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薔薇の死神  作者: 族猫
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51.状況変化

「いや〜凄かったな〜初めて本物見たけど、オーラがあったな」


 空港で逢田恋歌見た後、帰りの電車内で幸樹がそう口を開いた。


「だよな!あ〜何回見ても圧倒されるよ!」

「うん!流石はアイドルって感じだったよよね!」


 永瀬がそう言って俺の方を向いた。だが考え事をしていた俺は、そんな永瀬に「そうだな」とだけ返した。


「そういえば、春海ちゃんもライブ見に来るのかな?」

「ああ、そう‥‥‥‥え?春海?」


 永瀬の言葉に、俺は何も考えずに返事をしそうになり途中で我に返った。なんせ突然春海の話題を出されればそんな反応にもなる。


「そうそう!もし来るなら一緒に見れるなぁって思って!」

「ん?春海ってのは確か秋司の親戚だったよな?」


 まずい‥‥俺と永瀬の会話に幸樹も食いついてきた。これは他の人に広まる前に何とかしなければ‥‥


「実はうちの店もライブ会場で店を出すことになってな。多分春海はそっちの方が忙しくなると思うから、一緒には見れないと思うぞ」

「あ‥‥そっか‥‥ちょっと残念だけど、しょうがないよね‥‥」


 俺は永瀬に心の中で謝罪をしながら、当日の事を考えるのだった。



「意味不明。矛盾という言葉を辞書で調べるべき」

「仕方がない。状況が変わったんだ」

「前は殺せと言ったくせに、今度は守れというの?」


 今、僕は非常に不愉快な気分になっている。


「それは構わない。でも流石に勝手すぎる」

「組織とはそういうものだと前にも言ったはずだ」


 なぜ僕がここまで苛ついているのかと言うと、今までローズを排除しようとしていた政府が突如ローズを守れと言ってきたからだった。確かに大手を振ってローズを守れるのはいい事だ。だが、自分達の都合で人の生き死にを決めると言うのが気に食わない。まるで神にでもなったつもりなのかと言いたくなる。


「まあ、一応理由を教えてあげよう。今回君達は協力して秋田の脅威を消した。そう、あのスカーレット・ローズとだ。世界中の国や組織がどれほど協力を願い出てもすべて無視していた彼女が、君達とは協力した」

「それが?」

「あのスカーレット・ローズの強さは世界が欲しがっている。だからこそ多くの国や組織が彼女を狙っているのは君も知っているだろう?だから我々としても、他の組織に彼女が奪われるくらいなら排除したほうがいいと考えていた。しかし彼女は我等とは手を組もうとはしないが、君達とは何故か手を組む。手を組める余地があるならそれをうまく利用しようというのが政府の新たな決定だ」

「そう‥‥」

「あともう一つ‥‥‥スカーレット・ローズの『素』を見つけてくれ。彼女の素が分かれば、色々とやりやすいからな。探しやすいように手は回しておく」

「そんな事もしないといけないの?」

「今まで好き勝手に動いていた事を無かった事にするんだから、この国の為に貢献してくれたまえ」


 防衛大臣の佐賀巳はそこまで言うと部屋を後にした。そして一人部屋に残された僕は、今の不愉快さをかき消すように部屋の壁を思い切っきり殴りつけた。


「痛い‥‥‥」


 痛む右手を左手で覆ってそう呟く。


「ある意味面倒なことになった‥‥どうしよう‥‥」


 確かに好き勝手に動いたにも関わらず、特に何も言われなかったのは少し意外ではあった。それにローズを合法的に守る事ができるのは確かにありがたい。だが、これは厄介なことになった。今後もローズとともに戦うとしてその間になにも『素』の調査が全く進まないとなれば不自然だろうし、だからといってローズを裏切りたくは無い。だが、このままではまたローズと戦う事になるのは間違いない。


(春海とはもう戦いたくない‥‥)


 僕は一人になった部屋で、ただ悶々とする事しかできなかった。



「ついに今週末に逢田恋歌のライブがあるぞ!」


 オタクが教室でそう叫ぶと、他のクラスメイトも興奮気味に声を上げた。


「おおお!週末が楽しみだな!」

「ほんとに楽しみ!私ライブを生で見るの初めてなんだ!」

「私も!」


 みんなの声を聞きながら、「ああ、今週末か‥‥」とぼやきながら俺はあるものを見ていた。


「ねえ復音君!楽しみだね!」

「ああ、前のライブも凄かったしな」


 俺に声をかけてくる永瀬に俺はそう答えながら変わらずある物を見ている。


「なあ、秋司!お前の家も店出すんだろ?だったらお前ん家の店で何か食いながらライブ見るってのもいいかもな!」

「おお、それでもいいと思うぞ?親父も歓迎するだろうしな」


 幸樹に対してそう言いながら、なおもある物を見続けている。そして、とうとう我慢が出来なくなった俺は口を開く。


「なあ、幸樹の席の後ろに何故か用意されている空席があるんだが、なんか知ってるやついるか?」

「ん?俺の後ろ?ここは窓際の後ろの席だぞ?後ろに席なんてあるわけ‥‥」

「「「「なんじゃこりゃぁぁぁ!?!?!?」」」」


 幸樹が振り向くと同時にクラスの目線は後ろに置かれている謎の空席に注がれ、そして全員が同時にそう叫んだ。いや、何でこんなに人がいて誰も気づかないんだ?


「そ、そういえば‥‥席が全体的に前に移動している気がする‥‥」

「た、確かに‥‥なんで気づかなかったんだろ‥‥」


 クラスのみんなが口々にそう言い、その席を囲み始める。すると教室の入り口から担任の声が聞こえ、全員は自分の席へと戻って行った。


「あ〜‥‥みんな今週末に逢田恋歌のライブがあるって事で浮かれていると思うが、その前に伝えないといけない事がある」


 担任の言葉に、クラス中が息を呑んで次の言葉を待つ。


「俺も昨日の夜突然伝えられた事で混乱しているんだが‥‥このクラスに編入生がやってくる」


 その言葉で、クラスは一瞬の静寂に包まれる。そして‥‥


「「「「えええぇぇぇぇ!?!?」」」」


 クラスは大混乱となった。そして担任は入り口の方を向いて「入ってくれ」と声をかける。するとゆっくりと教室の扉が開かれ、その人物が姿を見せた。


 

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