第六話 部屋にて
(06.)
「瑠璃ちゃんの部屋って……意外と質素だネ」
「まぁ漫画とかは電子書籍を買ってるから」
あの後私とヘリナだけの空間を作ってほしいと言われたので、私の部屋に来ている。
ヘリナはいったい何がしたいのだろう。
「ほ〜」
ヘリナが何かを企んでいるような目でこちらを見てきた。
らっくうきつくあ
「え!? 何!? 何語!?」
「頭の中で目的考えても即バレするだろうから暗号にしてみた」
「くっ……くそぅ!」
見るからに不服そうな顔をしている。
そりゃ人のスマホの中を勝手にしっかりと見られたらひとたまりもないじゃん。
とりあえずパスワードは……[自主規制]でいいか。
「え、そ、そんな言葉人前で打てないヨー」
「打てないようにするためだよ、打ててしまったらパスワードの意味がないじゃん」
「瑠璃ちゃんは人前でそんな言葉打てるの?」
ヘリナは頬を赤らめ首をかしげながら聞いてくる。
だがその点は問題がない。
「私、友達いませんから!」
数秒の沈黙……。
「あ、あわわ、そんな、そんなこと自慢するようにいっちゃメ! ですよ!」
「大丈夫! 気にしてないから!」
滅茶苦茶気を使われてる……。
ヘリナは急に距離を詰めて怒ってきた。
慌てながら怒ってるせいで身体が前に斜め気味だ。
「あうっ!」
「大丈夫?」
やっぱり倒れちゃった……。
ヘリナのことを心配しながら手を差し出す。
「ありがとうございますぅ……」
「怪我はない? 頭大丈夫? 骨折は?」
「平気です……というか今さりげなく私のことディスってきませんでしたか?」
というかへリナって素が敬語なんだ。
思考が読まれたらしく、ヘリナはハッとした顔になってまた慌てる。
「違うのこれは……親に躾けられて……あー子供の頃の私恥ずかしー!! 何であんなに敬語ばっかり使って清楚感出してたんだー!!」
「ほうほう……これはこれは……」
どうやら私はヘリナの面白い一面を知ってしまったらしい。
ヘリナはすぐに口をつぐんだが、もう遅い……っていうか子供の頃?
もしかしてこのゴスロリ……。
「ところで今何歳なn……痛い……」
こいつ……今殴ってこなかったか……?
「レディに年を聞くのは失礼ですよ♪」
「キャピキャピうるさいなー年を聞かれて嫌がるということは少なくとも三十路超えてるってことではいはい」
「友達いないくせに! 後私は15歳! まだギリギリロリでいけるもん!」
……友達いないのはしかたないもん。私の席をいつも教室のかどっこにする先生が悪いんだもん。
「普段何してるの?」
「学校に持ち込んでるアタッチメント付きタブレットで空間を切り裂く神格音ゲーの練習したり、百科事典読んだり、SNSに上げてるイラストのr18差分イラストを描いたりしてる」
「変態ですね……」
ヘリナが驚愕と軽蔑を混ぜ合わせた視線でこちらを見てくる。
「r18って言っても性的なやつじゃなくてグロ系なんだけど……」
「空間を切り裂く神格音ゲーのレートは?」
「虹レート」
「キモい」
ヘリナが若干後ろに下がった気がした。
あれ、こいつリョナ好きとか言ってなかったっけ?
「女の子が触手とかに[自主規制]されているのは好きなんですけど、ただのグロ系は好きじゃないです」
「ヘリナのほうがキモい」
「心外なんですけど……」
でもそういう系も悪くないな……今度描いてみるか。誰に標的になってもらうのがいいかな……あ、近くにちょうど良さそうな素材あるじゃん。
ヘリナの方を向く。ヘリナは頬を赤らめた。
「ところで私と話したかったことって何?」
「あ、忘れてた」
ヘリナは咳払いをし、大声で叫んだ。
「瑠璃ちゃん、貴方に魔法少女になってもらうゾ!」
私が魔法少女になって触手生物をめったんたんにしていくストーリーか……いいな。
「触手から一旦離れて!」