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薔薇の死神  作者: 族猫
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43.出撃

「分かっていたことではあるけど、凄い人ね‥‥」

「そりゃあ、こんな大戦艦が現れたら集まってくるわよ」


 俺とグレイシアはタイタニスの船首から陸の方を見ていた。タグボートに導かれながらゆっくりとに港へ入っていくと、その光景に驚いた人々が港の方へと集まってくる。何とか警察の人達が、集まった人達を海の近くから離そうとしているようだが、中々難しいようだ。


『ローズ、これから接岸作業に入るからよろしく』

「了解、こっちの方は私達でちゃんとやっておくわ。グレイシア、船尾の方に行って陸にロープ投げてくれる?」

「ええ、分かったわ」


 タイタニスは徐々に横を向き始め、ゆっくりと陸に近づいていく。よく見ると、陸で待機している作業員の人達も驚いた表情をしているのが見える。そして接岸が完了すると、俺とグレイシアが陸に向かってロープを投げる。するとそれを受け取った作業員の人達は手際よく近くのビットにロープを結び船を固定していく。


「完璧な接岸だった」


 俺が作業していると、いつの間にか後ろに立っていたタイタンが得意げな顔でそう言った。


「流石の腕前ね」

「もっと褒めてもいい」


 俺が褒めると、タイタンは嬉しそうに胸を張る。すると船尾の方での作業が終わったらしいグレイシアが、俺達の方に歩いてきた。


「ふう、こっちも終わったわ‥‥それにしても、思った以上に警察の対応が早かったわね。もう規制線を張ってるわ」


 辺りを見回してグレイシアはそう言い、俺とタイタンも辺りを見回してみた。するとグレイシアの言った通り、周囲には大勢の警察が立っていた。


「恐らくだけど、知事が事前に話を通していたんだろうね。そうでないとこれだけ早くは動けないさ」


 突然聞こえたゼルの声に振り向くと、そこには田澤さんとゼルがいつの間にか立っていた。


「警察の方はそうかもしれんが、あれに関してはどこから情報を得たもんだか早いもんだよ」


 そう言って田澤さんの指差した方向には、テレビ局スタッフらしき人々が見えた。そしてそれに加え、空にも報道ヘリの姿が見える。


「事件や事故の速報の時も思うけど、本当に早いわよね」

「それはそうさ。他社に負けるわけにないかないだろうから必死なんだ」


 まあ、当然の事ではある。美味しいネタを他の報道よりも早く、そして詳しく報道したいと考えるのは普通の事だ。


「魔法少女の皆さん!一言コメントお願いします!」

「こちらにもお願いします!」

「押さないでください!ここから先は危険の為、立入禁止となっております!!」

 

 港の入口付近では、俺達を見つけて話を聞こうとする報道陣とそれを止めようとする警察が揉み合いになっているようだ。


「おう、こっちだ!」


 俺達が船を降りると、織田さんが俺達の元へと歩いてきた。


「この騒ぎだ。急いでここを離れたほうがいい。あっちの方にお嬢さん達が乗ってきた車を停めてある」


 そう言う織田さんに連れられて、港の端の方に向かう。するとそこには俺達が乗ってきたレンタカーが泊まっていた。


「あと、県の人からこれを預かってる」


 織田さんがそう言って手渡したのは一枚の紙で、そこにはとある宿泊施設の名前と住所が書かれていた。


「県が手を回して泊まれるようにしてくれたらしい。他に宿泊する人はいないそうだから変に騒ぎになることはないだろう」


 ゼルはその紙を受け取って、内容を確認する。


「なるほど‥‥それはありがたいですね。まさかここまでして頂けるとは」

「ああ‥‥それだけ今回の件を重く見てるって事なんだろうな」


 確かにそうかもしれないが、ここまで万全な協力体制を築くのはそうとう大変だったはずだ。それなのにここまでしてくれるのは本当にありがたい話だ。


「んじゃあ、今日はその宿でゆっくり休んでくれ。そして明日はよろしく頼む」

「ええ、そうさせて頂きます。では、明日また」


 そして俺達は、織田さんや田澤さんと別れてその宿へと向かった。



『現在ご覧頂いている映像は、上空から秋田港を見た映像になります。ご覧の通り、秋田港には巨大な戦艦が停泊しております。また、秋田港の周囲は警察により規制線を張られており一般人は立ち入り出来無い状態です』


 その日の夕方にテレビを付けると、やはり今回の件がニュースになっていた。他のチャンネルも見てみるが、どの局も同じく今回の件のニュースばかりだ。


『県からの発表は今の所ありませんが、この戦艦には魔法少女が乗っていた事も確認されている為おそらく現在秋田で発生している異変を対処する予定なのではないかと思われます』


 その後、付近住民のインタビューやコメンテーターによる推測や解説などがありニュースが終わる。


「テレビもそうだけど、ネットニュースやSNSでもこの話題でもちきりね」


 凍華がそう言ってスマホを見せてきた。確かにどのネット記事やトリッターを始めとするSNSでもこの話題で占領されており、うっすらと俺達が写っている写真も投稿されていた。


「明日、無事に出航出来ればいいけど‥‥」


 その記事などを見た響がそう言うと、凍華も難しい表情を浮かべる。


「難しいでしょうね。恐らく港のあらゆる入り口に張り込んで、私達を狙うでしょうから、大騒ぎになるのは間違いないわね」


 問題はそれだけではない。厄介なのは報道陣のヘリだ。もしヘリが俺達を追って戦闘地点まで来てしまえばそれこそ問題と言える。確かに以前の港湾都市での戦いでも、戦闘中に報道陣のヘリが飛んでいた。しかし今回は空を飛ぶ事ができる龍が相手なのだ。ヘリは安全ではない。


「報道のヘリも何とかしないとね。下手すると付いてきかねないわよ?」


 俺がそう言うと、二人はその光景が容易に想像できたのだろう。渋い表情を浮かべていた。


「まあ、その事はゼルさんに相談してみるしかなさそうね」


 そうして、俺達は同時にため息を吐いた。



「さて‥‥準備はいいかい?」


 ゼルの一言に俺達三人は一斉に頷く。


「一応確認だけしておこう。港を出る直前でローズとグレイシアが同時に魔法を使い、霧を広範囲に作って報道ヘリを撒く。そして目標地点に着いたら私に連絡をくれ。それを合図に各神社に連絡して、祈祷を始める。しかし、祈祷を始めてから効果が出るまでは多少時間がかかる可能性があるから覚悟はしておくように」

「「「了解!」」」


 俺達は警察の誘導で船へとたどり着いた。そしてゼルから、今回の作戦のおおまかな説明を受ける。


「そして帰りに魔力切れで航行不能になったときに備えて、俺達漁師連中が待機している。いざという時は俺達の船で戦艦を引っ張る。まあ、引っ張れれば良いけどな‥‥」


 そう言って戦艦を見ながら頭をかく田澤さんに、港の関係者が口を開く。


「まあ、その時は港のタグボートやら何やら使える物は全部使いますよ」

「だ、そうだよ?だから帰りのことは気にせず思いっきり戦いたまえ」


 その言葉に、俺達は大きく頷いて船の方へと歩き出す。そして三人の乗船が完了すると、タイタンが船の錨を上げてゆっくりと岸から離した。


「それじゃあ、出撃する。二人共用意を」

神水玉(しんすいぎょく)!!』

焼滅の薔薇(バーニング・ローズ)!!』


 タイタンの合図と共にグレイシアが作った巨大な水の玉を俺が炎で蒸発させて、周囲に濃い霧を生み出した。



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