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1.裏切りにゃ

 私の名前はニヤ、明日で13歳になる。

 職業は魔力タンク兼荷物持ち。

 フォーチューンナイトというパーティに加入して明日でまる1年。

 すっかり馴染めた気がする今日この頃です。


 お恥ずかしい話、魔法は全く使えません。

 なのに魔力がやたら多くて回復も速い。

 その魔力を他人に分け与えれるという技能持ってる人を魔力タンクと呼びます。

 そこそこレアな技能で、それが私のお仕事です。


 じゃあ魔法の訓練すればいいじゃん?ってなるんだけど、それにはお金がかかる。

 身よりのない私にとって、それはとても難しい問題なのです。



「猫さんまだかな猫さん。もう半日くらい猫の森を歩いてるのに出会わないね~」


 今回は猫の森にあるというケットシーの村の珍酒、マタタビ酒を入手するという簡単なクエストです。

 ケットシーは人語を話し、二足歩行して魔法まで使える猫ちゃんで人類に友好的種族。

 近くにはラットランドという勢力がいて、そちらは人間とは話が通じません。

 完全に敵です。

 討伐対象です。


「嬉しそうだな、ニヤ。お前、猫好きだもんな。でも勝手に撫でたら駄目だぞ」


 今、話しかけてきた少し大人の雰囲気を出しているのはリーダーのローンさん。

 ちょっとカッコイイんですよ。

 私は一目惚れで、この人だ!って思った時、もうパーティー加入をお願いしちゃってた。

 その日が誕生日で、その当日にこんな良いパーティに入れた私は幸せ者です。

 ちなみに冒険者パーティへの加入が許されるのは12歳の誕生日からです。


 まぁ、でもね。

 歳の差があるから相手にしてくれません。

 妹みたいに思ってくれるのは嬉しいんだけどね~。


「はい、気を付けます!」


 その時、草むらから、がさごそと音がした。


「チュー、チュチュチュー」


 鳴き声と共にラットランド兵が1体現れた。

 敵は私と同じくらいの背で長槍を持っている二足歩行のネズミ。


「私に任せて! ──精霊よ、熱く激しく燃やし尽くし、我の敵を葬らん!『ファイアーアロー』!」


 ボウッという音と共に生成された1本の炎の矢がラットランド兵に突き刺さる!


「チュゥゥゥゥ!」


 断末魔と共に、絶命を確認。


「まだいるかもしれない、警戒しろ!」


 ローンさんの言う通り、もう一人隠れていてメンバーに襲い掛かる。


「グアッ、引っ掻かれた!こいつめ!」


 引っ掻かれながらも短剣でザクッと一突き、声も上げずにラットランド兵が倒れた。


 突然のバタバタでしたが、魔法を使ったのが、リーンさん。

 ちょっと魔力保有量が少ないけど、魔法のエキスパートです。

 魔法使いってだけで尊敬します。それに出るところが出てて大人びた雰囲気の女性です。


 そして引っ掻かれたのがシーフのバルドさん。

 私が加入したその日に口説いてきました。守備範囲の広い女好きです!

 普通にナイでしょ?私はこの人は嫌いです。

 でも、表面上は仲良くしてます。

 パーティですからねっ。


「今、回復します! ──天使の加護よ、傷を癒し復元し賜え『ライトヒール』」


 しゅわわーという音と共に蒸気が発生し傷口が治ってゆく。


 このヒールかけた方が、クレリックのレインさん。

 綺麗で長い髪のお淑やかで建ち振る舞いも美しい女性です。

 同じ女性として憧れちゃいますね。


 ちなみに、服の破れた所までは魔法では直りません。

 それを休憩の時に修繕するのは私の役目です。


「もうちょっと進んだ所で休憩しよう」

「はーい!」


 少し開けた所で休憩となりました。

 焚火の準備、座る所の確保と食事の用意に私は大忙し。

 さらに二人への魔力供給、それが終わればバルドさんの服の修繕です。

 今回の目的地は町から2日の場所なので、ポーション作りがない分、すこし楽です。

 いつもなら余った時間でそれもやってるんですよ。


 キャンプの基本準備を終わらせ、飲み物と料理も完成。

 ようやく魔力供給の時間です。

 ここに来るまで何回か戦ったので、そろそろ必要だとは思ってました。


「じゃあ、ニヤちゃん魔力お願いね」

「私もお願い、ニヤちゃん」

「はーい!じゃあ、いきますよ~~」


 二人同時に対応する。

 背後から二人のうなじに手を当てて魔力を送る。

 感覚的には体内を巡るもわもわとしたモノが魔力で、それを手を介して二人に流し込むだけ。


「んっ……」

「あっ……」


 この魔力注入って結構、気持ちいいそうです。人によっては自慰よりも……(自粛)

 それを男性二人が少し顔を赤らめて女性二人を見ている。

 このパーティ、カップルは居ませんからね。

 溜まってるのかもしれません。


「ありがとう、いつもながら気持ちいい魔力ね」

「助かるわぁ」

「どういたしましてです!」


 季節的には暑い時期なのに、森の中はとても涼しい、というか寒いくらいです。

 バチバチと鳴る焚火が私達を温め、食事を摂りながらローンさんがおもむろに話し始めた。


「そういえば、ニヤって明日でパーティ加入1年になるな、誕生日はもう過ぎてしまったか?」

「明日が誕生日です!覚えててくれたんですね、嬉しいです」

「当たり前だろ、大事なメンバーだからな」

「えへへ~」


 そう言いながら、頭をナデナデしてくれるのがまた嬉しい。

 お兄ちゃんが居れば、こんな感じなのかなぁ、なんて思ってしまう。


 最後は針子の仕事。

 ちくちく、ちくちくと手慣れたもので補修用の布まで持ち歩いています。

 革製だって修繕できますよ。


 *


 休憩が終わり、出発となった。

 火の消し忘れなし!忘れ物なし!そういう確認も私の役目です。


 順調に進んだ今回の冒険も、もうすぐ目的地。

 ケットシーの村への看板が見えたと同時に、またもや草むらからガサゴソという音がする。


「にゃあ」


 やっと出て来たのは真っ白で小さな子猫。

 この子もきっとケットシーなのかな。


「こんにちわ、村まで行きたいのだけど、通って良い?」

「ようこそ。歓迎するにゃー」


 声の感じは女の子。

 私の肩に乗って、道案内をしてくれるそうです。


「次の分岐を左にゃー」


 いう通りに進み、暫くすると開けた所に出た。

 そこは小さな小屋が沢山並んだケットシーの村が広がっていました。


「うわぁ、猫さんがいっぱいいる!」

「猫じゃないにゃ、みんな魔法使えるから言葉には気を付けるにゃ」

「あ、ごめんなさい」


 猫じゃなくて、ケットシーだね。

 脳内で猫って言うのは許して貰おう。


 そうこうしてる間にローンさんが村長さんらしきケットシーとの話し合いが始まった。

 その間、私達はケットシー達からの歓迎を受ける。

 と言っても、ちょっとした菓子とマタタビ茶が出たくらいで、寛いで休むくらいの事しかする事は無い。

 少しぼ~としていると、先ほどの白い子猫が私に話しかけて来た。


「アナタ、名前は何っていうにゃ?」

「ニヤです、ケットシーさんは?」

「私はミー、村長の娘にゃ」

「へー、どうりで一番可愛い訳ね」

「あなたも人族としては可愛い方にゃ」


 ミーちゃんは私の事を見つめた続け、次に溜息をついた。


「あれ?何か気に障った?」

「なんでもないにゃ、ちょっと気の毒におもっただけにゃ」


 気の毒とは何だろうかと、考えている内にローンさんが戻って来た。

 そして、ローンさんは全員に付いて来いと言った。

 私はどこか素敵な場所でもあるのかと期待して付いて行った。


 暗く空洞になった木の根元に案内され、訳も分からず入った。


 カシャーン


「え?」


 それは格子状の扉が閉まった音でした。

 なんで?どうして?私どうなるの?って疑問符がぴょんぴょん頭上で跳ねまわる。

 その状況で近づいて来たのはリーンさんで、何故か暗い笑みを浮かべて教えてくれた。


「お酒と交換でニヤちゃんには生贄になってもらうわ。この猫さんたち魔力タンクが欲しいんですって、よかったわね、パーティの役に立てて。アナタの代わりはマナポーションで十分なのよ」


「は?はあああああああ?なにそれ!ありえないんですけどー!」


 頭に血が上ってきた所に、レインさんが追い打を言ってきた。


「アンタがバルドに尻尾振るのがいけないのよ、ここでくたばって死ねばいいわ、この泥棒猫!」


「私、人間!尻尾ないから!猫でも泥棒でもない、ただの人だよ!ちゃんと人だから!バルドさんなんて眼中にないし!」


 二人共、聞く耳もってくんない!

 そこにいけ好かないバルドさんが一言。


「俺の女になってりゃ、もうちょっと使ってやったのによ、ハハハッ」

「死んでも嫌です!アンタなんてお断りなんだから!!」


 最後にローンさんがしゃがみ込み、目線を合わせて一言。


「お前、死んだ事にしとくからな、ギルドプレート貰ってくぞ」


 首から掛けていた私のギルドプレートをブチッと引きちぎって奪われた。


「1年間ご苦労さん、あ、荷物も貰ってくぞ」

「なんでなのー、私悪い事してないのにー!!」


 そんな私の言葉に耳を傾けず、笑いながら去ってゆく4人。


「ぐやぢい!!絶対見返しちゃる!!おぼえてろよなー!」


非戦闘員で復讐ってどうやるのでしょうね。


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