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薔薇の死神  作者: 族猫
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42.戦艦タイタニス

「お、来たな!」

「お待たせしました。いやぁ‥‥それにしてもすごい量ですね」


 凍華の案内でやってきた場所は、大量の鉄の山が広範囲に渡って置かれていた。


「まあな、親父さんや他の仲間達が知り合いに片っ端から連絡しまくって何とか集めたんだ。合わせて10万7000トンだ。こんだけあれば、何とかなるだろ?」

「おお‥‥!これだけあれば、砲弾の分も用意できる」


 10万トンもの鉄を良く集められたものだ。これほどの鉄ならタイタニスを作っても余裕がある。


「それで?知事との話はどうだった?」

「それなんですが、実は秋田港を今日中に使用出来るよう手を回してくれるそうです。」

「まじかよ!よく許可が出たもんだな!詳しくは親父さんの方に連絡が行ってるだろうし、来てから聞けばいいか。いまならこの周辺に人はいないから初めていいぞ」


 俺達は田澤さんにそう言われ、変身して早速船造りに取り掛かった。


「それじゃあ、グレイシアが氷でドックを作って。そしてローズは作っている間に倒れたりしないように蔓で固定して」

「「了解!」」


 タイタンの指示のもと、グレイシアが氷で船を作るためのドックを作る。そしてその中でタイタンが鉄で船を作り、その進捗にあわせて俺が蔓で固定する。


「すげぇな‥‥」

 

 この鉄が宙を舞って船の形になっていくこの光景を見て、田澤さんは声を漏らす。俺も初めて見たときはそう思ったものだ。心の中でそんな事を考えながら、俺は作業を続けた。



 あれから作業を続けて、約2時間ほどがたった。船の大部分は完成し、後は細かい作業だけだった。


「形は出来た。後は砲を乗せるだけ」


 タイタンは少しずつ装備を取り付けていく。


「おおお!?なんじゃこりゃぁぁ!?!?」


 その声に振り向くと、いつの間にか到着していた織田さんがこちらを見て驚いた顔をしている。


「親父さん、ようやく来てげだっすか」

「んなごどより、これば一体なんだ!?」

「これさ乗って龍ば退治にしに行くったすよ」

「は、はぁぁ‥‥」


 織田さんは呆けたような表情で戦艦を見ていたが、やがてハッとして口を開いた。


「そ、そうだ!さっき秋田港から電話があってよ。受け入れの用意をしてるからいつでも来てくれってよ。んで、来るときは連絡くれとの事だ。ほれ、豊に連絡先教えておくぞ」

「うっす。んじゃあ親父さんは先に秋田さ行っててけれっす」

「おう、んじゃあな」


 そう言って織田さんは、車に乗って走り去って行った。


「よし、完成した。グレイシア、進水するから少しずつ氷を溶かして」


 タイタンがそう支持すると、グレイシアは氷を溶かしていき、スロープの様に海面を凍らせた。すると戦艦はゆっくりとそのスロープを下り始め、船尾の方から海に浮かんでいく。


「ふう‥‥疲れた‥‥もう寝たい」


 戦艦が完全に海に浮くと、タイタンはその場に座り込んだ。まあ、これだけの鉄を操ったんだ。疲れるのも無理はない。だが、タイタンにはまだ仕事が残っている。


「タイタンお疲れ様。だけど、これからこの戦艦を秋田港まで運ばなきゃいけないんだからもう少し頑張って」

「了解‥‥」


 俺はタイタンを立ち上がらせて、戦艦に乗るためグレイシアが作った氷の道を歩かせる。


「それじゃあ、田澤さん。行きましょうか」

「おう、それじゃあこれから行く事を連絡しないとな」


 そう言って田澤さんは電話をかけ始めた。そして電話を終えて、俺達と一緒に戦艦に乗り込んだ。


「すげぇ‥‥こんなでかい船始めて乗ったぜ‥‥まさか、戦艦に乗る日が来るとはな‥‥」

「ええ‥‥私もよ‥‥すごい眺めだわ」


 タイタニスの艦橋のブリッジから外を眺めて、田澤さんとグレイシアは楽しそうに言った。俺も初めて乗ったときは同じような反応したため、二人の気持ちはよくわかる。


「それじゃあ発進する」


 タイタンは部屋の中央に設置された椅子に座りそう言った。


「あれ?舵とかスロットルとかは無いのか?」

「この船は僕の意思で自在に動く。まあ、舵とかあった方がカッコイイと思うけど」


 タイタンがそう言うと、船がゆっくりと動き始める。そして徐々に速度を上げていき、秋田港の方向へとゆっくりと舵を切っていく。


「おお‥‥本当に動いた‥‥なあ、時速最大いくら出るんだ?」

「最大29ノット、無理をすれば33ノットは出る」

「このデカさでそんなに出るのか!?凄いな‥‥」


 確かに田澤さんの言うとおり、これだけの戦艦がそれ程の速度を出すのは凄い事だ。


「ねぇ、タイタン。この艦の装備は?」

「40cm三連装砲四基、15.5cm三連装砲四基、12.7cm高角砲六基、25mm三連装機銃10機、13mm機銃四基」

「中々の重武装ねぇ‥‥でも、46cmにしなかったんだ?」

「必要なら戦いながら調整する」


 まあ、タイタンがそう判断したのならそれでいいだろう。


「そう言えば、風がもろに当たっているのに全然寒さを感じないな」


 タイタンが操れるのは、鉄のみであるため窓にはガラスが入っていない。なのでブリッチ内は常に風が吹き込んでいるのだ。


「それは、ローズのおかげよ」

「へぇ‥‥そうなのか?」

「ローズが周囲を温めてくれているの。だからここが北極や南極のような極寒の場所でも、ローズの周囲は丁度いい温度に保たれているのよ。因みに私はその逆の事ができるわ」

「なるほど‥‥本当に便利なもんだなぁ‥‥」


 そう言って感心している田澤さんに、先程まで甲板にいたはずのゼルが部屋の入り口から声をかけた。


「ところで、田澤さん。祈祷の方の準備はどの様になっていますか?」

「ああ、そっちに関しては既に準備している。男鹿の八龍神社、潟上市の八郎神社、能代市の七座神社、仙北市の御座石神社、青森県十和田市の十和田神社で宮司達が祭壇を作っている。そして、作戦開始と同時に一斉に祈祷を行う手筈になってる」

「おお‥‥それほどの協力を得られるとは‥‥」

「ああ、皆快く引き受けてくれた。本当にありがたい話だよ」


 確かに、これほど多くの人達の協力が得られた事は本当にありがたい話だ。だからこそ、俺達は絶対に失敗はできない。


「お、秋田港が見えてきたな」


 田澤さんが双眼鏡を覗いてそう言った。その声に俺達も目を凝らして見てると、俺達が前に登ったタワーが見えた。


「んじゃあ連絡するか」 


田澤さんは電話をかけ始める。そして数回会話をした後、電話をスピーカーにしてタイタンに渡した。


『こちらは、秋田港湾事務所です。カルド・タイタン殿でしょうか?』

「こちらカルド・タイタン。あと10分程でそちらに到着する」

『了解、港湾入り口にタグボートを待機させていますので、指示に従って入港してください』

「了解」


 そう言って、タイタンは通話を切った。


「ローズ、グレイシア、タグボートとロープで繋ぐから手伝って」

「「了解」」


 タイタンの指示を受けて、俺とグレイシアは急いで船首の方へと向かった。

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