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死霊組成  作者: ボナンザ
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66話 工作の時間

よろしくお願いします




レストランでのいざこざで部屋に戻り買い置きの食べ物で夕食を済ませた僕達。


ニャトランはもちろんのこと、エスメラルダも満足した様で、今はニャトランと簡易ボーリングで盛り上がっている。



僕の方はアレスと共に魔道具の製作に没頭していた。


アレスの闇は特殊な闇で、取り込んだ物質や現象を再現する事が出来る。



彼は草原でファイアアローを取り込んだ事で闇と同化し、黒炎を操れる様になっていた。現段階では800度〜5000度までの高温を自在に操れる様になっている。


ファイアアローの本来の温度は800〜900度程だが、彼の潜在能力が取り込んだ火炎の最大温度を飛躍的に跳ね上げたのだ。


5000度は太陽の表面温度に迫る超高温だ。地表であれば一瞬で灼熱地獄と化す。それを彼は、特殊な闇の結界内で外界に何の影響も与える事なく、自由自在に扱う事が出来る。


未だ成長段階にあるアレスなら、結界内の温度を最終的に1万度以上の超超高温に変える事も可能だ。



僕がアレスにサスペンションの説明をする過程で彼の新たな能力を知ったのだが、それは僕の魔導具、魔剣などの武器作りに極めて役立つ能力だった。


ちなみにアレスにはサスペンションを作る際に、アイテムボックス内にあった金属加工の教本を渡してある。



彼の特殊な闇は様々な物質を取り込む事で、異なる物質と融合させる事も可能だ。この結果、様々な合金を作り出す事が出来る様になっていた事には驚きを隠せなかった。


僕に組成された結果、亜神クラスの力を持つ様になった彼が作る素材は英雄〜伝説クラス。まさに歩く工場を地でいくアレス。素材さえ有れば彼に作り出せない物は無い。



そしてそれは生命とて同じ、彼の作り出した黒馬''スレイプニール''は自我を持ち、アレスが作り出した別次元の草原を元気に走り回っている。


そう、馬車を引いていたリアルな黒馬は実際に生きていたのだ。元々は道端で力尽き痩せ細り死にかけだったロバを、アレスが再生成し作り出した新生物。


まだ復活はしていないが、彼の側で復活を待ちながら眠る彼女達の生成のため、生物での試しがどうしても必要だったのだ。



そう今のアレスは生物を創造し、異空間で好きな様に任意の世界を作り出す事も出来る。


因みに彼は別次元にかつて彼女達と住んでいた草原と花畑、青空が有る世界を作りそこに小屋を建てている。


そこで魂の弱った彼女達の修復を行っているだしい。



魔導書に組成された事によって存在の格が跳ね上がった彼は、そんな事も出来るようになっているのだ。


アレスが生成し直した闇の生物は成長も早く、スレイプニールは今では平均時速が200キロを超え、100キロメートルの距離を疲れる事なく30分で走りきる化け物に成長している。



僕がこちらの世界に来ても困らない様にとのお祖父ちゃんの優しさ。


まるでこちらの世界に来る事を、アレスと出会う事を予見していたかの様な、お祖父ちゃんの用意周到な下準備。


僕の気のせいかも知れないが、余りにも上手く行きすぎている感は否めない。



話はそれたが、彼にはアイテムボックス内にあった金属加工の教本やそれに必要な金属、元素化合物、属性結晶などを渡してある。そのため簡単な設計図を渡せばそれに沿った物を作り出してくれるのだ。


本来魔道具の作製には魔道炉という3000度を超える超高温の炉と、魔道で制御され扱う者に補助が付く魔導金床とハンマーが必要だ。


だがアレスが1人居ればそれらの全てを補う事が出来る。まあ彼のセンスにもよるが、僕は決して彼のセンスが悪い方だとは思っていない。


この数日間、僕と共に行動する事で異世界の知識を吸収したアレス。今の彼なら上位の素材や金属も加工出来る。


それ以前にアレスは荒事より、クリエイティブ関係の方が彼の生来の本質なのだと思う。



「まったくアレス様々だね。アレスが居れば魔道炉がなくとも魔道具が作れる。これは凄い事だよ」


「とんでもない、この力は国幽斎様が授けて下さった力。それで国幽斎様のお役に立てるのならばこの上なき喜び」


「ハハハ、そ、そんな事はないよ〜 」



アレスの賛辞を軽く流しつつ今回僕が頼んだのは、お祖父ちゃんの集めてくれた素材の中にあった、ある金属の加工だ。


その金属はこの世界で取れる希少な金属で、最も刀剣の素材に向いているといわれる品物だ。


アポイタカネと呼ばれる金属で、あの神鉄オリハルコンや幻鉄アダマンタイト同様、滅多にこの世には出ない希少な金属だ。


たとえ出たとしてもこの金属の加工には3000度を超える超高温の魔道炉が必要で、今ではこの金属を加工出来る鍛治士は、ドワーフでも滅多に居ないという。


僕も鍛治、錬金術を一応は使えるが、それはランクの低い魔道具限定だ。高度の錬成にはやはりそれなりの設備が必要。



良い魔道具を作るには素材の適切な加工が必要。その加工の工程が1番厄介なのだ。


それがアレス1人の存在で事が足りてしまう事実。彼に素材の加工を頼めば、後は魔道書の術式による能力の付与で完成だ。


最高位の魔道具になると『展開魔法陣.万物流転』で魔道書自体で錬成加工が必要になる。伝説クラスの素材にコモンレベルの付与では、せっかくの素材が泣くという物。


それにあの力を使うと、魔道書の生贄要求が恐ろしい事になるのでなるべくなら使う事を避けたい。



だから現段階で作れる物を作る。そして今回僕が作ろうと思っているのは護身用の刀だ。



正直言って僕だけの実力では、魔導具の力を借りても冒険者でいうところのBランクの上位が限界だ。


先ず僕の体が魔導具の負荷に耐えられない。魔導具を使う事自体は出来るのだが、僕の身体能力では高位の身体強化系の魔導具について行けず、その負荷をもろに受けてしまうのだ。


その結果、魔導具による負荷は僕の体を蝕み、5年と持たずに僕は、僕の体はその後遺症で動けない事になってしまうだろう。


その代わり魔力は桁違いとアレスの太鼓判もあるため(最初に聞いた時は驚いた……)それを生かせる魔導具なり魔剣なりを作ろうと思っている。


それが刀だ。



セプテム.アイや身を守る為の魔道具はあるが、男に生まれたからには一度は憧れる刀を実際に手に持ちたいと思う。


それに今の僕はアレスの助けがあれば刀を作り出す事も造作ない。時間も有るし、ならばそれをしない手はない。



だけど、そんな軽い気持ちでの試みが、まさかあんな結果に成るとは思いもしなかった。


ありがとうございます。

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