2.魔力供給にゃ
「気の毒だにゃー」
ケットシーのミーちゃんがすました顔でこちらを見ている。
二足歩行する猫ってやっぱり可愛いなぁなんて思いながら彼女を眺めてた。
ミーちゃんはきっと優しいから言う事聞いてくれるかな?なんて甘い考えで交渉してみる事にした。
「そう思うなら、助けてよぉ、きっといい事あるよ?宝くじに当たるとかぁ、美男の彼氏ができるとかさー」
「胡散臭い勧誘はやめるにゃ」
そう言ってミーちゃんはそっぽを向いた。
残念、私の交渉術は失敗に終わりました。
次の私はきっとうまくやるでしょう。
パーティーメンバーが立ち去る時、見返してやるーって思ったけど、よくよく考えれば出来っこなかった。
まず、ここから出れない。
出れたとしても全員魔法が使えるケットシーと戦えるほど強くない。
そもそも、町にすらたどり着けない可能性が高い。
パーティーメンバーと戦える力がない。
全然っ駄目すぎる。
弱者は枕を濡らすしかないのです。
ため息をついてる所に、槍を持ったケットシーが4人現れた。
格子越しに手を出せと言われ、素直に出すと、手錠をはめられた。
いよいよ、本格的な囚人生活が始まるよ~。
悲しいなぁ。
連れて行かれたのは少し大きな小屋。
そこには9人の子供のケトッシーが寝ていた。
「この子達に、魔力を供給するにゃ」
言われるがまま、うなじを掴み、魔力を流し込む。
「にゃ………にゃ~~~~」
猫でも気持ちいいみたい。
「ねぇ、この手錠外してくれないかな?逃げないからさ」
「どうしてそんな事しなくてはいけないのにゃ?」
「手が自由になったら二人同時に対応できるよ、早く供給した方がいいよね?」
少しの間があったけど、ケットシーはそれを受け入れ、手錠を外してくれた。
んじゃやりますか!って気合を入れて、二人同時に行った。
のこり8人だから、あと4回、次々と供給して行く。
「にゃああああああ~~~ん」
「はい、これでおわり!さ、手錠つけていいよ」
「いいにゃ、逃げないなら付けないにゃ」
「うん、逃げないって約束する」
不愛想な衛兵猫は少し優しい目で、子供たちを見ていた。
「助けてくれてアリガトにゃ、この子達は生まれつき魔力が少なく、よく魔力切れで寝込むにゃ」
「大変だね。限界近くまで供給したから魔法使わなきゃ数年もつと思うよ」
「また頼むにゃ」
それから、その小屋には傷ついた兵士猫が何人も帰ってきた。
回復する治療師猫が忙しそうに治療魔法を使う。
暫くして魔力が足りないからと私が呼び出され、治療師猫に魔力を流し込む。
そんな事を2,3回続けた所で回復した兵士猫に聞いてみた。
「誰と戦ってるの?」
「そんな事も知らないのにゃ?ラットランドの奴らにゃ、アイツら厄介だにゃ」
「あ~、ここに来る途中にも結構いたねぇ」
まぁ私は戦っていないけど。
そんな話が切っ掛けとなって雑談が長く続いた。
そうして、兵士猫さん達とは少しずつ仲良くなったけど、どちらかと言うと話し相手になってもらった感じがした。
特に一番仲良くなれた子の名前はナーゴといい、守備隊長をやってるらしい。
額に傷があり、尻尾が短くなってしまってる、歴戦の猫だそうです。
それでも、私にすれば可愛いんだよね。
そして、私にも我慢の限界がやってきたのです。
もう、ウズウズが止まりません!
「ねぇ、少し撫でさせて?」
「──少しだけだニャ」
頭からお尻に向かって、さわわ~と何度か撫でると、ナーゴは気持ち良さそうにする。
「ニャ、ニャかニャかなテクニックだニャ」
「おなかも触らせてくれるなら、もっと気持ち良くしてあげるよぉ?」
「ニャ!?仕方ないニャ、捕虜は丁重に扱うからニャ」
そう言ってナーゴは上向きになった。
もうこの時点で可愛いんっっ。
まぁ、予告した通り、お腹を撫でてもっと気持ち良くしてあげるんだけどねっ。
さわさわ~、さわさわ~と小一時間以上続けた。
ずっと撫でていたい気持ちを抑え、少し休憩した所でナーゴは我に返った。
「今日はこれくらいで許してやるニャ、明日はもっと過酷な労働が待ってるからニャ、覚悟するニャ!」
そうはいいつつ、しっぽをピーンと立てているのだから嬉しいって事がまる分かり。
私は元居た場所、少し暗く空洞になった木の根元に戻る事にした。
するとそこにはランタンが吊るされ、中にはベッドが用意されていた。
ちょっとだけ私を認めてくれたみたいで、生活環境を改善してくれた。
改善されても、木の根元。
扉は木製の櫛状。
プライベートなんてないのです。