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死霊組成  作者: ボナンザ
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58話 目覚め

よろしくお願いします




彼等が遺跡の入り口付近に現れたてから1時間程して、この人喰いマンドラゴラの巣"懺悔の間''にやって来た。


先ず最初に現れたのはリーダーの女性。両手に、いや4本の腕にそれぞれ武器を持った彼女が植物を斬り払いながらやって来る。


ーーー


「ナスターシャ、突っ走り過ぎだ」


魔道士と思われる男が爆炎で植物を焼き払う。



「まあリーダーなら何の問題も無いだろうけどね」


「…… 」


その背後から現れたのは両手に持つ短刀で植物を斬り刻む女性に、無口ながら2メートルを越す槍を自在に操る腰まで有る長髪の男。


彼等はドゥームブリンガー(破壊を齎す者)という名のS級冒険者のパーティだ。



リーダーのナスターシャは"鬼神空舞"と云う、戦意が高まると腕が増え、終いには6本に増えるスキルを持ち、戦の女神ジレの加護を持つSランクの冒険者。


6本の腕に持つ武器もそれぞれが古代級から伝説級の魔法武具だ。それらの武具は普段は次元の狭間に収納されており、彼女が腕を出した時に現世に出現する。


彼女が持つ武器の中にはこの世に有ると害悪を振り撒く凶悪な武器もあるだしいが、今回はさほど大した敵ではないのか、4本しか腕を出していない。使用している武器も並の物だ。


スキルと女神の加護両方の力を持つ彼女は"剣神"の称号も有しており、同時に6つの斬撃を放つ事が出来る。その破壊力は要塞すらも簡単に斬り裂く鬼神の如し強さ。


一個で国と相対する事も出来る彼女だが、本人は昔あった事柄により政治には興味が無い。嘘か誠か公爵家の血筋の者との噂もある彼女、そんな彼女のパーティメンバーからの信頼は厚い。



火炎魔法と疾風魔法の上位魔法を操る魔道士の彼はジル.ド.レレ。生まれて500歳のエルフで、Sランクの実力を持ちながらAランクに留まっている変わり者だ。


大賢者の異名も持つ彼は、エルフ始まって以来の魔法の天才としても注目されて居た。かつてはエルフの国で、魔法師団団長の役職に就いていたとの噂も有るが、その事実を知る者は少ない。


彼は時を操り星を降らせる時空魔法を使えるとの噂も有るが、それも謎である。



そして"アマテラス"という太陽の光の力を宿した短刀と、"ツクヨミ"という月の闇の力を宿した短刀を持ち、短刀を操るのにバフが付く''忍者''のスキルを持つ彼女は、アマンドラ.草薙.ロドリゲス。Aランクの冒険者だ。


彼女は渡世人の子孫。綺麗な黒髪の姫カットが似合う黒人とアジア人のハーフの面立ちで、幾つかの忍術も使えるため、斥候がその主な役割だ。


本来は渡世人のスキルは遺伝しないが、彼女だけは覚醒遺伝でスキルを受け継いでいる。


生まれて直ぐに攫われた実の兄を探しているだしいが……



そして身長は170センチと低いが、2メートルの大槍"エル.ビアンカ"(女性)という魔槍を持つ彼はシュバルツ.エリヒンシュタイン。Aランクの冒険者だ。


上位の槍使いのスキル"槍聖"の持ち主の彼。


かつて住んでいた国では、有用なスキルにも関わらず下位貴族だった事で色々と冷遇されており、出奔して冒険者に成った過去がある。


どこで巡り会いどの様な経緯でパーティとなったのかは知らないが、彼等が今の冒険者界隈でNo.1のパーティだ。


そんな彼等ドゥームブリンガーが、先頭で私が眠るこの懺悔の間にやって来た。


それと共に私の目も覚める。いや、外界から差し込む光で目覚めさせられたと言った方が早いかも知れない。



「 ! 」


「こ、これは…… 」


様々な場所を探検して来たドゥームブリンガーの面々が、この懺悔の間の植物人間達を見て驚愕の顔をする。



「…… 何だここは?」


「ここが何の場所かは知らんが、苦悶に歪んだ植物人間の表情を見るからにドクな場所では無さそうだな……」


一様に苦悶の表情を浮かべる植物人間達。その表面は植物に覆われているが、中の人々がどの様な死に方をしたのかが想像出来る。



「な、何だここは!? そ、それにこの植物人間達は…… 」


少し遅れて他の冒険者や冒険隊の隊員達と共に来た初老の男性が驚きの声を上げる。



彼の名はハンフリー.モーガン。あの曰く付きの町アジレスコで、唯一の"良心の奴隷商"と呼ばれている人物だ。


本来彼は考古学を生業とする学者だったのだが、旅の途中で立ち寄ったアジレスコの町の現状に憂いを感じたモーガン。


両親が残した莫大な遺産で、虐待を受けていた奴隷達を買い、自身の家や孤児院などで働かせている人格者だ。


そんな彼をナスターシャも気に入っており、彼の頼みと合ってこの護衛の依頼を受けたのだ。



「モーガン殿、もう暫く待ってくれ」



リーダーのナスターシャが懺悔の間に入ろうとした彼を止める。何故ならば、悍ましい植物人間が侵入者を排除しようと動き出したからだ。


植物に寄生されいるとバフが付く様で、常人の3倍程の身体能力でナスターシャ達に襲い掛かって来る植物人間。


それでも歴戦の猛者な彼女達には敵では無い。迫り来る植物人間をバッタバッタと斬り倒し、焼き払い排除していくドゥーム.ブリンガーの面々。



植物人間の彼等も植物に寄生されたままの現状よりは、彼等に殺してもらった方が遥かにましかも知れない。


そして最後に残ったのは私に寄生している巨大な寄生樹だけ。


この後直ぐに私も彼等の様に駆逐されるのだろうか、その確かな運命が迫る中でも私は至って冷静だった。



「…… な、何と美しい…… 」


「し、信じられない……」


だがいつまで経っても私を攻撃して来ない探検隊。彼等は何かに惹かれているのか呆然と私の方を見ている。



「…… アルラウネ。ラサムの遺跡で植物人間の種族を見たが事が有るが、それとも違うな…… 」


「あれはダークエルフ、遥か昔に滅びたと言われている古の種族だ。確か僅かな生き残りが世界評議会の賢者の1人だったはず」


「ダークエルフ…… 」



どうやら彼等が見ているのは私自身の様だ。


光が無かったこの懺悔の間では、自身の姿を見る事は出来なかった。私の何がそんなに珍しいのか気になる処だが、今は彼等への対応の方が優先だ。


私はゆっくり静かに瞳を開けて行く、今までは暗闇の中だったため試みた事は無かった。久しぶりの感覚なので出来るかどうかは分からなかったが、何とか瞳を開く事が出来た。


少しずつ目の焦点が合ってくる。植物を通して見るボヤけた景色とは違い、探検隊の人々が明瞭に見える様になった。久しぶりに直に見た人の姿に感動を覚える。



「…… 目が開いた、まさかまだ生きているのか?」


「さあね、でも敵意は感じられないな」


「さて、どうするね?」


探険隊の人達が私の処理で話し合っている。

どうせならあの植物人間の様に私も、一思いに殺して欲しい。


もう苦しむのは嫌だから……



「…… しかし美しいな」


「ダークエルフは古代の伝承では、才色兼備の完璧な種族だったと聞く…… 」


「確かに、これだけ綺麗なら完璧種族と云われているのも頷けるぜ」



だけど探検隊の人達は、一向に私を殺そうとはせずに私に見入っている。一向に動こうとしない彼等に不安が募る。



(…… 私が綺麗? 自分の姿なんて子供の頃の姿しか覚えてない…… )


私は自分の姿を見て見ようと探検隊の人達に分からない様に、水晶花という鏡の様に綺麗な花を私の姿が見える位置に動かして姿を見る事にした。



「…… な、な、なんじゃこりゃぁ?!?」


その結果、私は素っ頓狂な叫びを上げる事しか出来なかった。



ありがとうございます。

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