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死霊組成  作者: ボナンザ
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25話 国分真江2 異世界は悪臭と共に……

よろしくお願いします




太古の昔から存在する魔導書、神の御技にも匹敵するその存在は人々に畏怖の念を抱かせた。


それは魔導書に選ばれし所有者も同様、彼等が魔導書を使う事でその存在意義を発揮するのだ。


魔導書と所有者は一心同体。


そして魔導書を持つという事は力を極める事と同等の意味を持つ。その為人々は、魔導書の所有者をマスター.メナス(脅威の主)と呼び恐れ敬った。



地球と並行して存在する2つの世界。その中の一つアーゼナルワールドで第二の大陸ローレシア大陸。


比較的争いの少ないアーゼナルワールドにあって情勢不安定な大陸。


大陸一の大国アーリアナ王国を筆頭に、いラウム神聖帝国、ガンザビ獣王国、アーゼナル共和国などの大小様々な国が乱立して覇権を争っている。


ローレシア大陸の西、比較的暖かい場所にラウム神聖帝国という国がある。


この国は反真女神教を国の方針として掲げており、真女神教を崇める近隣諸国からは嫌われているため、一触即発の状態だ。


だが大陸ナンバー2の国力、大陸1の軍事力は侮れず、アーリアナ王国を筆頭に真女神教を崇める国同士の同盟で牽制しているのが現状。



そんな国の国境近くの砦に国分真江と三池真実の2人は居た。


そして何故かむさっ苦しい盗賊のおっさん達に囲まれて、絶対絶滅の状態に陥っている。



「グヘヘヘッ! お嬢ちゃん達、観念しな」


もっともらしく盗賊のモブが、下卑た笑みを浮かべながら彼女達に迫る。



「…… な、な、何で……ま、マコト……」


「大…… 私…… 」


「……う、うん…… 」



薬師寺清司がこの世界に渡る1週間程前に、彼女達はこの世界に渡って来た。


そして彼女達が転移した場所が、風切りの砦と呼ばれる天然の砦だった事が、彼女達にとっての不運の始まりだった。



風切りの砦、そこは帝国と王国との国境を見張る為に、自然の地形を利用して作られた天然の砦だ。


だが1年前に王国との小競り合いからの戦で、兵が少なくなった処を狙われて、盗賊達に占領されてしまう。


この砦の背後にあるバルドゥトゥ山脈の奥地には、ガルグイユという火炎竜が住んでいる事で有名だ。縄張り意識の強い竜は侵入者に容赦はしない。


山脈側からの攻めはリスクが高い。そのため砦を落とすためには、正面からの一点攻撃以外に選択肢は無いため、難攻不落の砦として知れ渡っているのだ。



天然の岩場とバルドゥトゥ山脈を利用した砦の守りは固く、帝国が送った精鋭誇る奪還部隊をも退けて見せた。


まさか奪還部隊が負けるとは思ってもいなかった帝国は、奪還部隊の指揮官だった第二皇子を人質に取られた事もあり、手を出せない状況が続いているのが現状だ。



奪還部隊が敗れた原因の一つそれは、帝国が王国との戦で人員を割れなかった事だ。それと1番の理由は、砦を占領した盗賊の頭が凄腕の元軍人だった事だろう。


砦を占拠した盗賊の頭は帝国に滅ぼされた小国、サイス王国の騎士団長だったギルバルト.バークレイという名の男。


彼は落ち延び生き残った兵を率いり、帝国で有名な盗賊として名を馳せる様になる。頭も切れる彼は力を付けながら帝国と王国の戦を待ち、その隙に乗じて砦を占領したのだ。



対奪還部隊戦では、相手方の大将を煽る事でその怒りを誘い安易な攻めを誘発させた。プライドだけは高い貴族のボンボンを乗せるのは簡単だ。


そしてあえて砦の門を開く事でそこに兵を誘導させる。


砦の入り口は奥に進む程に狭くなる様に改造されており、その壁にはしこたま糞尿を擦り付けておいた。


防衛戦では古くから糞尿攻めは用いられている。

農民出の兵ならともかく、後方に控える貴族連中には効果増大。


そして今回の奪還部隊は貴族出身者で固められたエリート部隊だ。その結果は言わずもがなだ。


戦の最中でも上空からの糞尿攻めは続けさせた。

綺麗な戦いに慣れた帝国の騎士達は大いに混乱した事だろう。


その徹底した糞尿地獄は、彼等の指揮を下げ戦意を喪失させた。そうなれば後は各個撃破していくだけ。



「…… グッ…… む、無念…… 」


そして唯一生きたまま捉えられた第二皇子は、糞尿塗れのままに、帝国への人質として牢に囚われたのだ。



「おのれ正々堂々と戦わぬ卑怯な盗賊共め!」


「ガッハハハハハ、卑怯? その言葉は俺達盗賊には最高の褒め言葉だぜ」


歯軋りを立てる糞尿塗れの第二太子に向かって小便をひっかけるギルバルト。



本来のギルバルトは兵や国民に慕われていた人格者だった。だが帝国に家族を奪われ、国をも奪われた事で彼は変わってしまった。


帝国が相手ならばどんな手段も厭わない、何だってやってやる。彼は復讐の鬼と化したのだ。



奪還部隊を退けた盗賊達は勝利の酒に酔いしれ、明け方近くまで宴は続いた。人質が居り、常時見張りが立っているのだ。敵に攻められる様なヘマはしない。


そんな宴が3日程続いたある晩、砦の中央付近に猫の目を縦にした様なゲートが現れたのだ。



「あっ? ああん?」


それに気付いたのは見張りの盗賊の1人。今まで見た事もないゲート。そのゲートから人間が飛び出して来たのだから、その驚きは一塩だ。



「なっ!? なっ!? なんだァァ!??」


見張りの盗賊が上げた声に他の見張りが集まってくる。


そんな盗賊達とは対照的に、初めての異世界にワクワクしていた国分さんだったが、突然の鼻を突く悪臭にその顔が強張る。



「…… く、臭っ!」


「真江!……」


そんな彼女とは違い三池さんの方は、瞬時にゲート先の状況を把握して、天地上下の形に構えを取り警戒に入る。



「ああん? 何でこんな所に娘っ子が…… まあそんな事はどうでもいいか……」


彼女達を取り囲んだ盗賊の1人が舌舐めずりしながら国分さんを上から下まで見下ろす。



「片っ方は鼻くそだが、もう片っ方はイケるな」


「人質を助けに来たのか何なのか知らねえが、頭にバレたらお預けん食らっちまう。グヘヘヘッ楽しませてくれよ」


久しぶりの女に下半身をおっ立たせて盗賊達が迫ってくる。魔導具の力か、彼女に対しての悪意がダイレクトに伝わってくる。


この段階になってやっと状況を理解した国分さんが、先程まで感じていた悪臭をも忘れて、三池さんの背後に隠れる様に蹲る。

 


「…… な、な、何で……ま、マコト……」


「大…… 私……(大丈夫、真江は私が守るから) 」


「う、うん…… 」



盗賊共にとって彼女達は鴨がネギを背負って来た様な存在。自分達なら軽く捩じ伏せられる。そう思っていた。


だが大男の自分達が140にも満たない小さな小娘にいい様にあしらわれているのだ。



「なっ、なんだぁこのガキ!?」


「な、何をされているのか分からねぇ?!」


三池さんは合気道の達人だ。飛びかかって来る盗賊達を千切っては投げ、千切っては投げを繰り返して、一向に近付けさせない。


始め余裕を見せて素手で向かっていた盗賊達だったが、余りの三池さんの強さに刃物を抜き本気になる。



「ムッ!……」


その盗賊達の気配の変化に、地球で清司に渡された刀を居合の形で構えて、さらに臨戦体制に入る三池さん。


盗賊達も彼女の放つ並々ならない闘気に気圧され動けなくなってしまう。



「……」


「…… マコト…… 」


言わずとも分かる。もし一歩でも動けば問答無用で切り捨てられるであろう三池さんの気迫。



「…… ち、ちきしょう、ちきしょう! うわああァァ〜!!」


だが痺れを切らせた盗賊の1人が三池さんに切り掛かって行く。三池さんも仕方なしとばかりに刀を抜きに掛かる。


ありがとうございます。

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