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薔薇の死神  作者: 族猫


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68.疑惑のお出かけ

『汝、力を欲するか‥‥‥?』

「欲しい‥‥‥力が欲しい‥‥‥」

『では問おう‥‥汝が求めし力とは如何な力か‥‥?』

「全てを滅ぼす‥‥‥俺から‥‥いや‥‥弱い人間からあらゆる物を奪う全ての理不尽に抗い滅ぼす力を!!!」

『なに!?』

「魔物も‥‥魔法少女も‥‥‥国も‥‥‥全てに復讐を‥‥‥あらゆる『力』に裁きを下す!!!」

『そ、それは人の身では過ぎた力だ!』

「まずは、そこにいるお前からだァァァァァ!!!!」

 

 そうして俺は、いつの間にか手に持っていた鎌を振りかぶり目の前にいる一人の魔法少女に向かって突撃した。



「ハッ!?」

 

 俺は目を覚ました。どうやら、またあの時の夢を見ていたようだ。何とも胸糞悪い記憶だ。あの俺に斬られた魔法少女の驚いて俺をまっすぐ見つめる表情を今でも鮮明に覚えている。


「またこの夢か‥‥一体何なんだよ‥‥ってか今何時だ?」


 俺が時計を確認すると、朝の6時を過ぎた辺りだった。


「永瀬との約束は10時だったよな?」


 今日は土曜日で学校は休みだが、例の永瀬とその従姉妹と遊ぶ約束を今日していた。


「最悪な目覚めだが、とりあえず割り切って遊びは楽しまないとな」


 俺はベッドから出て顔を洗いに向かった。



「ねえ、これなんかどう?」

『ん〜それならそっちと合わせたほうが可愛いわよ?』


 姿見の前で身体に服を合わせながら、ビデオ通話で繋がっているネルに問いかけると即座に反応する。やはりプロだけあって服選びのセンスは抜群で、俺はこうして時折意見をもらうのだ。


「ありがとうネル!正直私一人だと、服選びなんて不可能だったわ!」

『困った時はいつでも頼って!愛する我が子の為ならどんな相手との約束でも後回しにするから!』

「いや‥‥それは優先しようよ‥‥」

『別に気にする必要ないわよ〜私はそんな事より春海の方に一緒に遊びに行く友達が出来て嬉しいのよ!』

「ゼルと同じこと言ってる‥‥」

『はぁ!?アイツと同じなんて嫌なんですけど!?まあ‥‥意見は同意できるけども‥‥大 変!不本意だけど!』

「ははは‥‥‥まあ、落ち着いて‥‥」

『そうだ!今度近くにある店に来て頂戴!来る日にあわせて私もその店にいるから!ゆっくり服を選んであげる!』

「分かった。後で連絡する」

『それじゃあ楽しんでらっしゃい!』

「うん、それじゃあまた」


 俺はそう言って通話を切った。何とか着ていく服も決まったのでとりあえずは安心だ。俺は姿見でもう一度今の姿を眺め、髪を少し整えてみる。


「ふふっ可愛いじゃん」


 鏡に映る自分自身を見て、思わずそう呟いた。そして瞬間的に襲う羞恥心に俺は身悶える。


「‥‥‥って女か!」


 そう自分自身にツッコミを入れるのは何度目だろうか。春海になると、精神も完全に春海寄りになってしまうのは困りものである。


「何を叫んでいるんだい?」

  

 俺が姿見の前で項垂れていると、不意にゼルがそう声をかけてきた。


「いや‥‥たまに自分が本当に女になってしまうのではないかと考えると怖くてね‥‥」

「立派な女の子じゃないか」

「いやまあ、女だけども」

「はぁ‥‥‥馬鹿なことしてないで、早く朝ご飯を食べて出かけたまえ。女の子との約束に遅れる何て男として恥ずかしいよ?」

「アナタは、私を男にしたいのか女にしたいのかどっちなのよ‥‥‥」

「さぁ?」


 ゼルは揶揄うような口調でそう言ってその場を後にする。俺はその様子を大きくため息をつきながら見送って自分も部屋を出た。




「おまたせ〜!」


 そんな声にスマホを弄っていた俺は顔を上げる。すると、車椅子にのった唯という少女とそれを押す永瀬の姿が見えた。


「ごめんね!待たせちゃった?」

「ううん、今来たとこ」


 永瀬の問にそう答えてスマホをカバンにしまう。余談だが、この日の為にネルと一緒にこのカバンを買いにいったのだ。そこそこいい値段がしたが、ネルが買ってくれた。正直、ゼルから小遣いを貰ってもいるため自分で出すといったのだが「娘のオシャレにお金を出すのは母親の務めよ!」などと言って一銭も出させてもらえなかった。


「やあ、この間ぶりだね。今日は私のワガママで付き合わせてしまってすまない」


 唯はそう言って軽く頭を下げる。俺はそれを見ながら、やはりどこか不思議な雰囲気を纏っている彼女に挨拶を返す。


「いえいえ!私もまた会える機会があって嬉しかったですし、そんな謝らないでください!」

「そう言ってもらえると助かるよ」

 

 俺の言葉に、唯は顔を上げて儚げのある笑みを浮かべる。だがその光のない瞳は、何かを見通すかのような怪しさを感じさせた。


(まただ‥‥何なのこの違和感‥‥‥)


 ライブの時の時に会った際も感じたこの違和感。ほんの僅かではあるものの確実に感じるこの感覚に、俺は思考を巡らせる。


(可能性は二つ。一つは実は過去に会ったことのある人物説。もう一つは彼女が実はアサシンが言っていたもう一人の魔法少女説。この違和感の正体が魔力による物だとして、魔法少女にしては魔力を漏れさせすぎている‥‥‥)


 膨大な魔力を持つ魔法少女でも、魔力が垂れ流しになるなんて事はまずあり得ない。それこそわざと出し続けているか、よほどの事情が無ければ‥‥‥


(とりあえず、様子を見てみるしかなさそうね‥‥)


 俺はそんなことを考えながら「それじゃあ行こうか!」と言って歩き始めた永瀬の後に続いた。




「ん〜面白かったね!でも、ヒロインの正体の明かし方が唐突過ぎて、ちょっと置いてけぼりになる映画だったかも」


 俺達が最初に向かったのは映画館だった。最近話題になっている学園恋愛物の映画で、永瀬がずっと見たかったのだそうだ。正直、俺は恋愛物はあまり触れたことがないためかなり新鮮であったが中々に面白かった。


「いや、沢山伏線があったよ。だけど、気付かないよう上手く隠して分かりにくくしていたんだ。凄い脚本だよ‥‥」


 そういう唯の言葉に俺も頷きながら同意する。実際、映画を見ている間に何度も感心したものだ。


「ええ、よく考えれば伏線だらけではあったけど、主人公の学校の話が濃すぎて興味がそっちに逸らされてた‥‥全てが明らかになった後で気づいて『そういえば』となるいい構成だったわね‥‥人は選ぶと思うけど、個人的に最近の映画の中ではダントツでいい映画だと思うわ‥‥」

「ほう‥‥春海ちゃんは中々に見る目があるね。私もそう思っていたんだ」

「ふふ‥‥そう言われると少し照れますね」


 俺と唯がそう話していると、永瀬がスマホを見ながら口を開いた。


「ん〜この後どうする?」


 永瀬がそう言って俺のほう向いた。


「もう13時近いし、お昼にでもしない?」


 俺がスマホで時間を確認してから永瀬にそう答えると、永瀬は唯の方に顔を向けて確認を取った。


「唯姉もそれでいい?」

「ああ、私も映画を見ている最中お腹がなるんじゃないかとヒヤヒヤしていたくらいだ。この時間なら多少は空き始めていいかもしれないね」

「それじゃあ、どこに行こうか?春海ちゃんは希望とかある?」

「私はどこでも大丈夫!」

「そっか〜なら唯姉は?」

「そうだね‥‥実は少し気になっていたお店があるんだが‥‥」




「オシャレなお店だね!テラス席まであるよ!」

「ああ、実は最近できたばかりらしくてね。機会があれば来てみたかったんだ」


 あの後、映画館から少し離れた場所にあるレストランへとやって来た。そこはかなりオシャレな雰囲気の店で、テラス席まで用意されている。こんなお店なら話題になってもいいくらいだが、不思議な事に俺は一度も聞いたことがない。


「こんなお店あるとは知らなかった‥‥」


 俺が店を眺めながらそう言うと、唯は微笑ましそうに口を開いた。


「ふふふ‥‥それはそうだろうね。この店は元々テラス席の無い普通のレストランだったんだ。しかし、どうやらオーナーが変わったらしく、先週からテラス席を始めたらしいんだ」


 唯の説明で俺も納得した。恐らくだが、これから先話題になればもっとお客は増える事になるだろう。ならば、まだあまり話題になっていないうちに来れたのはある意味幸運と言える。


「二人とも〜席空いてるって〜」


 俺達がそんなやり取りをしているうちに、どうやら永瀬が店員に席の確認をしてくれていたようだ。


「仕事が早いね〜流石は芽実だ」

「そうですね。私達も早く行きましょうか」

 

 俺と唯は永瀬に続いて、偶然空いていたテラス席へと向かった。



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