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薔薇の死神  作者: 族猫
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17.連絡

「ホントに好きなもの買っていいの?」

「ああ、お金の事は気にしなくていいから、君が買いたい物を買うといい」


 俺はゼルに連れられ、春海用のスマホを買う為に携帯ショップにやって来ていた。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」


 俺達が店に入ると、店員の男性がまるで待ち構えていたかのように声をかけてきた。


「今日は娘の携帯を買おうと思いまして」

「なるほど、それではこちらへどうぞ」


 そう言って俺達をカウンターに招き様々な手続きを始める。そして約一時間ほどで全ての手続きが完了し、俺達は店をあとにした。


「どうだい?新しいスマホは」

「これずっと狙ってたんだけど、さすが最新機種。少し触っただけだけどかなり使いやすい!」

「それはよかった。あとで永瀬ちゃんに連絡してあげるんだよ?」

「う、うん……分かってる」


 ニヤニヤとした表情でそう言うゼルに対して俺は恐らくひきつった表情をしているに違いない。



 その日の夜、俺は自室で永瀬のRAINを登録する前になんと連絡するか考えていた。


「まさか連絡するのがこんなに難しい事とは思わなかったわ……」


 これが秋司としてなら特に考える事もなく簡単に送れるのだが、春海として送るとなるとどう送ればいいのかわからない。


「ま、まあ……とりあえず登録したことだけ報告すればいいか……ん?」


 そんな時、突如窓に何か当たるような音が聞こえたため俺はカーテンを開けてみた。するとそこには窓をつつく一羽のカラスがいた。


「そんなにつつかないでよ。穴が空いたらどうするの?」

「まあ、気にすんなよ坊主。いや、今は嬢ちゃんか」


 俺がそう言いながら窓を開けると、そのカラスはそう言った。このカラスの名前はザシエルと言い、ゼルと同じ存在らしく俺の正体を知っている数少ない存在だ。普段は世界中を飛び回り魔法少女どうしの連絡係などをしている。


「ふぅ……今回もだいぶ飛んだが、お前さんを見てると目の保養になるな。どうだ?今日は中々いい夜だぜ?俺と散歩でもしないか?」


 ザシエルがそう言って黒い翼を俺に差し出してくる。するといつの間にかやって来ていたゼルが口を挟んだ。


「ザシエル、私の娘を誑かすのは止めてくれないか?」

「ようブナゼル、相変わらずの親馬鹿っぷりだな。どうだ?こいつを俺の嫁にくれるってのは、不自由はさせねぇぜ?」

「悪いが、家は婿もらいと決めているんでね、その気が無いなら諦めてもらおうか」

「はぁ……二人とも、さっさと本題に入りたいんだけど。で?ザシエルは今日は何の用できたの?」


 二人の会話を呆れて見ていた俺は、ザシエルにここに来た理由を尋ねた。


「おう、そうだった。今日は豪華だぜ?なんせほうれん草のサラダだからな」

「確かに豪華だねぇ……それで、一体何があった?」

「まず一つ目に、前にお前達に頼まれたこの国の各地で起きている異変についての報告だ。最近、各都道府県に魔界の扉が出現したことで魔物の被害が増えている。出現する場所は川、山、海、街と一貫性がない。だが、一つ共通点としてその扉が開く少し前に空に巨大な鳥に似た飛行物体が目撃されている。恐らくその謎の存在が今回の異変の元凶だろう。まあ、今は風の嬢ちゃんが必死に追いかけてるみたいだがな」

「それで?」

「そして二つ目、タイタンの件に関する政府の動きについての連絡だ。タイタンは嬢ちゃんとの戦闘でかなり消耗している。その為欧州には帰還させず休養を取らせるらしい。まあ、変に無理させて潰れちまったらそれこそ大損害だからな」


 ザシエルはそこで一旦話を止め、俺達の顔を交互に見てから再び口を開いた。


「そして三つ目、これは俺からの相談だ。実は最近この国の近海が妙に気になる。当然俺も調べてみるが、お前達も気にしてくれると助かる」


 ザシエルの言葉に、俺とゼルは顔を見合わせた。というのもザシエルは基本的に確定の情報しかもって

こない。しかし、三つ目の話は珍しく曖昧である。だからこそザシエルは連絡や報告ではなく、あえて相談という言い方をしたのかもしれない。


「分かった。君がそう言うという事は、恐らく何かしらあるんだろう。私達も注意しておくとしよう」

「ああ、俺も何か分かればまた来る。またな嬢ちゃん」


 ザシエルはそこまで言うと、窓から空へと飛び去っていった。


「どこかの海じゃなくて、この国の近海って事はかなり大規模な魔物の群れかそれだけ強大な魔物でも潜んでるって事かしら?」

「そうなるねぇ……だが、今の現状では調べようがないからとりあえずは情報待ちになるだろう」


 ゼルはそう言って窓を閉めた。



『スマホが戻ってきたので登録しました。遅くなってごめんなさい』


 私はRAINの画面に映し出されたその文字を見て歓喜しそうになった。正直かなり強引に言った気がするため無視されても不思議ではないと思っていたくらいだったので、そう連絡をしてくれた事がとても嬉しかった。


(春海ちゃんか〜可愛い子だったな……あれ?そういえば、春海ちゃんは福音君の親戚って言ってたよね?って事はあのときクラスで写真見せたときになんで無反応だったんだろう?知り合い、しかも同じ家にいる人なら多少なりとも反応すると思うけど……)

「ま、あとで聞いてみればいっか……それにしても、もし私と春海ちゃんが知り合いって知ったら福音君は驚くだろうな〜なんか楽しみになってきた!」


 私は福音君の驚いた表情を想像しながらベッドに入った。



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