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死霊組成  作者: ボナンザ
62/80

62話 怒り

よろしくお願いします




「おい! 何でここに獣人や魔物が居るんだ?」


「飯が不味くなる、早く摘み出せ!」


レストランは夕食の時間帯のためほぼ満席状態で、見るからに裕福そうな者達が一様に顔を曇らせて、ニャトランとタマさんを排除しろとの声を上げている。


最初は少数の声だったが、いつしか「摘み出せ!」のコールはレストラン全体に広がっていた。



「ま、誠に申し訳ございませんが、い、今からこのレストランへの獣人と魔獣の入場は禁止とさせていただきます」


ホテルのレストランの支配人らしき男が、他の客の批判を受けて獣人を入場禁止にすると言い出した。


この町の警備隊団長に誠心誠意でおもてなししろと言われていたが、僕等以外の客が獣人の入店を拒絶しているのだ。レストランの対応としては致し方ない事だろう。



それでもあまりに理不尽な状況、少しは予想していた事態だったが、まさかここまで獣人が蔑ろにされている事に僕は驚愕する。


名指しで批判されたニャトランも、がっくしと肩を落として落ち込んでしまった様子。初めてのレストランでワクワクしていただけにその落胆は大きそうだ。


そんなニャトランに向けて、今度はナイフやホークが何処からともなく投げられる。彼等は言葉だけでなく行動に出た様だ。



「にゃ、ニヤ〜ン!」


「フシャ〜!」


そのナイフやホークを全て空中で掴み取ったアレス。そんな彼の目には強い殺意が宿っていた。



「……国幽斎様いかがなされますか?」


言葉だけならまだしも、ニャトラン達に直に危害を加えようとした事に憤慨しているのだ。僕が合図すれば躊躇なく、即座にこの場に居る者達を皆殺しにするだろう。


いやそう命令して欲しいと彼は思っているのだ。



アレスにとってニャトランは仲間だ。元から仲間意識が強かった彼には、仲間が屈辱される事は耐えられない事なのだ。


そしてこの町に来てからの一連の出来事も、彼を怒らせる原因なのは言うまでもない。



彼アレスは僕に組成されて仲間意識が強まった様にも感じる。付き合いは短いが、何らかの繋がりが有るのか彼の考えが何となく分かるのだ。


正直、この世界に来て僕も好戦的になっており、理不尽な対応をされると理性が利かなくなる事が多い。魔導書の影響だと思うが自制が効かなくなる。心のままに暴れ回りたくなるのだ。


そして僕の心を怒りが支配して行くのが分かる。

同時に何もかもを滅茶苦茶に破壊したい衝動が強まっていく……



(…… うざいな、もう皆殺しにしちまうか……)


僕の心が殺意に染まりかけた時、またもやニャトランが僕の暴走を止めた。



「…… 大丈夫ですニャ、吾輩は気にしてないですニャン……」


言葉では気にしてないと言っているが、その落ち込み具合から彼の本当の感情は分かる。


ニャトランは魔法が使えない事で長年の間、村で肩身の狭い生活をしていた。その過程で相手の怒りの感情を読み取るのに長けている。


ニャトランは僕とアレスの怒りの感情を敏感にも感じとり、争い事が嫌いなためそれを避けるために僕達を止めようとしているのだ。基本的に争い事は嫌いなニャトラン。



「だからセイジ殿も、アレス殿も落ち着くニャン」


そう言うといつもの様に笑顔を見せるニャトラン。



「……ニャトラン」


彼のスキルの影響か、彼の言葉には知らず知らずの間に人を従わせる力がある。そんな彼の心意気に僕の怒りが引いていく。アレスも冷静さを取り戻したのか、ニャトランに礼を言う。



「…… そうですね、冷静になれました。ニャトランありがとう」


「どういたしましてニャン」


怒りには敏感だがその他には鈍感なニャトラン。

レストラン内はアレスが放った殺気によって今は静まりかえっている。



「では国幽斎様、食事は部屋という事で宜しいですか?」


「ああ、そうしよう」


このままここで食べるのは無理だ。夕食は部屋に戻って、アイテムボックス内の物で済ます事にする。


ニャトランは極力気にしていない風を装っているが、やはり悔しかったのだろう。レストランの客達の自分達へ向けられた屈辱の視線から逃げる様に部屋に戻って行った。


アレスはそんな彼等の護衛として睨みをきかせている。最後に残ったのは僕とエスメラルダの2人だけ。心なしか彼女も残念そうな顔をしている。


レストランの客達はアレスとニャトラン達が居なくなった事で、普通の食事に戻り会話の花を咲かせている。



「…… 」


ニャトランの願いでもあるため僕もこのまま部屋に戻るつもりだ。だがそれではここの連中に対しての気分が晴れない。


僕はレストラン内の客を流し見る。コイツらは口で罵るだけに留まらず、直接ニャトラン達に危害を与え様として来たのだ。


そのツケだけは払ってもらう。


僕はレストラン内のテーブルと食事の全てを凍らせると、何事もなかったかの様にレストランを後にした。


その間エスメラルダは何を考えるのか、一言も発する事なく状況を伺っていた。


流石にあの状況で彼女にまで気を使う余裕は僕にはない。エスメラルダには申し訳ないが、買い置きの食べ物で我慢してもらおう。


ありがとうございます。

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