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死霊組成  作者: ボナンザ
61/80

61話 初めてのレストラン

よろしくお願いします




私は父の復讐を誓った。


その為ならこの体を使って何だってやるつもりだった。なのに何で私は今、こんな小僧と一緒に居るのだ?



ベイカーの連れていた用心棒を一方的に叩きのめし、その見返りとして私をベイカーから奪ったこの小僧。


予想外の小僧の力には度肝を抜かれた。


この流れは予想外だった。これじゃあ私の復讐すると決めた決意が台無しになってしまう……



「そ、そう言えば君の名前を聞いて居なかったね。何て名前なんだい?」


「…… エスメラルダで、す……」


「エスメラルダか、いい名前だね」


「……」



その大半を眠って過ごしたが、この小僧よりは私の方が遥かに年上だ。私は助けてもらったとは思わない。


私はこの小僧に復讐の邪魔をされたのだから。



何ぜ私をベイカーから奪ったのか、奪うならお金や地位でも問題は無かったはずだ。大方、私に一目惚れしたというのがその最もな理由だろう。


何故なら、私を見た男の取る行動が全て例外なくそうだったからだ。例外なく私を自分の物にしようとしてくる。だから優しい言葉をかけられても信用出来ない。


自惚れているかもしれないが、会う男性が例外なくそうだったのだからしょうがない。私を女として見なかったのは父だけだった。



この小僧も大方、今までの男と変わらないだろう。今までは父が守ってくれたが、これからは自分の身は自分で守らなければならない。


魔力は無くなったが私の体内にはまだ寄生樹の胞子が残っている。魔力の代わりに私の命の火を燃やせば、爆発的に寄生樹の胞子を育てる事が出来る。


そうすれば一瞬で寄生樹が育ちベイカーを取り殺してくれるだろう。



用心深いベイカーでも夜のその時だけは気を抜くはずだ。そうなればベイカーの屋敷、いやこの町もろとも寄生樹の森にしてやろうと思っていた。


この町の連中もベイカーと同じ父の仇だ。そんな奴らに遠慮などするつもりはない。



だがこの小僧のせいで私の復讐計画が台無しだ。これでは復讐を果たせない……



この小僧もあの大男の用心棒を一方的に倒したのだ、魔法使いなのか魔法も使えるし、それなりに強いとは思う。あの巨大な火球も見た事も聞いた事も無い魔法だった。


だけど私は父と共に長年あのベイカーの脅威に晒されて来たのだ。いくら強いとはいえ1個人の力では限界がある。


この小僧ではベイカーの用心棒には勝てても、ベイカー自身には、この町には到底及ばないと思う。


権力と財力という圧倒的な力を持つベイカーと、名前だけの権力の犬と化している評議会が牛耳るこの町には……。



それにこの町の評議会の裏には王国の重鎮がいる。最低でも大臣クラスの大物だと父は言っていた。力の無い私に出来る事は限られている。それでも私は決めたのだ、必ず父の仇を取ると。


あのベイカーにも父と同じ苦しみを味合わせてやると。



ーーーーー



ベイカーとのいざこざで少々疲れた僕達(疲れたのは僕だけだが……)はホテルで一休みしてから夕飯を食べに行く事にした。



「しかし何だろうね、この町は…… 」


「国幽斎様への度重なる無礼、殲滅の命を下されば速やかにこの世から消し去って見せましょう。いかがなされますか?」


度重なる僕への無礼に、やっぱりアレスはブチ切れモードだった様だ。



「そ、それは辞めておこう。でも2日後の評議会での向こうの出方次第かな…… 」


「了解いたしました」


まあそれでも2日後の評議会の出方によっては一暴れする事も有るかも知れない。最近の僕は敵対してくる者には、容赦なく対応出来ると言えるほどに好戦的になっている。


邪魔する者は容赦なく排除するつもりだ。



魔導書は知らず知らずの間に僕を蝕んでいる様だ。この世界に来て魔導書の封印が解けた事で、僕自身への魔導書の干渉が強まったのかも知れない。


それでも僕にはこの世界で、この力を使うより生きていく道は無いのだ。例え蝕まれていると分かって居ても、この力だけが今の僕の全てなのだから……。



(…… とりあえず今は休もう。そして美味しい物でも食べれば、この暗雲とした気分も晴れるさ……)



僕が一眠りして起きて見ると、アレスが僕のベットの脇に立ち、僕を守る様に辺りに鋭い眼光を走らせていた。



「 …… 」


「お起きになられましたか国幽斎様」


そして目覚めた僕と目が合う。彼は何とも思ってないだろうが、僕としては気まずい……。



「あ、ああ、よ、よく寝れたよ……」


「それは良うございました。それでこの後はいかがなされますか?」


「そうだね、今は何時頃かな?」


「今は午後の7時5分前でございます」



アレスにはお祖父ちゃん作り置きの''アナザー.タイム''という、異世界での時間を正確に知らせてくれるという便利な魔導具を渡してある。


執事みたいなアレスにはピッタリなアイテムだと思い彼にあげたのだが、その時の彼の喜び様は語るまでもないだろう。



因みにこの世界の時間は地球のものと大きな開きはなく、日中夜にそれぞれ1時間ずつ足した26時間で1日だ。



「じゃあ夕食を食べに行こうか」


「かしこまりました」



何とも間の抜けた僕とアレスの絡みを不思議そうに見ていたエスメラルダ。彼女は睡眠を取らなかった様だ。


夕食を食べに行くならエスメラルダにも新しい服を与えなければならない。綺麗だが奴隷が着る様な麻服のままでは可哀想だ。



(確かお祖父ちゃんが残した服の中に女性用のワンピースがあったはず……)



ちょいとヒラヒラの付いたゴスロリ風の服だが、今の奴隷用の服よりはマシだろう。何でお祖父ちゃんがこんな服を持っていたのか気になるところだが、今は考えない事にする。


考えたく無いというのが正直なところだ。



「エスメラルダ、僕の手持ちの中にあった服なんだけど、今の麻服よりはいいと思うんだけど……」


「…… あ、ありがとうございます」



取り出した服を彼女に渡すと一瞬キョトンとしていたが、満更でも無かったのか笑顔と共に隣の部屋に消えていった。


ニャトランとタマさんは仲良く一緒のベッドで眠っていた。猫系同士通じる所があるのか、本当に仲良しなニャンコ達だ。



「ニャトラン達を連れて外には出たく無いね。夕食はホテル内のレストランで取ろうか」


あのベイカーと揉めたきっかけがニャトランだったので、また同じ様な事が起き可能性がある。



(いや、この町ならば十中八九有りうるか……

本当はホテル内のレストランでも嫌だけど、こんな機会は滅多に無いしね)



獣人を動労力か毛皮としか扱わないこの町では、ニャトラン達を余り人目には付かせたく無い。



「かしこまりました。ホテルの方にレストランの予約を取り付けて参ります」


そう言うと部屋を後にするアレス。余程に疲れていたのかニャトラン達はまだ寝ている。


しばしの沈黙が訪れるが、ガチャりと扉の開く音と共に、ゴスロリワンピに着替えたエスメラルダが姿を現した。



「おお凄い! 似合ってるね」



流石は美人、どんな服を着ていてもお似合いだ。ゴスロリワンピが彼女の大人びた様で幼さも残る妖艶な色気を引き立てている様にみえ。


だがゴスロリワンピが気に入らなかったのか、彼女の顔はすぐれない……



「…… ありがとうございます…… 」


やはり気に入らなかった様で、返事に少しの棘が感じられる。



「……(こうゆう時て何て言えばいいんだろう……)


女性に服なんてプレゼントした事の無い僕には言う言葉が思い浮かばない。エスメラルダと2人きりとなり部屋に気まずさが訪れる。



「…… 」


「…… 」


如何ともし難いこの空間を何とか変えようか。



「い、いや〜お腹空いたな〜。エ、エスメラルダもお腹空いたでしょ?」


「…… いえ、余り……」


「そ、そうか……」


「……はい……」


「「………」」


(会話が続かない……)


僕は同年代と会話をするのが苦手だ。国分さん達とはある目的が合ったから出来たが、基本僕は同年代が苦手だ。


特にこんな美人さんは、モブの僕には荷が重すぎる。先程渡した服の事も有り尚更だ……


テレビやネットで美人さんには免疫があっても、実際に接するのとは訳が違う。


まあこの町でのいざこざが済んで、エスメラルダを故郷? に送り届ける迄の付き合いだからね。そんなに気に病む必要もない。



そんな僕等がまんじりともせずに過ごしていると、ホテル内のレストランに予約の取り付けに行っていたアレスが戻って来た。



「お待たせしました国幽斎様、レストランの予約を取り付けてまいりました」


「ああ、じゃあ行こうか」


ナイスなタイミングで戻って来たアレスに内心でグッジョブをしながら、ニャトラン達を起こす。


気が利くアレスは、ニャトランとタマさんの同席の許可も取っている様で、彼等も一緒に連れて行ける様だ。



「レストランなんて初めてですニャ、楽しみですニャン!」


「にゃ〜〜ん!」


旅の醍醐味、彼等にもご当地グルメを味わって欲しいからね。


そう思いニャトラン達とホテルのレストランに行ったのだが、まさかあんな事態になるとは思いもしなかった。

ありがとうございます。

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