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死霊組成  作者: ボナンザ
55/81

55話 奴隷の町

よろしくお願いします



騒ぎに乗じて一旦町の外に出ようと門の元まで向かう僕達。だが案の定、門の手前で10人からの町の衛兵に止められてしまう。



「……魔道士殿とお見受けします。町の評議会から呼出状が出ております。2日後の評議会までは、どうぞ町にお留まり下さい。」


衛兵の隊長と思われる人物が丁重に町に留まる様にと言ってくる。先の僕とベイカーとのいざこざを町の評議会が問題視し、双方の意見を聞くという話だ。


やはり流石に町の中央で巨大な火球を出したのはやり過ぎだった様だ……



「僕はこの町の住民ではありません。だからその命令に従う必要は無いはず」


「あ、アジレスコに入った者には例外なく従ってもらう。それがこの町の掟なのだ」



衛兵はそう言うが僕はこの町の者では無い。その僕を強制する権利は町側には無いと思われるのだが、衛兵達に引く様子は無い。


理不尽な話だがこの町には、一度入った者に対しての強制権があるだしい。



それでも彼等衛兵も僕とベイカーの揉め事を見ていたはずだが、彼等からは僕を町の外に出さないとの強い決意が伝わってくる。


中には僕に対しての怖さからか震えて居る者もいる。衛兵が公務員かどうかは知らないが、彼等の立場も大変なのだろう。



「出さないって事は強制かな? それに2日も足止めされるって事だよね。 何で僕が君達の言う事に従わなくちゃならないんだい?」


少し意地悪く僕が言うとそれに合わせる様に、アレスが彼等に凄まじいプレッシャーをかける。まるでドラゴンに睨まれたかの様なプレッシャーに、衛兵達の顔色が青から白えと変わっていく。



「そ、それでもこの町に、と、留まって貰わなくてはならない…… 」


それでも留まれと隊長の男が言う。彼の立場的にもしょうがない事なのだろう。彼の真っ青を通り越して真っ白な顔が本心でない事を物語っている。



ちょとやり過ぎたかも知れない、流石に可哀想だ。



「この者達を如何なされますか?」



そう僕に聞くアレスだが明らかにぶち切れる寸前だ。

ベイカーとの一件とこの衛兵達の理不尽さに我慢の限界なのだろう。



「か、彼等も雇われだし、意地悪しても仕方ないか……」


このまま彼を止めなければ町ごと消し飛ばしてしまいそうだ。


僕としてはとっととこの町から出て行きたいと言うのが本心だが、ニャトランの願い事が発動したからには、流れ的にもここに留まるのが得策だと思う。


まだニャトランに協力するかもどうかも決めていないが、一先ず町に留まり様子を見る事にしよう。



「仕方ない、もう暫くこの町に留まろう」


「…… はい。了解しました」



僕が止めた事によってアレスの殺気が収まった事と、僕が町に留まると言った事で、肩の力を抜き安堵の溜息を溢す町の衛兵隊。


まだアレスは納得していないと思うが、今は我慢してもらおう。



「それで僕達はお金を持ってないけど、町に留まれと言うからには、僕達が泊まるホテルの予約は取ってあるんだよね?」



せめてもの意趣返しに無理難題を押し付ける。



「も、勿論で御座います!」



隊長が応えると共に部下の1人にハンドサインで行って来いとの合図を送る。どうやらそこまでの用意はされていない様だ。



(これじゃあまるでヤクザだよ……)


脅迫している感は否めないが、それでも異世界のホテルには興味もあるし、泊まれるなら泊まって見たい。



「じゃあホテルまで案内してもらえるかな」


「お、お任せください」


ホテルまでの案内をしてくれたのは衛兵隊の隊長だった。忙しい中ご苦労な事だ。そして時間稼ぎの為か町中をグルグルと案内された。


まあ町の中の様子にも少し興味があったので丁度良かったから良いけどね。



どうやら町ではいま僕の話題で持ちきりの様子。あの火球はやはりやり過ぎた……。


僕とベイカーのいざこざを遠巻きに見ていた町の人々が、化け物を見るかの様に僕達を見てくる。まナメられるよりはその方がいいだろう。



どうやらこの町には中規模のダンジョンもあるだしく、衛兵隊の体長が頼んでも居ないのに案内してくれた。


そこで取れる鉱物が希少なため、この町の財源の一つになっているだしい。鉱物を取りに行くのも奴隷の仕事で、今までに数十万単位の奴隷がこのダンジョンで亡くなっていると云う。


その事を衛兵長自らが誇らしげに話してくれた。誠もって胸糞悪い話だ。



衛兵長に案内されたホテルはこの国で1番のホテル。息を切らせた衛兵がホテルの入り口で敬礼して僕等を待っていた。


どうやらホテルへの伝達は何とか間に合ったようだ。



「そ、それでは魔道士殿、評議会まではこの宿にお泊まり下さい。2日後の正午前にはお迎えに参ります。では」


そして衛兵長は敬礼の後に少しの安堵と共に部下を連れて戻って行った。



「こんな町で後2日も過ごすのか……」


「物は考えようですにゃセイジ殿」


お気楽ニャンコにそんな事を言われたって慰めにもなりやしない。まあ気は乗らないが、この2日間でこの町の有様を見て回る事にしよう。



僕達が案内されたホテルの外観は、この世界ではかなり立派なものだった。



「これはいらっしゃいませ魔道士様、衛兵の方からお話は伺っています。当ホテルで御揺りとお過ごし下さい」


ホテル内に入るとベルボーイと思わしき正装をした男性が出迎えてくれた。衛兵にどんな説明をされたのか、ホテルの従業員の態度はとても親切丁寧だ。



「先ずは部屋の案内をお願いします」


「かしこまりました。こちらです」


案内されてきた部屋はこのホテル1番のロイヤルスイート。王様が寝る場所みたいにシックでエレガントな部屋だ。


トイレも個室が有るが、残念ながら下に桶が置かれたぼっとん式の物だ。もちろんシャワーも無い。その部屋に4人と一匹で入る。



「ん? 4人…… (あ、忘れて居た……)


部屋の中にはダークエルフの女の子も付いてきており、黙ったままにキョロキョロと部屋の中を見回している。


あのたぬきオヤジとのいざこざで彼女の存在をすっかりと忘れていた。約束の対価にたぬきオヤジから彼女。



(……歳は18〜19歳位かな、僕より年上だと思うけど……)


とにかく綺麗な子だ。僕の世界だったら間違い無くトップクラスのアイドルになっていたレベル。


でも、あまりに綺麗過ぎると及び腰に成るのは僕だけじゃないはず。それに地球では彼女レベルとまでは言わないが、テレビやネットで可愛い子を見ることが出来る。


この世界ではどうだか知らないが、僕は耐性がある方だと思うけど、どうだろう? 何にしろ彼女の身柄を預かるからには優しく接してあげよう。



「そ、そう言えば君の名前を聞いて居なかったね。何て名前なんだい?」


彼女の存在を忘れていた事を悟られ無い様に、その名前を聞く事にする。



「…… エスメラルダです」


「エスメラルダか、いい名前だね」


「……」


なんかディ○ニーのキャラに居そうな名前だ。


彼女を奪ったのは成り行き上のベイカーへの当て付け。お金を要求してもあの金満オヤジなら払えそうだし、他に欲しい物も無かったからアイツの側に居た彼女を選んだ。


だけどあの取り乱し方を見るからに僕の予想通り、ベイカーにとっては大切な存在だった様だ。



(あのたぬきオヤジに意趣返しが出来ただけでも良しとしておこう……)



今回の騒ぎはニャトランの願いが発動した事による副産物だ。この彼女も何処かで自由にしてやるつもりだが、今はまだ一緒に行動してもらう。


ダークエルフがどんな所に住んで居るのかは分からないが、事が済んだら仲間が居るその近くまで送り届けてあげよう。



「エ、エスメラルダには仲間とか居たりするのかな?」


「…… 」


「……(無言か……)



いろいろあり過ぎて彼女も状況整理が出来て居ない様子だ。本当に綺麗な娘だけど、どうゆう経緯で奴隷になったのか興味がある。


正直僕に異世界アルアルの様なハーレムを作るつもりは無い。性欲は勿論有るけど、状況に託けて強引にやるなんてそんな悪趣味は無い。


今は国分さん達を見つけて元の世界に戻る事の方が先決なのだ。



「なんか疲れたね、一休みしてから夕飯でも食べに行こうか」


「はい」


嫌な流れを切る様にアレスに言う。2日後の評議会からの呼び出しの事を考えると憂鬱極まりない。だから今は美味しいご飯でも食べて英気を養おう。


ありがとうございます。

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