表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/80

怠惰な王女様

 王女ティゼ様は、髪を梳き終わると立ち上がる。


 身長は155cmほど、たしか年齢は14歳になられたはずだ。

 腰まで伸びた金髪のストレートのロングヘアーに、耳元には緑の宝石のイヤリング。

 白く細い首には黒いチョーカー、細い指には赤い宝石が付けられている。

 関節を決めたら、ぽっきりと折れてしまいそうなほど華奢だ。


 ロングドレスはシルク素材だろうか、豪華な刺繍があしらわれ、所々は金の刺繍がされている。

 一言で言うと、まさにお姫様、歩く宝石箱だ。


 そして、会話をされることなく、優雅なティータイムを始められた。


 金銀の装飾の施された丸いテーブルが置かれ、侍女が椅子とクッションを置く。

 それに飛び乗り腰かけ、紅茶の香りを嗅ぎ、上品に飲まれる。


 この間、僕とセラさんは直立姿勢のまま待機だ。

 でもいいのだろうか、跪くか、または土下座をして帰らせて頂けないだろうかと本気で思う。


 やがてお菓子も平らげられ、ティゼ様は口を開かれた。

 この間、30分は待った。


「もっと凛々しい方が、いらっしゃるかと思ったのに、まさかこんなガキとは」


 子供のような外見の王女に、そのような事を言われるのは心外でございますけど、決して逆らえない。

 その言葉をそっくりそのまま返したら、僕の首が飛ぶだろう。


 ティゼ様は付けていた宝石を全て外し、侍女は髪を結い始める。


「気合を入れたのが馬鹿みたい」


 吐き捨てる様に言い、靴も脱ぎ始める。


「まあいいわ。ステータスを見せなさい」


 命令され、僕はすぐにステータスを開いてしまっていた。

 王族の力だろうか、まるで人を従わせるスキルでも持っているかのように逆らえない。


「近づくことを許す。そこからじゃあ、遠くて見えない」


「はい!」


 近づき見やすいよう、おそばに近寄らせて頂くと、花の香が鼻孔をくすぐった。


 見やすいよう真横に立ち、背を向けようとしたとき気付く。

 いきなり出したものだから、隠ぺいするのを忘れていたのだ。

 慌てて大袈裟に声を上げ。


「うわぁ」


 コケる振りをする。

 すぐにコンシルメントで、時間干渉とステータス上昇率と値を変更した。

 危なかった。

 王族に見せるわけには絶対にいかない。


 ティゼ様は呆れた。


「何をしている?早くしなさい」


 僕は頭を掻いて誤魔化す。


「緊張のあまり足がもつれてしまいました。醜態をお許しください」


 立ち上がりステータスを見せると、ティゼ様は吹きだすように笑う。


「ぷっ、レベル14って。平民は、やはりこれくらいなの?

それに称号が最悪。セラ、こいつが変な気を起こさないように十分注意しなさい」


「はっ」


 称号のスケベなどは、消している時間がなかった。

 セラさんは、対処できるように僕の後ろに立つ。

 そんな心配をせずとも、命をかけてまで不埒な事をするつもりはないのに。


 セラさんも僕のステータスを見始める。


「これでサイクロプスを倒せたとは驚きです」


 ?、どうして僕がサイクロプスを倒したことを知っているのだろう。

 その時、近くに人はいなかったはずだが。


「どうしてそれを知ってるんですか?」


 セラさんは続けた。


「参加者の危険に備え、偵察隊を配置していました。その報告で聞きました」


 なるほど、一応は安全に配慮していたわけだ。

 ティゼ様はセラさんに聞く。


「それって強いの?」


「はい。推定レベルは30で、とても狂暴な性格。正直、レベル14の人が敵う相手ではありません」


 ティゼ様はテーブルに肘を付く。


「実力はあるってことね?」


「はい。一般兵の3人分はあると思います」


 3人分、僕はちょっと嬉しくなった。

 知らず知らずのうちに顔が綻ぶ。

 それを見られたのか、ティゼ様はセラさんの実力を僕に教えるように言う。


「セラは10人分だっけ、そう考えるとまあまあね」


 10人分ですか……。

 ごめんなさい、調子のりました。

 セラさんには、逆らわないようにしようと誓った。


「それにしてもスキルは多いのよね」


 ティゼ様はスキルを確認していた。

 セラさんもいくつかのスキルについて質問して来る。


「このクラッシュダミーというのは?」


「仮想敵を作り出すスキルです。実際にお見せした方が早いと思いますが、よろしいでしょうか?」


 ティゼ様が代わりに許可する。


「さっさと使って見なさい」


 僕はダミーでゴブリンを出してみる。

 2人は驚き、ゴブリンを触っている。


 ティゼ様は「まるで本物見たいね」と。

 セラさんは「感触は泥のようですね」


 本当は人も出せるけど、色々と面倒くさい事になりそうなので止めておこう。

 納得してくれたのか、次のスキルを確認される。


「サモンは?何か従者を出せるのですか?」


 うっ、ここでサキをが出したら大変なので誤魔化す。

 極めて冷静に真面目な顔をした。


「従者はいません。なぜ、このようなスキルがあるのか、僕にも分かりません」


 セラさんは僕の目を真っすぐと見つめる。

 額から汗が流れたが、セラさんは、それ以上は追及せず他のスキルに目をやった。


 そこで痛恨のミスを発見する!

 コンシルメントを隠すのを忘れていたのだ。

 もし、このスキルを知っていたら、隠ぺいした可能性に気付かれてしまう。


 ティゼ様はコンシルメントを指さしてしまった。

 その指を折っても手遅れだ。

 折らないけど。


「こんしるめんと?これは何?」


 セラさんも首をかしげているから知らないのかもしれない。

 安心した。


「こ、これは文字を書くことができるスキルでして」


 僕はそう言って、自分の手に文字を書いて見せる。

 それで納得してくれたのか、ティゼ様は面白くもない顔をした。


「つまんないスキルね」


 どうやら誤魔化せたようだ。


 ステータスのお披露目も終わり、かなりの精神力を消耗した気がする。


 どっと疲れた。


 ここでやっと本題が始まる。

 ティゼ様は侍女に退出よう命じ、深く会釈した後に部屋を後にした。

 結われた髪は、三つ編みにされていた。


 おもむろに小声で話される。


「良い?これから話す内容は全て守秘義務がある。もし喋ったらお分かり?」


 一体どんな秘密なのだろうか、僕は思わず唾を飲んだ。


「ステータス」


 ティゼ様はステータスを開いた。

 レベル32、称号にはもちろん”王女”と書かれている。

 この若さでとんでもないレベルに、素直に驚く。


「すごいレベルです」


 褒めたつもりだったのに、不機嫌になったようで、ステータスの値の部分を指で強く叩く。

 まるでここを見てから言え、とでも言いたげだ。


 値を見ると、レベルに比例しないほど散々な値だった。

 悪くもないけど、32にしては少なすぎる。

 まるで半分のレベル16ほどに感じた。

 スキルもほとんどなく、魔法は全属性はあるけど、全て初級ばかりだ。


 ティゼ様は、セラさんにもステータスを開くように伝えた。


 セラさんは同じレベル32だった。

 だが、値を見て見ると、レベルに合った値で決して少なくない。

 職業は意外にも戦士で、称号に”戦鬼せんき”と怖そうなのが書かれているのは、見なかったことにしよう。


 スキルは一般的な身体強化から肉体強化など、”狂戦士化”は気になるが……。

 魔法は火と闇の初級魔法がいくつかあるだけ、魔法は得意ではないようだ。


 さて、そうなると2人の差は一体?

 僕は聞いていた。


「セラさんは相応の値ですが、ティゼ様は少なすぎませんか?」


 ティゼ様は深くため息をつく。


「はぁー。そうなのよ、レベルは上がりやすいけど、全くスキルや魔法を覚えないの」


 それでスキルが多い僕は、お眼鏡に適ったのだろうか。

 解決できる問題なら良いけれど。

 僕は単刀直入に聞いた。


「スキルが少ない事をお悩みでしょうか?」


 ティゼ様は、明後日の方向を向いて話す。


「それもあるんだけど、話が進まないし良いわ。話しましょう!」


 決意したかのような語尾の強さに、いえ!話さなくて良いです!と言いたくなった。

 聞いてしまったら後戻りできないかもしれない。

 けれど、素直に聞くしか選択肢はなかった。


「セラ、契約の魔法紙を」


 ますます嫌な予感が膨らむ。


 セラさんはテーブルに魔法紙を置く。

 そして僕に羽ペンを持たせた。


 ティゼ様は続ける。


「それにサインしなさい」


 いやだぁ、なんか契約内容には、秘密を暴露したら死を以て償う、と書かれているし。

 セラさんに睨まれる。

 狂戦士化しかねない闘気に、僕はサインをするしかなかった。


 そして、血を一滴垂らすと、魔法紙は青白く光り出した。

 これでもう逃げられない。


「よろしい。じゃあ、話すわね」


 ティゼ様は、こちらを向きなおし小声で話し始める。


「私は、ぶ、ブラジャーを付けることでレベルアップ出来る」


 んー、すごーく、どこかで聞いたことがある話だ。

 って、僕と同じ症状じゃないか!


 おずおずと聞き返す。


「もしかしてブラジャーを盗んだとか?」


 ティゼ様は驚く。

 しかし、そう聞いてしまったのは、完全に悪手だった。

 自分でその呪いを知っている、と暴露していると同じだ。


「なんで知ってる!い、いや、ブラがあったから、試しに試着してみただけで、それ以上はしてない。

あんな大きなブラがあったら、ちょっと胸に置いてみるくらいするでしょ!?」


 僕は女性でないので、気持ちは分かりません。

 胸と言われ見て見る。

 ドレスではっきりしないけど、どう見ても大きくはなさそうだ。

 そんな失礼な事を考えていると、後ろからセラさんに小突かれた。


「痛っ」


「不敬な顔をされてましたので失礼」


 ティゼ様は、胸を両手で隠すような仕草をし命令する。


「そいつを押さえておきなさい」


 セラさんに羽交い締めされるのだった。

 ティゼ様は咳ばらいを1ついれた。


「コホン。それでレベルが上がるのは良いのだけど、スキルや値が全く上がらなくて困ってる。

だから、あんたのように低レベルでもスキルを大量に持ってるやつを探してた」


 てっきり呪いを解きたいのかと思っていたけど違うのか。


「呪いを解きたいのではなくてですか?」


「呪い?その気持ちはない。ブラを変えるだけで、レベルが上がって行くのよ?こんな恩恵を捨てるなんてありえない」


 恩恵か、たしかにレベル上げは簡単かもしれない。

 でも、レベルだけでは意味がないので僕は説明する。


「レベルは飾りです。実力も努力もされていないのでは、値が増えることはありません」


 僕は女神や祖父からの受け売りを、そのまま話した。

 ティゼ様は立ち上がり、テーブルを強く叩き激昂する。


「じゃあ!努力をしろってこと!?」


 それが普通なのだから仕方がない。

 今まで相当、怠けていたなと感じた。

 悲しいけどこれが現実だ、きっぱりと申し上げる。


「はい。努力なくして得られません」


 頭を押さえフラフラとするティゼ様を、すぐにセラさんが支えた。


 しばらくして落ち着いたのか、抱えられ席に戻された。


「あんたも専属の教師や、父上のように言うのね。

やだやだー、動きたくない、勉強したくない、簡単に強くなりたーい」


 あ、だめだ、この王女。

 完全に怠け者だ。


 セラさんにも、ここはビシっと言ってあげて欲しい。

 期待して目くばせすると、理解してくれたのか、セラさんはティゼ様の頭を撫でた。


「よしよし、ティゼ様は何もしなくていいのです。この方がなんとかしてくれるでしょう。

武骨にならないで下さい、か弱きままで最強を手にしましょう」


 !?

 無言の意思疎通失敗。

 セラさんも甘やかしすぎ、そんな無茶な事が出来るわけない!


 諦めて貰おう、でなければ一生を王女教育で終えてしまう。


「何もせず最強なんて無理です!」


 セラさんは鬼のような目をこちらに向けるが、負けられない戦いだ。


「いま何と言いましたか?」


「無理です」


 セラさんの闘気が見える気がするほどの迫力だ。

 正直、怖い、逃げ出したい。


「あなたは低レベルなのに、スキルを大量に持っていることが証拠。

何か秘密を隠しているのでしょう」


「秘密はありません!本当に努力し、時には死ぬ思いをして手に入れた力です」


「死ぬ思い?小僧が吠えるな。なら、いまここで死にたいですか?」


「命がけとなれば簡単には、やられませんよ」


 火花が散るほどの臨戦モード。

 ティゼ様は、この状況にも圧倒されることはなく提案する。


「ちょうど良い。実力を見せて貰いましょう。模擬戦で」



 というわけで、模擬戦となった。

 適度にやられて無能を証明するのもありだが、少し頭にきていた。

 低レベル、人を努力もしてないような上から目線に。


 木剣を持ち防具はそのまま、ルールは相手が降参するまで続く。

 相手のセラさんは、防具無しに素手と完全に僕を舐めているのか、その余裕がさらに苛立たせる。


 ティゼ様の「始め」という言葉に開始。

 すぐにスキルを使えるだけ使う。


 ただ、素手とは言え隙が全く無い。

 右足を出し、右手は顔の高さの位置に構え、左手は力を抜き、腰の辺りでプラプラと揺らしている。


 考えていても仕方ない。


 間合いをつめ、剣を薙ぎ払った。

 気持ちが高ぶり大振りになったせいだろう、呆気なく上半身を反らせるスウェーで躱される。

 すぐに懐に入り込まれ、どう攻撃するのか?と思っていたら素手でぶん殴って来た。


 鎧は装備したままだというのに微塵の躊躇もない。

 本来なら手の骨が砕けてもおかしくないのに、何事もなかったかのように、続けざま顎に向かってアッパーが来る。


 ギリギリで躱し体当たりするが、まるで石でも押しているかのようにビクともしない。

 その間にも左右の両脇に拳がいれられる。

 鎧の上からでも衝撃が伝わり、下がらざる得なかった。


 距離をとろうとしても、すぐに追いつかれ、密着しての拳。

 金属の鎧がガンッと鈍い音を響かせる。

 もはやこれは鉄拳だ。


 汚いもクソもない。


「フラッシュ!」


 潜り込まれた瞬間に使う。

 さすがに閃光までは躱せなかったのか体勢を崩した。

 続けて魔法を放つ。


「ウィンドバースト!」


 暴風がセラさんを襲う。

 これには足を止めるしかない様子で安堵。

 もし、これでも突っ切られたら止める術がない。


 その間にも「3矢、ウインドアロー」を宙に待機させ、準備を整える。

 ウィンドバーストが止む前、少し風が弱まったとき、構わず突っ込んできた。


 剣での間合い、今度こそコンパクトに振り、空いていた右わき腹に当たったはずが、木の剣は簡単に折れてしまった。

 体が鉄ででも出来ているのか!

 模擬戦不利!と嘆いていられない。


 すぐに拳での連撃が繰り出され、もはやこちらも殴り返すしかない。

 しかし、にわかの格闘術など通用するはずもなく。

 顔や防具の隙間を殴られまくった。

 頭だけは死守してるけど、相当に痛い。


 殴るではなく、ガードでの戦法に切り替えた。


「スタンガン」


 手に雷撃を帯び、セラさんの攻撃を手でガードすれば。

 顎に向かっての右フックを両手で受け止めに行き、握れた!


 しかし、たしかに雷撃が相手の体を駆け抜けたはずなのに、セラさんは不動。

 その間にガードごと顎を撃ち抜かれた。


 良い一撃を食らってしまった。

 目の前が回り始め、片膝をついてしまう。

 それでも容赦はしてくれない。


 いつのまにか接近していたセラさんに顔面を殴られる。

 

 なんとか待機させていたウィンドアローを放つが、同時に放たれた3矢を拳で全て払いのける。

 この人は猛獣か。

 

 出来た時間で、立ち上がるがすでに足はフラフラ。

 突進してくるセラさんに合わせ、こちらも接近というか倒れ込む。

 相手を抱くようにクリンチで凌ごうとするが、その間にも後頭部や背中を叩かれる。


 この近さで出来ることはないか考え、1つのスキルに辿り着いた。


「心眼!」


 あとは頭突きだ!

 セラさんは、流石にゼロ距離では躱すこともできず、おでこをぶつければ完成。

 この回る世界の視界を共有して貰う。


 セラさんは何が起こったか分からなく、動揺して動きを止めた。


「サンダージャベリン、5矢ライトアロー」


 それを全て放とうとした時だった。

 背中に悪寒が走る。


「うが、うがああ!」


 突如セラさんが四足歩行になり、まるで獣のような雄たけびをあげたのだ。

 狂戦士化だ。

 これ以上やったら、死ぬか生きるかの戦いになってしまう。


 その時だった。

 ティゼ様が近づき、セラさんの頭を軽く叩いた。


「めっ!こっちの降参でいい」


 セラさんは、それだけで目を覚ましたのか、狂戦士化はしなかった。

 意外に王女も、度胸だけはあるようだと感心する。

 僕はすっかり怒気も抜け、僕は魔法を全て消した。


「あれ以上は、命の奪い合いになっていました。感謝します」


 勝負はどちらに転ぶか分からなかったが、殺し合いなどしたくはない。

 誰が勝者かと問われれば、命を救った王女に完敗だ。


 僕はセラさんに近づき、心眼のことを説明する。


「心眼というスキルで、おでこを合わせると解けます。おでこを合わせていいですか?」


「分かった頼む。目の前がフラフラして気持ち悪い」


 おでこを合わせようとした時だった。

 まだ、足元がふらつく僕は倒れ込んでしまう。


 そして、おでこは合わさったには合わさったのだが、そこで唇と唇も……。


 つまりキスしてしまいました!


「あばばば、すみません!」


 セラさんは唇を指でなぞり。


「ふぁ、ファーストキスだったのにー!お嫁に行けないッ!」


 と顔を真っ赤にして塞ぎ込んでしまった。

 ティゼ様も怒り。


「ちょっと!どさくさに紛れて私の従者になんてことを!やっぱりあの称号は本当だった」


 事故なんです。


 セラさんは塞ぎ込んだまま。


「これは責任を取って貰わないとなりません」


 そして顔をあげた。

 せ、責任って、まさか。

 

「とりあえずは、ティゼ様の教育をお願いします」


 ん?なんでそうなるのか理解が追いつかない。

 セラさんは吐露するかのように続けた。


「もう、私の力では、ティゼ様をこれ以上、お強く出来ません!

あれもしない、これもしない、もう限界です!」


 そう言って両手で顔を覆い、地面につけ泣き始めた。

 なんだかんだ甘やかして、一番苦労でもさせられていたのだろうか。

 その限界突破を託される身にもなって欲しいものではあるが、お断り出来ない状況だ。


「分かりました。頭を上げて下さい。出来る限りのことはやってみます」


 その言葉にセラさんは頭を上げ。


「言質は取りました」


 あっけらかんという顔をしていた。

 まさか演技だったのか!?


「え?セラさん、まさか!?」


「キスくらい大したことはありません。お気になさらず。

まあ、少しはショックでした」


 気にした僕は一体……完全にピエロだ。


 ティゼ様はまとめる様に。


「じゃあ、決定ということでよろしく。

そうね。今日はもう疲れたし、何もしたくないし、遊びたいし、明日の昼から城を訪れなさい」


「えー……」



 こうして嵌められたような、怠惰の王女様教育が始まったのだった。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ