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死霊組成  作者: ボナンザ
41/80

41話 話し合い

よろしくお願いします




「…… (ちょっと場の空気が重いね)


ここで僕は場を治めようとパンと一つ柏手を一つ打つ。すると皆が一斉にこちら見てくる。



「さあ、これで争い事は終わり。お次は話し合いといこう」


その後は彼等からの事情聴取、先程のアレスの活躍もあり皆は親切に話をしてくれた。


やはり彼等は冒険者で、冒険者組合からバットス平原の調査を依頼されて来た様だ。そして依頼主は何処かの貴族と、僕の予想通りの応えが返ってくる。



「お、俺達はただの調査だ。もし俺達が戻らなかったら討伐隊が組まれる事になっている…… 」


話し合いという事で少しだけ余裕を取り戻したジーンが、自分達が戻らない場合には討伐隊が組まれると言いだした。



「うん、嘘だね」


「グッ……」


僕は話し合いの場に"ジャスティス''という魔導具を持ち込んでいる。この魔導具は相手の嘘に反応する。


どんな仕組みで判別しているのかは分からないが、とにかく嘘に反応するのだ。


この場面で無事に帰りたいと思う彼の気持ちは分かる。まあ彼等に対してこちらから何かをするつもりは無いので安心して欲しい。



「大丈夫、安心して下さい。貴方達に危害を加える気はありません」


その旨を口に出して言うと、冒険者達も安堵した様子。唯一ジーンだけは、一瞬で嘘を見破られた事で焦った顔をしている。


彼等はグランの町の冒険者ではなく、その隣のハフステルグという町から来た冒険者。


冒険者組合が廃れてしまったグランには、ドクな冒険者は居ない。その為に隣の町の冒険者組合まで話が飛んだのだ。



(まあ、あの領主が収める町では無理もない話だね……)



その後も冒険者組合や冒険者についての話を聞いた。


冒険者組合は民間や貴族から委託した仕事を冒険者に割り振る予想通りの組織。


そして冒険者にはAを最高ランクに、B、C、D、Eとランクがある。


だが世界に5名だけだが、冒険者組合が定めた力のカテゴリーに収まらない規格外が居るだしい。


Aランカーを遥かに凌ぎ、一個で国の命運すら左右する戦闘能力の持ち主達。冒険者組合は彼等をSランクと位置付け、最高位の冒険者として扱っている。



今回調査に来たジーンさんは元Aランカーの冒険者だしく、今は調査員兼若手の育成係りをしているそうだ。


彼等自身の事も少し聞いてみたら皆喜んで話してくれた。だが秘密主義なのかジーンだけは終始口篭っていた。


嘘を言っても僕に見破られるので口を噤む事にした様だ。まあ腐ってもAランカーという事かな。


アレス曰く、「彼は何らかの有用なスキルを持っている」との事。スキルの事は気になるが僕達に害を加えないのならどうでもいい。


今回の調査には他にもBランカーが2人参加しているだしいが、きっと先程アレスと争った2人がそうなのだろう。その2人も今では角の方で縮こまっている。



「バットス平原の調査依頼を出した貴族は分かりますか?」


「貴族の秘書が依頼に来たと聞いただけで、詳しい経緯は知らない…… 」


ジーンの言葉に嘘は無かった。まあいくら顧問とはいえ、冒険者組合も依頼主の情報までは教えないだろう。



「そうか分からないか…… (まあアレスを組成してる間は、常に魔導書の魔力がダダ漏れの状態だったからね。それを警戒しての依頼かも知れないな)


All things in the worldの中に居た2日間(あちらでは2ヶ月)は、常時展開された魔導書から莫大な魔力が放たれていた。


恒星を思わせる謎の輝きが2晩も続けば、警戒するなと言う方が無理というもの。



「いかがなされますか国幽斎様? 貴方様が一言命じて下されば、私がその貴族共を…… 」


「そ、それは辞めておこうねアレス……」


「…… はい」


なんとも残念そうに返事を返すアレス。彼は過去の出来事で貴族に、いや封建制度に恨みがある。当時の貴族は生きては居ないが、彼がそれらの事をどう思っているのか、聞くのは怖いので辞めておこう。



(まあ大体は見当が付いているけどね)


僕の脳裏にグランの領主の執事だった男の姿が浮かんだ。



後は適当に近隣の町や国の情勢などについても聞いておいた。


残念な事に国分さん達の情報は彼等からは得られなかった。その代わり敵対している隣の国でマスター.メナスを名乗る人物が現れたと聞いた。


その者はお供に子供の様な剣豪と、おっさんの様な剣士を連れて居るという。



「…… (まさか国分さん達て事は無いよな? おっさんのお供てところも気になるし…… )


隣国のラウム神聖帝国とこの国は今も戦争中だと聞く、そんな中で隣国に行くのは何やら一悶着ありそうだ。



(彼女達が無事で居てくれたらいいのだけど……

まあ、彼女達には魔導具も渡してあるし、余程の事が無い限りは大丈夫だと思いたい)


それ以外にも女神の加護を持つ巫女が、お供の者と勇者探しの旅に出たとも聞いた。



「へ〜、勇者なんて本当に居るんだ」


「おお! 勇者とはまさに国幽斎様の事!」


アレスが何やらトチ狂った事を言っているが無視である。やはりこの世界でも異世界テンプレはある様だ。



「何処かの国で悪巧みして、勇者の集団転移とかやってそうだよね」


「そうなのですか!? その様な事が実際にあるとは…… 」


「あ、有るかも知れないし、無いかも知れないね……」


「おお成程、そうなのですね」


「…… 」


相槌を打ってくれる事はいいのだが、根が真面目なアレスとのやり取りはなかなかに疲れる……


特に僕は元の世界ではボッチのモブだったため尚更だ。



「と、とにかく、有意義な話しは聞かせてもらったし、君達はもう帰ってもいいよ」


冒険者達の間にこの日1番の安堵が広がる。


ジーン達には僕らの事は、魔道士とそのお供という事にしてくれと言っておいた。


草原であった例の光の件も、魔法の研究という事で話を付けてある。


彼等が冒険者組合にどう説明するかは彼等任せだ。どのみち僕達は、この地に留まるつもりは無いので、正直どうでもいいのだ。



「じゃあ気を付けて帰ってね〜」



冒険者達を送り出した僕達は小屋で一服する事にした。居間では相変わらずニャトランが寝息を立てている。



「ムニャ、ムニャ…… もう食べれないニャン……」


「…… (本当にお気楽なにゃんこだよ……)



でもそれがニャトランの魅力でもあり、強力なスキルの代償みたいな物なのかも知れない。そんな事を思って居るとタマさんが気にするなとばかりに足に絡み付いて来る。


タマさんも外の喧騒に警戒して、小屋の中で待機していた様だ。



「タマさんも小屋の守り、ありがとね」


「にゃん」


タマさんにアイテムボックスの中に入れていたモンプチゴールドを上げる。タマさんは美味しそうにモンプチゴールドを平らげた。



翌日、予想通りに生贄を欲して魔導書が蠢き出したので、都合良く森の奥で繁殖していたゴブリンさん達を餌として与えた。


彼等は都合良く大きなコロニーを作っていたので一網打尽にさせてもらった。


護衛で強引に着いて来ていたアレスの話によると、ゴブリンさん達のコロニーにはなんと、ゴブリンキングが居たらしい。


キングの居る群れは、中小規模の町なら滅ぼすだけの力が有るとアレスが教えてくれた。


一瞬で魔導書が吸い込んでしまったので分からなかったが、キングが居なかったら魔導書が満足しなかった可能性が有る。



「素晴らしい! ゴブリンキングがまるでゴミの様に、国幽斎様のお力は底が知れない!!」


「ハハハッ……」


魔導書の力を使うのはしばらくの間はなるべく控えよう……



その間ニャトラン達には小屋で待ってもらっていた。

もちろんモンプチゴールドを2缶置いて来ている。


昼頃、ここから移動する事になったのだが、アレスが闇で作った馬車(馬も闇で作れるだしい)には、もちろんサスペンションは無かった。


ダメ元でサスペンションの簡単な説明をしたのだが、組成で生まれ変わったアレスは知能も飛躍的に進化しており、僕の簡単な説明でサスペンションの仕組みを理解してサスペンション搭載型の馬車を作ってくれたのだ。


詳しくは聞いていないが、彼の闇の中で金属の錬成を行ったらしい……。


そして数度の検証実験を経て、アレスの闇で作った馬車(振動制御のサスペンション付き)で僕達は、バットス草原を旅だったのだ。


ありがとうございます。

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