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3.神酒にゃ

 日が変わり、私、13歳になりました。

 冒険者パーティをクビになって売られた現在、捕虜というか奴隷という扱いです。

 誕生日の朝から涙で枕を濡らすなんて思いもよらなかったよ。

 村の中ならある程度の自由は認められはしたけど、村から出れば


 猫に囲まれているという点は幸せなんだけど、素直に喜べないのはあのパーティのせい。

 ムカムカして落ち着かないし、夢見も悪い。

 復讐したいけど、その力がないのは明らか。

 せめて魔法が使えたらなぁなんて、できもしない妄想を繰り返していた。


 ***


 それから5日後、村は静まり返っていた。

 周りを見渡しても私を監視する人どころか誰も居ない。

 手錠も無ければ、格子を閉められてもいない。

 こっそり村を抜け出せば、逃げる事は出来る。

 問題はその後。

 ラットランド兵に見つかったら、私、死んじゃうよね。

 結局、逃げるなんて選択肢はないんです。


 村を散策する事も考えた。

 勝手に動き回って逃げたと騒がれたくもないからそれも諦め、ぼ~と誰かが来るのを待ってた。

 せめてミーちゃんかナーゴが来て話し相手になってくれるだけでもいいんだけどなぁ。


 というか、朝ごはん食べたい。

 ぐ~~っとお腹もなり始めた。

 これは捕虜虐待なんじゃないのかな。

 村で一致団結して御寝坊さんするなんて聞いた事がない。

 不満に思い、壁に八つ当たりをしようとした時、ドーンと爆発音が聞こえる。


 音の方を見ると煙が上がっていた。

 とても気になる。

 仕方ないよね。

 どうせ村の猫たちだって集まってるでしょう。

 だから大丈夫、行っちゃおう!


 音がした方向に走って、たどり着いたのは村の入り口。

 そこにはわんさか猫とネズミが集まってた。

 ラットランド兵って、私と同じくらいの背の高さあるのにケットシーの人達は私の胸くらいまでしかない。

 体格からして近接になれば圧倒的にケットシーが不利。

 魔法をバンバン打てば勝てるかもだけど、そうなったら魔力切れが怖いって感じなんだと思う。

 魔力切れの脱力感は凄まじく、戦闘どころじゃなくなるからね。


「ニヤさんきたにゃ!」

「ニヤさん、魔力回復お願いにゃー!」

「私もお願いにゃー!」

「私も~~~~にゃー」


 次々と集まる魔法師猫たち。

 わたし、めっちゃモテモテ!

 これはこれで、頬が緩んじゃうよね。


「よーし、やるぞー。魔力充填して欲しい人は、私の前に来て背中を向けて!」

「「はいにゃ!!」」


 ずらりと並んだ猫たちに、次々と魔力を注ぎ込んでいく。


「うにゃあああああんん♡」


 可愛らしい声が次々とする中、オス猫はどうなってるのか想像もしなかった。

 後になって、凄く苦情が来たけどそれはそれ、知ったこっちゃない。


 ラットランド兵の猛攻は凄まじく、ほぼ全員が魔力を使い切ってたみたい。

 私が来た事で押し返す余力が生まれ、最後には撤退していった。

 私達の勝利が確定するのはすぐの事だった。


「我々の勝だニャ!」

「「にゃあああああああああああ!!」


 そこからはすぐに宴になって、みんなで飲んで食ってのどんちゃん大騒ぎ。

 特に魔法師猫には私の周りを離れようとしないくらいモテにモテてた。


「ニヤさんも飲むニャ」

「飲んだ事ないけど、大丈夫かな」

「だいじょーぶ、だいじょーぶニャ」

「じゃあ、お言葉に甘えて~」


 お酒、飲むの初めてです。

 私の国じゃお酒は13からだったから、飲めなかったのよね。

 まぁ、そんなお金もなかったけど。


 くぴっと一気に飲み干して思った。

 むわーとしてどろーんとした感覚が口の中に広がるのは、大人用なのかあまり美味しくない。

 猫用のお酒のせいかも?


 そう感じた途端に顔が熱くなった。

 それと同時に世界が歪み始めた。

 ぐねりぐねりと猫も酒瓶も曲がってゆく。


「あははは、みんなぐねってるよ!へんなのー!」

「ニヤさん、大丈夫だニャ?揺れてるニャ!」

「あははははは」

「このお酒、出したの誰にゃ!?これ、神酒(みき)だにゃあ!」

「うにゃああああ!?大変にゃあああああ!」


 私は笑いながら意識を手放し、ぷつりと記憶が途絶えた。

 それはもう、いともあっさりと。

 お酒はもうコリゴリです。

 しかも、どうやら飲んではいけないモノを飲んじゃったみたいです。


無理なお酒はのんじゃだめですよね。

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