陸には国が一つしか無い。


この大陸は砂漠地帯が70%を占めるため人が住める領域が限られて居る。そして多種多様な種族が共存するこの大陸唯一の国の名は、フーラシア共和国。世界で最も平和で幸せな国と云われている国だ。


種族間の争い事も無く、この国には階級制も無ければ奴隷も居ない。そのため迫害を受ける少数民族や、逃亡奴隷が最終的に目指すのがこの国だ。



そしてこの世の楽園なこの国には世界4賢者の1人、"双生のアラバ.カミラが居る。


魔導書の『アクア.イリュージョン(水妖無生)』の所有者、マスターメナスでもある人物だ。


彼とも彼女とも取れる中性的な容姿に、水色の長い髪、キトーン一枚というシンプルな装いだが、その分妖艶さが際立ち見る者を虜にする。


その右手には深海1万メートルの驚異を封じられており、常に水龍の形を模している神器の水槍"ディープ.ブルー"を持ち、遥か神話の時代から生きていると云われている謎が多い人物だ。



アラバ.カミラが持つ魔導書『アクア.イリュージョン』は、水に属する生物を生み出し操る事ができる。水属性の太古の邪神を呼び出す事も出来るジェネラルクラスの魔導書。


その強力な力の代償は所有者の寿命で、老いる事も死ぬ事も出来ずアラバ.カミラは、神話の時代より生き続けている。


不老不死にも近いその代償を良しと捉えるかは、魔導書の所有者の所見次第。


愛する者との別れを幾度となく経験し、悠久の時をただ1人で生き抜く孤独を思えば、その代償の大きさが分かるだろう。



かの国の周りを取り囲むフーレム海域には、アラバ.カミラの目となり耳と成り代わる、体長30mクラスの海竜が数百頭単位で生息している。


それ以外にも平気水深5000メートルのフーレム海域では、太古の昔から体長数百メートルを超える巨大生物の目撃例が後を絶たない。


それらの事柄がこの戦乱吹き荒れるアーゼナルワールドで、唯一の平和国家を実現出来ている要因の一つだ。




海神ヌトスの子孫と云われ両性具有でもあるアラバ.カミラは、精神面でも二面性を持つと云われている。


荒々しい津波を思わせる男性の一面に、全ての命を育む大海原の女性の一面。


常時は女性よりの性格で優しい一面が表に出ているが、怒った際には男の一面が矢面に現れる。その姿を見て生きていた者は居らず、アラバ.カミラの怒りは海の怒りと恐れられている。



かつてこの国と争い事を起こしたミッドランドという大国を、一晩で海の底に沈めた話は有名である。


アラバ.カミラの二面性は数百数千万の悠久の時の中で、自己を保つ為にが順応して来た結果だろう。


悠久の時を生きるという事の残酷さは計り知れないのだ。



そんなアラバ.カミラは今、キッチンで料理の下拵えをしている。



「あら、もうこんな時間…… そろそろチキンを焼きましょう」


時計を見て下拵えをしたチキンをオーブンに入れる。このオーブンは温度調整機能が付いた地球という異世界製の物だ。


それ以外にもアラバ.カミラのキッチンは異世界製の物で溢れている。唯一包丁だけはオリハルコン製のオリジナルの物だ。



「あの子達が好きなピッツァも、そろそろ焼き上がる頃ね」


今日は定期的にアラバ.カミラの元にある人物達が集まる親睦パーティの日だ。この日の為に何日も前から料理の素材を集め下拵えしていたのだ。



そんなアラバ.カミラのキッチンに突如としてゲートが開く。


ゲートから出てきたのはブラックエルフの女性。そんな突然の出来事にも、アラバ.カミラに同様した様子は全く見られない。



「あら遅かったわねミレニア」


「ごめんなさいカミラ、あの子達の準備に手間取っていたの」



まるで日常会話をするかの様に2人の間に親し気な空気が流れる。



「それで、あの子達は全員来れるのよね?」


「もちろん。あの子達も楽しみにしているわ」


「良かった! 今日の為にいろいろ準備をしていたかいがあったわ」


ミレニアのその言葉に円満の笑みを浮かべるアラバ.カミラ。嬉しさのあまり鼻歌を奏で、料理の下拵えをする手も早まる。


アラバ.カミラとミレニアは1800年に及ぶ親友だ。時に笑い合い、時に泣き合うそんな関係の2人。


長き時を共に生きて来たからこそ、2人の絆は深いのだ。



この世の楽園のフーラシア共和国にはある一面がある。それは魔道書の所有者マスターメナスだけが所属する、秘密組織グリモアの本拠地という裏の顔だ。


この組織は所属人数が、この場に居る2人を除いて僅か4名と少ないにも関わらず、2つの世界で驚異として確かな地位を確立している秘密結社だ。


その1番の要因は所属する6名全てがマスターメナスだという事だろう。大小の力の差はあるが全員がマスターメナスという事実は、驚異以外の何物でもない。



「皆んなもカミラに会えるのを楽しみにしていたわ」


「嬉しい、私も皆に会えるのを楽しみにしていたの。さあ料理の仕上げといきましょうか」


何気ない会話を挟みながら料理をする2人。何気ない事だが2人はこの時間がとても大好きなのだ。



ありがとうございます。

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