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薔薇の死神  作者: 族猫
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11.密談

 東京にある防衛省の建物で新種の魔物が出現した事について会議が行われる為、数人の魔法少女に招集命令がくだされた。しかし招集された魔法少女はまだ集まっておらず建物の一室には三人の魔法少女だけがいた。


「こうして私達が集まるのも久しぶりね」


 そう口を開いたのは、薄い青色の髪に白い着物のような衣装を身に纏った魔法少女『クール・グレイシア』であった。


「当たり前でしょ。招集されるのは、何かしら問題があった時だけだもの。そう頻繁に問題が起きても困るわ」


 グレイシアの言葉にフェアリーはそう呆れたように返す。すると、コーヒーカップを片手に壁にもたれかかっていたリリーが笑いながら口を開いた。


「フハハハ‥‥そうは言うものの、其方の中では常に問題しかないのではないか?」

「ええ、それは否定できないわ‥‥『紅いアレ』とか『白いソレ』とか『黒いコレ』とかね」

「む?『黒いコレ』とは我の事か?」

「はぁ‥‥あなた、ローズに手を貸したそうじゃない。別に放置しろとまでは言わないけれど、あまり『あれ』と深く関わらない事をおすすめするわ」


 フェアリーはそう言ってリリーをジッと見つめ、その視線にリリーはどう返そうか悩んでいたが、突如グレイシアが口を挟んだ。


「あら、ローズと仲良くするのはいけないの?私なんて会えばいつも声をかけるわよ?」

「あたりまえじゃない……だってアレは私たちの……」

「敵?でもあの子が特に何かしている訳でもないわ。確かに私達に好意的ではないけれど、人々の為に魔物と戦っているのは事実。なら変にいがみ合うより、友好的な関係を築いて協力できるところはした方が合理的よ」

「それはそうだけど……」

「まあ、あなたの言いたいことは分からないでも無いけれどね」


 グレイシアはそこまで言うと、紅茶の入ったカップに口を付てから再び口を開く。


「それよりも気になるのはタイタンね。今回わざわざ欧州から呼び戻したのは何か理由があるはずよ。あまり考えたくないけれど、ローズにに接触させるつもりかしら」


 グレイシアの言葉を聞いたリリーは疑問を口にする。


「『カルド・タイタン』……話には聞いたことがあるが、なぜその帰国にローズが関係するのだ?」


 その問いに、グレイシアはゆっくりと口を開いた。


「ローズを消すためよ」

「消すだと!?なぜ消す必要がある!?」

「今朝、ここの職員が話しているのが聞こえたの。なんでも、先日リリーが戦った魔物は火力、装甲含む様々な部分が今まで出現したものより遥かに強力な魔物だった。そしてその魔物の攻撃をリリーが到着するまでの間ローズは全ての攻撃を防ぎ、あの魔物の装甲を一撃で切り捨ててもいる。それを見て政府は改めてローズの強さを再認識したらしいの」

「だからといって消す必要まであるのか?」

「ローズは今まで私達の作戦中に乱入しては勝手に行動してこちらの作戦を滅茶苦茶にしている。いまは大きな損害がないけれど、今後ローズの行動で損害が出ることを政府は恐れているの。だからこそ、欧州の戦線が落ち着いている間にタイタンを呼び戻してローズを倒させようとしているのかもしれないわ」


 その言葉に、今まで静かに聞いていたフェアリーがどこか不愉快そうな表情で呟いた。


「なんとも今更の話ね……何度もローズの危険性を言ってきたっていうのに、それを無視して散々利用したあげく対処に困ったら即処分だなんてね……まあいいわ……それより二人が戦うとして、そのあとの処理が大変ね」

「ええ、あの二人はどちらも魔法少女の中で最強クラスの実力者。その二人が戦いにでもなれば、被害は計り知れないわ」

「戦う事は確実なのか?」


 リリーのその問いに、グレイシアは険しい表情を浮かべる。


「戦う……というよりは戦わされると言った方が正しいでしょうね。はっきり言ってタイタンはそれを拒否するでしょうけど……でもそれは許されない。それはあなたもよく知っている事よ」

「それは……」


 グレイシアのその言葉にリリーは何も言うことは出来なかった。上からの命令には逆らえないのは当然。それが組織という物だ。


「そんなに心配ならローズにでも警告してあげれば?まあ、アレのことだからタイタンが戻ってきた時点でもう気づいて色々と準備しているでしょうけど」


 突如フェアリーがそんなことを言い始める。これにはリリーどころかグレイシアでさえ驚いてしまう。


「あなたにしては珍しいことを言うわね……うまくいけばあなたが嫌っているローズを倒せるというのに……」

「別に情がわいたとかそんなじゃないわ。ただ、今アレに死なれると色々と問題が出てくるから困るだけよ」

「あらそう?まあいいわ……それじゃあ、ローズの事はリリーに任せるわ。私はあとでタイタンに直接会ってみる」


 グレイシアはどこかうれしそうな表情でそう言った。それに対してリリーもうれしそうに頷く。するとフェアリーはどこか呆れたように口を開く。


「やるなら好きにすればいいけど、他の連中には気づかれないようにする事ね。今は私が空気をいじって音を遮断してるからいいけど、普通こんな場所で話すような事ではないもの。いい?これが上の連中に知られれば面倒なことになるって事を忘れるんじゃ無いわよ?」

「ええ、分かっているわ」


 そこまで話していると、この部屋に近づいてくる気配に気づいた三人はその口を閉ざした。



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