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死霊組成  作者: ボナンザ
52/80

52話 異世界は暴力ありき……

よろしくお願いします



ニッチュ.ベイカーはアジレスコ1の奴隷商で、この町では絶対的な権力を持っている。この町で彼がYESと言えばYESになり、NOと言えばNOになる。


今日はオークションで、1年も前から目を付けていたダークエルフを競り落とせた事でご満悦だった。エルフでも珍しいのに、ダークエルフとなると滅多に世には出ないため大変に貴重なのだ。


そこで何時もなら会場を出て直ぐに馬車に乗る所を、競り落としたエルフを町の人々に見せ付ける為に、町にある自身の屋敷まで歩いて帰る事にしたのだ。


そして運が悪い事に、この場でこうして僕に出会ってしまった。



この町での彼の申し出は絶対だ。命令と変わらないソレを断った者には、暴力という名の地獄が待っている。



「この町で戦い勝った者は敗者から好きな物を奪える。それがこのアジレスコのルールだ。小僧、お前がブロンに勝てたならワシの物を好きなだけくれてやろう。勝てたならな、ケフフフッ!」


勝者が敗者の所有物を得る事が出来る約束という名の、この町の権力者の暇つぶしのゲーム


決して負ける事は無いと、自分の持ち駒の中でも1番強い大男を送り出すベイカー。僕の見た目からして、もっと弱い配下でも良かったのだが、ベイカーはそうはしない。


どんな些細な事にでも万全で望む。そんな気質が彼をこの町1の奴隷商にした。



ゴリゴリと指を鳴らしながら近く大男の名はジュビル.ブロン。人を殴り殺す事に何よりも生き甲斐を感じる暴力マシーンだ。


彼は"剛力''の上位スキルの"超力''のスキルを持つゴリラ人間。その握力は有に500キログラムを超え、嘘か誠か1トンの重さの鉄塊を持ち上げる事が出来るという。


冒険者に例えるとBランクとAランクの丁度真ん中辺りの強さか。力ならバットス草原で会ったBランク冒険者のボトムスより力は上だろう。


(動きは遅いが、捕まれば本当に骨を砕かれそうだね……)


現に彼は武器を敢えて使わない。それはご自慢のバカ力によって相手の骨を砕く事に喜びを見出しているからだ。



「いかがなされますか?」


アレスから、僕からの命令があればいつでも行けるとの意思が伝わって来る。



「大丈夫、僕がやるよ」


だけど今回は僕が対応しようと思う。僕はお祖父ちゃんから護身術程度に空手や柔道を習っている。


この道中でも、アレスと空手の組手の稽古をして来た。詳細は省くが、僕が教えた形や投げをあっという間に覚えてしまい、最近では僕の方が扱かれ教わる立場だ。


それにこの世界に来て魔導書の封印が解けた影響か、地球でより魔導具の効果が高く感じられる。それと共にアレスとの稽古の過程で、この程度の相手なら僕でも勝てると分かっている。


アレスの扱きもあって、最近やっとブーストリングの2.5倍に身体が馴れて来たところ。それも僕が戦う理由の一つだ。それにそろそろ他の魔導具とのシナジーを確かめておきたいからね。


今回は接近戦を試すのに丁度いい相手だ。力は侮れないが動きは遅い、魔導具を使った僕の方が数段早い。今の僕なら勝てる相手、僕はそう判断した。


アレスの様な化け物みたいな強さの者を相手にしていれば嫌でも強くなる。そうゆう事だ。


異世界で初めての実戦だが封の解けた魔導具の影響か、何故か恐怖心は無い。



「…… ナメやがってクソガキが、全身の骨を砕き散らしてやるぜ!」


余裕をかます僕にブチ切れたブロンが飛び掛かって来る。魔導具を使えるとはいえ、捕まってしまえば僕の負けは確定だ。


そのためいかに捕まらずに此方の攻撃を当てて、相手を弱らせるかが問題だ。


自分だけの時間を早めるタイムゾーンの効果に、身体能力を2.5倍(封印が解けた事で実質は4倍)にするブーストリングの効果が加われば、僕だけが一方的に攻撃する事も可能。


ブーストリングの制限時間は連続使用で10秒だが、断続的に使えば一瞬だけ時間を遅らせる事も出来る。


スピードで勝る僕にはその一瞬が大きなアドバンテージだ。それと共に重力の煌玉で重力を上げて動きを阻害する。


3つの魔導具の相乗効果。スローモーションの様に遅くなるブロンの大振りパンチを交わしつつ、僕は迅雷の煌玉による電気ショックを当てていく。


魔導書の封印が解けた今の僕なら平行思考も強化され、2つの煌玉を自在に操れる様になっている。魔法とは違う煌玉の威力を抑える事で使える回数を増やす事も可能。


そのため重力の煌玉で相手の動きを阻害しつつ、相手に継続して電撃攻撃を当てていく事が出来るのだ。



「グガッ!?」


人体に許容量以上の電気が流れると、筋肉が萎縮して体の自由を奪う。


相手の攻撃を交わして電撃を当て続ける。此方の攻撃を当てる度に電圧を上げていき、最終的には50Vを上まる70v位の電圧で動きを止めたブロン。


だが体力自慢なだけはある。普通の人なら死んでいてもおかしくない電圧にも耐えていたが、流石に限界が来た様だ。



アメフト選手並みのスピードはあったが重力で阻害され、電撃で衰えていく一方の相手なら今の僕でも対処は可能だ。


正直ブーストリングのタイム制限が切れそうだったので丁度よかった。

 


力だけは上だが、草原でアレスが蹴散らしたBランク冒険者のボトムスの方が、総合力なら優っているだろう。


ブロンが武器を使わない事も僕には幸いした。



「どうする、まだ続ける?」


「…… い、いや、俺は降参する……」


地面に膝を突き立ち上がる事すら出来ない状態のブロンが負けを認めた。負けを認めた相手を痛ぶる趣味は僕にはない。



「うん。」


だけど僕は自身の足元に地雷を仕掛けておいた。彼が本当に降参したのならかかる事のない地雷だ。



「バカめ!」


僕がニャトラン達の元に戻ろうと背中を向けた途端に、ブロンが立ち上がり此方に突進して来る。スキを伺い体力を温存してチャンスを狙っていたのだ。


まさに絶好のチャンスだった。だがその手が僕に届く事は無かった。



「ガアァァ!?」


「バカはあんただよ」


僕が仕掛けた地雷は重力の煌玉、同じ属性ならその場に留まらせる事も出来るため、こうゆう使い方も可能だ。


ブロンがかかった地雷は重力を通常時の5倍にしておいた。彼の体重が100キロならその5倍の500キログラムの圧がかかる事になる。


彼は突然の加圧に動けなくなってしまう。今度は彼の力の耐久力を調べて見よう。


だが凄い、この重圧ではほんの数秒間動きを止めただけで、ブロンは再び動き出したのだ。



「……グヌヌヌ! クソガキがぁ!!」



怒りに顔を歪ませながら一歩ずつ歩み寄って来るブロン。



「へ〜、本当に力持ちなんだね。ならこれならどうかな?」


今度は彼にかかる重圧を、一歩歩く毎に100キログラムずつ増える様にする。



「グッ! ガッ……」


丁度1000キログラムの加重で動きを止めたブロン。足の骨が軋み、耐えられなくなった膝があらぬ方向に折れ曲がる。



「ギャアァァ〜!!」


(うわっ! エグい…….)


それを見て僕は慌てて重圧を止めた。少しやり過ぎた感は否めないが、自業自得だしまあいいでしょう。お金が有れば治せるとは思うし、後は彼方で何とかしてもらおう。



ブロンと戦って思う事は、今回は相手が良かったという事だ。


僕の魔導具の力が有れば、ただの力自慢(一流のアメフト選手並みのスピードは有る)なら魔導具の補佐で、捕まりさえしなければ何とでもなる事が分かった。


今の僕でも魔導具の力を使えば条件はあるが、パワータイプのBランクの冒険者クラスと、互角以上の戦いが出来るという事だ。


これがもし、僕よりスピードの速い技巧派だったら、僕では厳しかったかも知れない。



それに今回の戦いで分かった事がある。僕のポテンシャルではブーストリングの2.5倍以上の力にはついて行けないだろう事が分かった。


地球人の弊害か、僕の体が魔導具の負荷に耐えられないのだ。


それでもセプテム.アイで、ロングレンジ攻撃していれば大概の敵は倒せると思う。だがそんな魔道具頼りの力任せでは、きっとどこかで綻びが出る。



アレス曰く、『国幽斎様の魔力は桁が外れております。貴方様の魔力ならどの様な魔導具も使い熟せるでしょう』との事。


だけど僕自身が地球人なせいか、魔力を感知する事が出来ない。その為魔法を使う事も出来ない。まあ僕には魔法の代わりに成るセプティム.アイや魔導具が有るからね。


魔導具は魔力が無ければ発動しない。どんなに凄い魔力が有っても自分には分からないなんて、何とも不思議な話しだ。


それでもアレスの言う通り、魔導具を使い熟してブロンに勝つ事が出来たのだから良しとしておこう。



この弱肉強食の世界にいる限りは、どんな状況にも対応出来る様にしておくべきだ。まあ今の僕の強さは魔導具ありきの強さだからね、僕も驕らない様にしなきゃいけない。



僕とブロンの一騎打ちに他の用心棒は参加しなかった。いや参加出来なかったと言った方が正しい。


何故なら、アレスが動こうとしていた者達の足首から下を切断していたからだ。



「いがっ!?」


「あ、足いぃぃ!?」


「痛いいいいいィィ?! い、一体なにがぁァァ…… 」


立っていれば誰にでも影は出来る。射程内の闇を自在に操れるアレスにかかれば、この程度の事は朝飯前だ。


ちょっとやり過ぎ感は有るけどコイツらは、分が悪くなれば僕とブロンの戦いに参戦する腹積りだった。


それに実際に動こうとしたからアレスが動いたのだ。自業自得と諦めてもらうしか無い。



僕は何が起きたのか理解出来ず、アワアワしているベイカーに向き直ると口を開く。



「さてベイカーさんだっけ? さっきの約束は守ってもらうよ」



ありがとうございます。

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