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死霊組成  作者: ボナンザ
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70話 恨み辛み

70 恨み辛み



ワシはあの時の屈辱を決して忘れない。


あの日あの時、小僧に屈辱を受けてから一目散に屋敷に戻ったワシは、小便で濡れたズボンを履き替える事なく、町の評議会に小僧の招集命令を出す様に指示を出した。


この町の評議会は裏金と、それを元にした脅迫で、ワシの命令には絶対に逆らえない。


評議会が動けば町の衛兵隊も動く、然しもの小僧も権力には逆らえなかったのか未だにこの町に留まって居るという。



評議会の呼び出しは3日後だ。だがあの小僧はブロンを一蹴し、巨大な火球をで私を焼き殺そうとした極悪人だ。


アレが魔法なのかどうなのかは知らんが、一筋縄では行かないだろう。グヒヒ、だがその為の準備はするつもりだ。



(待っていろよ小僧、ワシに恥をかかせた事を必ず後悔させてやる! そして奪われたワシの宝を取り戻すのだ!!)


奴隷に服を替えさせながら不適な笑みが浮かぶが、悪い気はしない。



「"シクスス.スレイブ"に招集をかけろ」


「は、はい!」


"シクスス.スレイブ"とは奴隷の中でも戦闘に優れた者達を幼少の頃から育て、身分を偽り、情報収集や暗殺などを手掛ける為に、冒険者や騎士団などに潜り込ませているワシの手駒だ。


その内の2人がAランクの冒険者、他の2人がBランクの冒険者、内の1人が王国第三騎士団の団長を勤め、最後の1人が魔法省の第五席次を勤める魔術士だ。


これだけの手駒を揃えればあの小僧とて脅威には成り得まい。


正直言ってワシはあの小僧の存在を恐れている。小僧が出したあの巨大な火球がワシの脳裏に焼き付いて離れないのだ。


長年生きて来たがあんな恐怖は初めてだった……



「…… ("シクスス.スレイブ"だけでは足りないかも知れん、ここはワシの最大の切り札を切るべきか……)


ワシの最大の切り札それは人類の最高峰、この世に5人しか居ないと言われるS級冒険者の1人、タイタス.シュトルムハウゼン。


巨人族の血を引くと言われ"鉄塊のタイタス"の異名を持つ逸脱者だ。



身の丈3メートルの巨体に、"強撃"と''鉄塊''という体を鋼鉄の硬さに変えるスキルと、万物を粉砕する強烈な一撃を放つスキルを持ち、それ以外にもある特殊なスキルを持つトリプルスキルの持ち主。


"鉄塊''のスキルはそんなに珍しくもない防御系のスキルだが、彼は巨人族の血を引く者だ。その結果彼は、体の硬さをオリハルコンの域にまで高めている。


そしてもう一つの"強撃''、こちらも本来なら大して威力のあるスキルではない。だが巨人の血を受け継ぐ彼が使えば、山ほどの巨岩を簡単に砕き散らし、単独で竜をも打ち倒す程の必殺の一撃となる。


実際にタイタスは幾体ものドラゴンを討伐し、ドラゴンスレイヤーの異名も持っている。


そして知る人ぞ知る3つ目のスキル。コレが有るからタイタスはSランク冒険者になれたと言っても過言ではない。


そしてタイタスには貸がある。あやつはワシに貸があるのだ。



ーー今から5年前、ワシが商隊を率いりかつてあった隣国のスラン国を訪れた時だった。


ワシの商隊が訪れた村にタイタスは居た。あの頃のスラン国は戦争と飢餓によって何人もの人々が奴隷へと身を落としていた。


まあその戦争自体がワシ等の様な商人や、大国のお偉いさんの懐を肥やす為のはかりごとなのだが。


戦争が起きれば移民や孤児が生まれる。そしてワシらは配下の者を使ってその者等を刈り取るのだ。



この程度の小国などワシのコネを使えばどうにでもなる。そんな事を知る術もない哀れな彼等は、ワシ等に刈られるのを黙って待つしかない。


ワシ等は丁度刈り取り時に村々を回って奴隷を集めるだけでいい。クッククク、まったくもって戦争ほど良い肥やしはないわい。



タイタスにはそんな奴隷狩りをしている時に出会った。


何でもタイタスは病弱な妻と旅をしており、容体の悪化した妻の看病をする為に、この村に滞在していたとの事。


ワシには理解出来ん話だが、奴がこの世界にたったの5人しか居ないS級冒険者だという事は知っていた。


そして運が良い事にタイタスは妻の為の薬を欲していた。



「貴殿が有名な商人だと聞いて来た。我の妻のために薬が必要なのだ。高級ポーション、いやただの薬草でも構わぬ。有るならば済まないが、分けて頂けないだろうか?」


タイタスは冒険者で稼いだ銭を孤児院に寄付したり、貧しい者に恵んだりしており、人格者で有名な人物だ。そのためまとまった金は持っては居ない。



以前は凶暴で飲み食いする為に見境無く人々を襲う荒くれ者だったが、今の妻と出会って変わったと聞く。


その妻との間に何があったのかは知らんが、何よりも病弱な妻を大切にしている。全くもって理解出来ん話だ。



タイタスは薬の代金は無いがその代わりに、自分が愛用していたレジェンドクラスの武器を置いていくと言った。


武器は戦士の誇り、それにレジェンドクラスの武器だ。それを売り払らえば城が建つ程の金額になるだろう。


だが、その手の武器は売るのに何かと手間が掛かる。本来なら門前払いにする所だが、ワシはタイタスに高級ポーションを''タダ''で譲ってやる事にした。それどころか定期的にポーションを渡してやるつもりだ。



高級ポーションは一本で金貨1枚とかなりの痛手だが、この手のタイプは義理人情に厚く、一度受けた恩を決して忘れない。


ワシには分からん感情だが、世の中には一定数こうゆう輩がいるのだ。クケケケッ、義理や人情で銭が稼げるのか? 答えは否だ。



だからワシは利用する。S級冒険者ならば切り札としてこの上ない最上の駒だ。恩義があるワシが呼べばタイタスは必ず駆け付けて来るだろう。


それにタイタスには魔道士にとって、あの小僧にとって最悪のスキルがある。これだけの手札を集めれば差物のあの小僧も終わりだ。



「グゲケケケッ! 待って居ろよ小僧、あの時の借りを万倍にして返してくれるぅ!! そして、宝を取り戻すのだぁ!!」



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