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パーティの装備ステータス確認

 ソルトフレートに向かうため、乗り合い馬車が出る乗り場へと向かった。


 そこには多くの馬車が並ぶ。

 今回お世話になるのは、10人程が乗れる馬車で、馬が2匹で引く形だ。


 荷台には細い木の柱が等間隔で立てられ、天井には薄い板に布が貼られている。

 無いよりはマシな陽を遮る屋根が、申し訳ない程度に設置されていた。


 出発までは、もう少し時間がある。

 僕達は最終点検に入る。



 まずは装備。

 昨日の夜に、祖父に貰った装備を、皆で分け合った結果はこうなっていた。


 ナユタ、レベル13、Cランク、冒険好きフリータ。

 鋼の剣太郎、ミスリルナイフ(料理兼用)、手の平に穴開きガントレット、明主カノプス5世の素朴な鎧、ハードアルマジロ・ブーツ。


 レナ、レベル20、Bランク、剣士。

 ダマスカス・ロングソード、ミスリルの胸当て、アグニリング、アルマジロ肘当て、普通のミニスカート、アルマジロ・ロングブーツ。


 アルト、レベル18、Bランク、魔導士。

 マジックロッド、ソーサラーリング、魔法の薄手のローブ、風のブーツ。


 カエデ、レベル24、Aランク、侍。

 大鉄、袴、襦袢、剛力の具足ぐそく、足袋、自作の永年草えいねんそうの草履。


 サリア、レベル23、Bランク、回復士。

 パープル・クリスタル・メイス、深紅のドレス+魔力の糸の刺繍入りフリル付き、知力のミニハット、普通のミドルヒール。


 もっと強力な装備があったけど、重くて使えない物や、使用者のMPを消費するような癖のある物などが多く、使えるようになるには、まだまだ先のよう。

 無理に使って逆に戦力が落ちては本末転倒、いま合った装備をするのがベストだろう。


 ちなみにミスリル胸当てで、レナと取り合いになったけど、サイズが合わなかったので諦めざるを得なかった。

 カノプス鎧はまともな鎧なので安心して欲しい。


 風のブーツは、風属性を強化させるシンプルなバフがつく。


 剛力の具足は兜はなく、胸当てと籠手と膝当てがセットになっている装備で、力があがる。


 永年草は枯れない草として有名で、その草履は長年持つと言われている。

 ただ、枯れないせいで、邪魔な雑草としても扱われている悲しき草。


 知力のミニハットは、頭に被る小さな帽子。

 その名前の通り、知力があがるけど、サリアは頭が良いのか悪いのか、日常の行動で、まだはっきりしないので効果は不明だ。

 個人評価では、やや悪そう、なのは秘密だ。



 次は個人スキルの確認だ。

 いま使えるモノを、全員が把握しておいた方がいいだろう。


 ナユタ。

 身体強化、思考加速、肉体操作・燃費向上・筋力増強、心眼、ステータス上昇率260%。

 ライト、ウィンドアロー、ウィンドカッター、ウィンドバリア、ウィンドスプリント、ウォータバリア。

 ディスペル、ハイヒール、サモン。

 ディヴァイド、コンシルメント、クラッシュダミー、ライトアロー、フラッシュ。

 ウィンドバースト、サンダーショット、スタンガン。

 緊急時限定、転移、物理・魔法耐性急上昇、時間干渉。


 レナ。

 ファイアボール、ファイアエナジー。

 身体強化、動体視力強化、火耐性、魔法剣・火。


 アルト。

 ヒール、デトックス、ディヴァイド。

 ウィンドアロー、ウィンドカッター、ウィンドバリア、ウィンドスプリント。

 ストーンショット、ストーンウォール、ストーンヘンジ。

 ウィンドクロス、ブレードストーム。


 カエデ。

 斬空、斬岩、斬鉄、結界、自作お札、身体強化、集中力強化。


 サリア。

 ヒール、ヒーリング、ハイヒール、ハイヒーリング。

 ライト、ライトアロー、ライトジャベリン、ホーリーフィールド、ディスペル、ソウルリリース。

 ダーク、ダークアロー、ダークジャベリン。

 トラック、ピッキング、前準備が必要な転移。


 キュウ。

 単独転移、アイテムボックス1軒屋が入るサイズ+冷蔵機能、索敵100メートル、格納式の両手装着。


 僕だけ突出してスキルが多いのは分かっていたけど、皆もそれぞれスキルが魔法が増えていたようだ。



 アイテムの確認も怠ってはいけない。


 薬草にお決まりの王露丸、包帯やタオル、紐などの応急セット。

 長めのロープに蝋燭、鍋や器、寝袋など準備は万端だ。


 中には祖父が入れていたのか、竜血丸まで入っていた。

 最悪の事態に使用させて貰おう。



 最後に確認することは、皆の体調だ。

 健康でないのに冒険に出るなんて、もってのほか。


 レナはいつもの調子で「異常なし!」

 アルトはモジモジしながら「胸がドキドキしてます」と、冒険に興奮してるだけだろう。

 カエデは剣を素振りし「問題なしだ」とだけ。

 サリアは欠伸をしながら「眠いくらい」


 そして僕は、すこぶる元気だ。


 そうこうしている内に、馬車の準備が出来たので乗り込む。

 すでに荷台には、4名の人物が乗っていた。

 全員が男性で、装備や仲良く会話している所を見ると、冒険者のパーティかもしれない。


 リーダーらしき人物は20代に見え、細見で身長は170前後。

 茶髪にショート・ウルフカット、両耳にピアスと見た目も性格も軽そうに思える男だった。

 大剣を背中に背負い、豪華なミスリル製品で体と手足を固めている。


 その隣で話をしているのは、同じく20代に見える、やせ型で身長は165前後。

 黒髪にショート・ツーブロックに、首元にはネックレス。

 腰に短剣を2つ装着、マントと何かの皮製品の防具を装備しているので、身軽な職業に思えた。


 3人目は奥で座り込んでいる、30代に見えるローブを着た男性で、座っていて良くわかないけど170は超える高身長のようだ。

 肩まで伸びる青髪で7:3分け、先はウェーブがかかっている。

 手には指輪をいくつもはめ、足元にはアンクレットもつけている。


 そして最後は、筋肉の塊の大男で年齢は40代に見えるけど、実際はもっと若いかもしれない、身長は180近い。

 スキンヘッドに装備、装飾品も一切つけておらず、横に大きな鎧櫃よろいびつがあることから、おそらく重装備だろう。

 鎧櫃の上に無造作に置かれている、1メートルはある大きな盾を見ると、タンク役かもしれない。


 第一印象は、悪いけれどお金持ちの道楽パーティ。


 いや、もしかしたら凄いパーティかもしれない。

 ここは無難に波風を立てぬよう、お邪魔しよう。


「失礼します」


 僕達が乗り込むと荷物もあって、馬車は満員状態に近くなった。

 それを鬱陶うっとうしく思ったのか、ツーブロックが聞こえる声で話す。


「なんや暑苦しなった気せえへん?」


 言葉遣い、イントネーションが独特だ。

 リーダーもヘラヘラと笑いながら。


「気のせいじゃないが仕方ないだろ。お前だけ走ってついて来いよ」


「余計、暑苦しなるっちゅうねん。堪忍してや、ワイ体力ないねん。

いいこと思いついたわ、筋肉ダルマ出そう、そしたらすっきりするやろ」


 7:3はローブを脱ぎ、髪をかき分け。


「それじゃあ、今度からタンクはお前がやれよ」


「うひゃー、無理や無理。冗談や、ほんまにやるわけないやろ」


 ダルマは大声で笑っている。


「ガハハハ、儂は一向に構わんぞ!」


 リーダーは落ち着かせるように話す。


「だいたいお前が庶民の冒険を体験したいっていうから、こんなボロ馬車になったんだろ」


「あー、言うんやなかった」


 会話の流れから、だいたいの人物像はつかめた。

 結論、ダルマ以外は仲良くなれそうにない。


 そしてツーブロック野郎が、僕達にも声を掛けて来る。

 うるさいやつだ。


「お、なんや別嬪さん、おるやん、この選択も悪なかったかも。

一時的とはいえ、これから旅をする仲間や自己紹介せな」


 そこでリーダーが遮り、自己紹介を始める。

 興味ないんだけど。


「やあ、始めまして。俺達はパーティ、”ガーディアンズ・エンジェルズ”、俺はリーダーをしている」


 聞く限りガーディアンもエンジェルも複数形、どっちか”ズ”消さないのかな。

 それに天使は見当たらないようですけど、ダルマの頭に輪っかでもつけようか。

 なんか名乗った気がするけど、パーティ名が気になって聞いていなかった。

 どうせ知る必要もないだろう、気にしない。


「ワイは」


 うん、お前はツーブロック、ツーブロね。

 出発時間はまだかなー。

 馬車変えたいなー。


 7:3の男は興味がないのか、会話には混ざってこない。

 そしてダルマさんだ。


「儂は”バルトワ”と申す、タンクをしている。

うるさい上に、むさ苦しくしてしまって、すまん。

なるべく端っこにいるから勘弁してくれ。

それはそうと腹は減っていないか?ちょっと買い過ぎてしまってな、菓子のマドレード食わんか?」


 あ、天使いたかもしれない。

 僕達はありがたく頂く事にした。


 バルトワさんは、言葉通りに端っこに移動し、鎧櫃の上に腰かけ頭に盾を置き、ちょこんと座った。

 コンパクト・バルトワさん。


 ツーブロはしつこく、名前を聞いて来る。

 少しはバルトワさんを見習ってくれないかな。


「なあなあ、名前なんて言うん?年齢は?」


「僕、ナユタって言います。15歳です」


「お前には聞いてへん」


「えー、そんな冷たくしないで下さいよ、仲良くしましょうよ」


「あー、もう、ええわ。邪魔なガキやで、ほんま」


 フフフ、お前は絶対に近寄らせないぞ。

 ナユタフィールドを常時発動する。


 そこで、まともそうな7:3が話し掛けて来た。


「お前たちも冒険者なんだろ、それにしては荷物が少なすぎないか?冒険を舐めてるのか?」


 売り言葉に買い言葉に、アルトが反応して喋ってしまう。


「私達にはアイテムボックスがありますから」


 ツーブロがまた話に混ざって来る。

 そろそろコイツの髪を刈り上げたい。


「あんたらにそんなレアスキルあるわけないやろ、嘘はあかんで。ほんまなら証拠みしてみ」


 嘘と言われてレナも頭に来たのか、挑発に乗ってしまう。


「アイテムボックス!」


 わざわざ叫ぶ必要はないのだけど、キュウが気を利かせて寝袋を出してくれた。

 レナはまるで自分のスキルだと言わんばかりにドヤ顔をする。


「どう!」


「嘘やろ、こんな可愛い娘にこないなスキル、完璧やん。どや、うちのパーティきいひんか?」


 ハイハイ、すとーっぷ!


「パーティ勧誘には契約が必要でーす。ギルドで正式な手続きを済ませた上で」


「うざいガキやな」


 その言葉そっくりそのまま返したい!


 互いに顔を近づけガンのつけ合いをしていると、今まで無言だったサリアがある提案をする。


「狭苦しいから、なんならあんた達のアイテムも入れてあげるけど?」


 ツーブロは猛反対する。


「いらん世話や、そう言って盗もうっちゅう魂胆ちゃうか?」


 流石にブチ切れたい。

 僕達がそんなことをするように見えるだろうか。


 ただ、リーダーはその提案を考えてくれているようで、悩んだ後に答える。


「うん、悪くない提案だ。どうせ盗まれても良い物で、すぐに使わないアイテムや寝袋などは預かって貰おう」


 こちらの厚意を嘲笑うかのように、盗まれるという心配はしているのに腹が立つ。


「リーダーがそう言うんやったら、ええわ。はよ、入れや」


 お前をいれてやろうかー!と思ったのは言うまでもない。


 出されたアイテム類を仕舞うと一気に広くなった。

 これで快適な旅が出来そうだ。

 ツーブロがいなければであるが。


 そうこうしていると、馬車の出発時間になった。

 時間ギリギリで、最後に駆け寄って来る女性が1人。


 僕は手を差し出し、女性を荷台へと乗せた。


「ありがとうございます」


 女性は村にいるような普通の娘で、赤髪が肩甲骨まで伸びるストレート、身長は僕と同じ160cmくらい。

 ブラウスにロングスカート姿で、装飾品はつけていない素朴な格好。

 こんな娘が護衛もつけずに馬車に乗り込むなんて、帰郷か何かだろうか。


 いや、もしかして護衛は、こいつらかもしれない。

 と思っていたが、ツーブロがまたしても声を掛けているのを見て違う事が分かった。


「名前聞かせてぇな」


 女性は身を守る仕草をしながら答える。


「サキと言います」


「サキちゃんか、彼氏はおる?」


「はい」


「なんや彼氏付きかい、なら興味ないわ」


 そんな会話をしていると馬車は動き出す。


 ここから4日の行程のソルトフレートまでの旅が始まった。


 工程は大雑把に、1日目はただひたすら北上し、途中で野営の予定だ。

 2日目には中間地点となる村に寄って一泊。

 3日目はさらに北上し、ここでも野営し、順調なら4日目の昼には到着となる。


 初めての長旅に、緊張と同時に興奮を覚える。

 これぞ冒険という感じだけど、アルト以外の女子には不評だった。


 「虫は嫌だし、気が休まらないし」はレナ。

 「なるべくなら避けたいものだ」はカエデ。

 「風呂があれば許せるんだけどね」はサリアだ。


 アルトだけは「土に塗れ、雨に打たれ、暑さに負けず、寒さは堪え、進め若人よ」と誰かになりきっていた。


 まあ、そうそう問題は起きないだろう。

 と思っていたのは、甘かった。


 運が悪い事に街を出てすぐ、男性型の”オーガ”2体と遭遇してしまう。

 オーガは2メートル近い巨体に引き締まった体。

 武器は”ファルシオン”の剣に、皮製ではあるが防具も装備している。

 両耳の上部分に2本の角があるのが特徴で、女性型は額に角が1本ある。


 僕達より早く馬車を降りたのは、彼らだった。


 いつのまにかフルプレートアーマの重装備をし、盾を前面に持ったバルトワさんが敵を引き付ける(ヘイトをとる)。

 その後方から7:3の”ファイアジャベリン”(火の投げ槍)の魔法が飛び、それを合図に残りが斬りかかる。


 リーダーの大剣は、オーガーの鎧を簡単に斬り裂き、ツーブロは速さを生かしオーガを翻弄している。

 オーガが攻撃してもバルトワさんの盾に阻まれ攻撃は通らない。

 やがてオーガは逃げるように去って行った。


 ツーブロは余裕の表情で短剣をホルダーにしまい。


「もう終わりかいな」


 リーダーと7:3は無言で馬車に戻って来る。

 バルトワさんは兜を脱ぎ風を浴び、爽やかな笑顔だ。


 物足りなかったのかツーブロだけは、馬車の外で体を動かしている。

 今だ、早く出発するんだ!の願いは届かず、戻って来てしまった。

 残念でならない。


 さて、出遅れた僕達はというと、各自が剣を取り、いざ出撃!という体勢で固まっていた。

 サリアだけは、座ったまま爪を気にしていたが負けた気分だ。


 ツーブロがひけらかす。


「なんや、ようそんなんで生き残ってこれたな」


 レナも怒りの限界が近いのか、殴りかかりそうな表情を見せる。

 僕はそれを必死に止めた。

 やるなら人気のない時に。


 サリアは特に気にする様子もなく。


「ご苦労様」


 とだけ一言。


 態度にツーブロは頭に来たのか、サリアに詰め寄ろうとするが、リーダーが入ってことなきを得た。


 前途多難な冒険の始まりだ。


 その後もオークとコボルトとの戦闘があったものの、全て彼らが戦ってくれた。

 楽でいいのだけど、何もしないというのは退屈だし屈辱だ。


 そう思っていても、僕達のパーティはすっかり安心、安全、ほのぼのモード。

 サキさんを含めて女子で盛り上がっている。


 僕だけ気を張っていてもしょうがない。

 かといって女性陣に入る勇気もないので、脱力しスライム化してボーっと過ごそう。


 蝶々が飛んで行く、良い天気だ。


 そんな僕に1匹のバッタが手に止まった。

 やあ、バッタさん、僕は悪いナユタじゃないよ、プルプル。

 しかし、振動が気になったのか、バッタは飛び跳ねてどこかへ行ってしまった。


 プルプル。


 虚しい。


 その時、何かが近づいて来る気配に気づく。

 けど、どうせ、彼らがやっつけてくれるだろう。

 のんびりとしていると、リーダーが声を掛けて来る。


「すまないが次は頼んでもいいかな、髪がセットし終わらないんだ」


 ツーブロは煽る。


「ちぃとは働けや」


 バルトワさんも。


「ガハハ、どれ腕前を見せて貰おうか」


 と今回は様子見の姿勢のようだ。


 ならば見せよう、僕の力を!

 しかし、意気込んで飛び出そうとして、躓きコケてしまう。

 脱力しすぎだったか!


 ツーブロは大爆笑。

 他の皆は僕を置いて、さっさと行ってしまった。


 急いで起き上がり向かったが、すでに戦闘は始まっていた。

 敵は”サーベルタイガー”、3メートルを超える巨体に、口元には長い牙をもった獰猛どうもうな虎だ。

 あれに噛まれたら、ひとたまりもない。


 前衛で迎え撃つのはレナとカエデ。

 カエデは居合で構え、虎が飛び込んできたのに合わせ斬る。

 怯んだ隙にレナが追い打ちをかける。


 さらには後方からウィンドクロスが飛び、額を深く切り裂く。

 とどめにサリアのダークジャベリンが腹部に突き刺さった。


 僕は見ているだけで終わってしまった。

 全員がハイタッチし勝利を喜びあっている。


 レナはそんな僕に近づいてくる。

 ハイタッチかな?と手を上げて待っていると、それはなく。


「ナユタ、血抜きだけお願いね」


 そう言って女性陣は馬車へと戻って行ってしまった。

 ミスリルナイフを取り出し、僕は血抜きをする。

 虎も見事に斬れて、切れ味抜群だ、うん。


 荷台ではツーブロが笑い転げている。


「あはは、なんやガキんちょは解体屋だったんか。重くて運べなかったら言いや、手伝うで」


 くっ、解体の専門職ではないけど、モンスターの処理は僕が全てやっている。

 それを小馬鹿にするとは許せん。


 お前も解体してやろうかー!


 気が付くと怒りの力だろうか、僕は1人で虎を持ち上げてしまっていた。

 僕自身驚いている。

 血抜きしたとはいえ、こんな巨体を持ち上げてしまっていることに。


 まずいと思い馬車の方を振り返ったが、この光景を誰も見ていなかったようで安心した。

 きっとまだ子供の虎だったんだろう。

 そう思うことにした。


 処理が終わればキュウに頼み、アイテムボックスに入れて貰うだけだ。


 僕も馬車へ戻り、ツーブロは無視。

 レナはもう虎が食べれるかの話をしている。


 それにしても皆も強くなったな。

 成長を見守る親のように僕は目を細めて皆を見る。


 アルトは勘違いしたのか。


「目にゴミでも入りました?」


 皆の成長を目に焼き付けているだけさ、と言おうとして止める。


「ちょっとね」


 風が少し強くなって来た。


 やがて陽は暮れ始め、野営地へと辿り着いた。

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