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祭りと喧嘩と華

 8月15日、昼。

 天気は快晴、連日続く猛暑。


 ギルド内は人の多さのせいか蒸し暑く、多種族が集まり独特の臭いがしている。

 池の臭いはリザードマン、獣の臭いは獣人、血の臭いは裏の倉庫からだろう。


 受付で待つ僕達、無風のはずの室内に風が吹く。

 あまりの暑さに誰かが、風魔法を使ったのだろうか。

 僕は振り返り。


「気持ちが良いね」


 アルトを中心に風が吹いているのに気付く。

 使用者を特定した。


「魔力切れに気を付けてね」


 自分に風を当てアルトの髪が揺れた。


「ふあーい」


 レナも一緒に風に当たり始め、髪が絡まり合う。

 後で解くのが大変そうだけど、魔法は便利だ。


 チャコがバジリスクの報酬を手に、受付に戻って来た。


「良い風にゃー。獣人は毛が多いから暑さに弱いにゃ」


 そう言ってチャコも風を浴びようと顔を伸ばす。

 チャコの体には、獣人だった頃の名残なのか、腕や足に多くの毛が生えていた。

 夏場に毛皮を着るようなモノで、それはそれは暑いだろう。


 チャコはカウンターから身を乗り出し、さらに風を浴びようと必死だ。


「それにしても、なんで討伐じゃにゃいのに倒して来るかにゃ。獣人より血の気が多いにゃ」


「それは成り行き上で仕方なかったので」


「おかげでバジリスクの肉も頂けたので、文句を言う立場じゃにゃいけど、危なすぎるにゃ」


 バジリスクの肉は多すぎたので、チャコにもおすそ分け。

 味の方は普通に鶏肉で、美味しく頂いた。

 蛇は皮を買い取って貰っている。


「自重します」


「自重されたら肉が食べられなくなるにゃ、適度に頑張ってにゃ」


 肉は食べたいのか。

 適度に出来れば苦労しないのだけど。


「さて今回は朗報もあるにゃ、この度アルトがBランクに昇格しましたにゃ」


 おお、ついにBランクに、頑張ったかいがあった。

 アルトは喜び、飛び跳ねようとするけど、絡まった髪がほどけず、レナと髪の引っ張り合いになってしまう。


「痛っ。嬉しいです、ありがとうございます」


 となると。


 僕は次の言葉を待っていた。

 でも、チャコは一向に話さない。

 じらしているのかな?耐え切れなくなった僕は聞いていた。


「他にも朗報ありますよね?」


「ん?にゃい」


 ガーン。


 僕は膝から崩れ落ちそうになるけど、必死に堪え食い下がる。

 手違いがあったのかもしれない。


「僕の昇格は?」


「実績は申し分にゃいんだけど、規定レベル15に達してないので無理にゃ」


 ガーン。


 アルトに先を越されてしまったショックに、ついに耐え切れなくなり、膝から崩れ落ちた。

 ここでもなお、立ちはだかるかレベルよ。


 髪をほどいたレナも気になるのか聞く。


「私は?」


「レにゃは実績が足りてないにゃ。でも、もうすぐAににゃれる所まで来てるにゃ」


「もう少しか、やる気が出て来たわよ」


 ごめんなさい。

 僕はやる気がなくなって来てます。


 レナとチャコは、がっしりと腕を組み。


「そのいきにゃ!」


「にゃ!」


 と意気投合している。


 話は変わり、チャコが予定の方を聞いて来る。


「今日はどうするにゃ?いくつか受けられる依頼もあるにゃ」


 アルトが答える。


「今日は夏祭りを見ようかと思っています」


 レナがアルトの肩に手を置き。


「あと昇格祝いもしなきゃね」


「にゃるほど、冒険者にも休息が必要にゃ。羽目を外し過ぎないようににゃ」


 手を振りレナとアルトはギルドの外へ向かう。


 しかし、僕が着いて来ていないのを知って、戻ってローキック。

 僕は痛みで、やっと立ち上がることが出来た。



 今日はエルフォードの街全体で、大きな夏祭りがある。

 すでに出店や出し物が多く並び、街の所々には花や奇麗な布が飾られ、活気に満ち溢れていた。


 元々は商店街の店舗一斉の在庫処分が発展して行き、祭りにまで成長したらしい。


 その後は信仰を広めたい教会が、大地の神に芳醇を願う意味がある、と付け加えたり。

 税収を増やしたい王都からも支援もあり、巨大な祭りへと変貌して行ったそうだ。


 強欲の神を祭った方が、いいのではないだろうか。

 大地の神を象ったクッキーを、レナに無理やり口に放り込まれながら、そう思う。


 あ、意外に美味しい。


 暗い気分で祭りを過ごすなんてもったいない。

 こういうときこそ、大いにはしゃごう。

 僕はアルトから、大地の神を象った揚げ菓子を貰いながら、気持ちを切り替える。


 神、食べられすぎ。


 大通りはたくさんの人で、歩くのも大変だ。

 食べ物の露店に、衣類や装飾店に武器屋まで、覗いてみると値段もいつもより安い。


 ただ、中には怪しい店もあり、その筆頭がアクセサリーを売る男だ。

 街に最初に辿り着いた時に、騙されそうになったので、顔は良く覚えている。

 今日もまた閉店セールか、何人目かの親が亡くなった日をしてなければいいのだけど。

 気になるので、冷やかしして行こう。


「こんにちわ、いつもの入ってますか?」


 男は険しい表情をして睨む。


「あーん?誰だあんた?」


 カモの、いや、お客様の顔を忘れるなんて悲しい。

 ここは猛アピールだ。


「僕ですよ、僕。田舎から出て来て、寂しさに押しつぶされそうになっていたとき、声を掛けてくれたじゃないですか」


「覚えてねぇな」


「ひどい。あ、今日もあの時と同じ商品を売ってるんですね。

あー、これだ、このメッキ製品!こっちの金の指輪の錆びつき具合もなつかしい!

やっぱりメッキでも、それなりのお値段するんですね、とても僕には手が出ないです。

でもメッキにはメッキなりのメッキリとしたメッキのよさがメキメッキと伝わってきます。

この価格は仕方ないかと」


「メッキメッキうるせぇぞ!」


「失礼しました。つい興奮してしまって」


 煽るのに興奮。

 周囲の人は何事かと、様子を窺っている。


「怪我したくないなら、どっか行け。これ以上騒ぐなら営業妨害で衛兵を呼ぶぞ」


「怪我!それは大変だ!」


 実は衛兵はすぐ傍にいた。

 それを知っていて煽っているのだ。


 騒ぎを聞いて衛兵が駆けつけ、男に声を掛ける。


「怪我と聞いたが大丈夫か?何か問題があったのか?」


 男は手でゴマすりをしながら頭を下げる。


「いえ、何もありませんよ。ただ、このガキが騒ぐもんで、つい声を荒げちまっただけで」


 衛兵は何事もなかったので、納得し去ろうとするが、店の商品を見て怪しむ。


「この価格はなんだ?随分と法外だが」


 男はすぐに値札を隠すが遅い。


「こ、これは間違いでして」


「間違い?では本当の値札はどこにある?」


「それは今準備するところでして」


「怪しいな。少し詰所で話をしようか」


 男は衛兵に連れていかれた。


 ご愁傷様です。


 祭りの間だけでも絞られるといい。

 これで被害者が減るだろう。

 

 さて、気分も晴れたことで祭りの続きだ。

 食べ物は一通り食べたし、出し物を見てみる。


 ジャグリングをするピエロや、路上でのマジックショー。

 景品に輪を投げる輪投げに、本当に当たりはあるのか?景品が紐に繋がれた紐引き。

 アルトが熱くなりすぎて、全部引こうとしたのは止めた。

 

 戦利品は謎の人形に、どう考えてもいらない、可愛くない謎の木彫りの猫の像。

 そして、どこで使うのか分からない謎のメダル。

 像以外は子供が貰ってくれた。


 アルトが像も子供に見せている。


「猫ちゃんもあるよ」


 子供は素直だ。


 男の子は「いらない、可愛くないもん」


 女の子は「怖い」


 ということで、像は別邸の入口にでも飾っておこう。

 魔除けとして。


 この暑さだ、歩いていれば喉も渇くので、テラス席のある喫茶店に入ることにした。

 店の外には多くの席が設けられ、すでにお酒が入っている人もいるのか、大盛り上がり。

 僕達は少し離れた席に座る。

 絡まれでもしたら面倒くさい。


 ウエイトレスに注文をし、待つこと少し、冷え冷えの飲み物が運ばれてきた。

 なんでも祭り期間の限定で、氷魔法の使い手が冷やしているらしい。

 冷たくて美味しい。

 アルトはあまりの冷たさに、カップに頬をつけている。

 

「真夏に氷が頂けるなんて贅沢。氷魔法も覚えたいですね」


 僕はカップを動かし、中身を混ぜる。

 コロンと氷の音が心地よく響く。


「水魔法なら使えるけど、氷となると難易度が高いよね」


「ですよね。魔法の派生って、中級より難しいかもしれないです」


 レナは魔法の話には苦手だ。


「どうせ私は火しか使えませんよー。熱くてごめんあそばせ」


 アルトはフォローに入る。


「レナは剣が凄いじゃないですか、魔法に頼らない戦闘スタイル、格好良いです」


 鼻が高くなるレナ。


「そう?お褒めの言葉ありがとう。お礼に剣で扇いじゃおうかしら」


 それは危ないし、逆に暑苦しそうなので止めて貰いたい。

 僕は剣を持とうとするレナを必死に止めた。


 飲み終えトイレに立つ2人。

 僕は1人になり、今後の事を考えることにした。


 レナは順調にレベルアップし、いつのまにかレベル20に。

 剣の腕もメッキメッキと上達、今なら全快のジスタにも引けを取らないかもしれない。


 アルトはレベル18に上がり、Bランクに昇格。

 魔法も中級まで取得し、体力もついてきた。

 出会ったときのように遭難することは、もうないだろう、逞しくなってる。


 順調にレベルアップする2人に、置いて行かれる僕。


 このままでは……。


 僕は唸って考え込んでしまう。


「うーん……」


 今後かー。


 2人が戻って来たので、相談してみよう。


「今後の事だけど」


 僕が言い終わる前にレナが、話し始めてしまう。


「何よ、やる気満々じゃない。

そうね、依頼の方も色々と受けられるようになったし、思い切って遠征でもしちゃう?

ここから北にある”ソルトフレート”の港街なんてどう。

漁業と流通が盛んで、世界各地から物が集まって来るらしいの。

海産物に海戦、新たな冒険の匂いが海風に乗ってやって来る!」


 アルトも乗り気になる。


「いいですね海戦。燃えるシチュエーションです。

クラーケンに船を襲われる姿が想像できます。

水中に引きずり込まれるナユタ、そこで剣が光り輝き」


 いやいや、普通の鉄の剣です。

 そんな謎の効果はありません。


 2人はワイワイと盛り上がっている。

 非常に話しづらい雰囲気だ。


 僕は咳払いを1つ入れ、意を決して話始める。


「コホンッ。今後の事だけど、パーティの出入りを自由にしようかと思ってる」


 2人は驚き顔を見合わせる。


「ほら、僕だけ低レベルのままでしょ、そのせいで受けれない依頼や、行けない場所もある。

つまり、足を引っ張ってしまってる僕がいて申し訳なくて」


 レナはテーブルを叩く。

 カップが激しく揺れ倒れ、残っていた飲み物がこぼれた。


「パーティ解散ってわけ!?」


「いや、そこまでじゃなくて、自由に他のパーティとも組めるようにと」


 アルトが真剣な顔に変わる。


「パーティには契約があります、それは何か月と続くんですよ。

運よくパーティが見つかるかも分かりませんし、その間に他の人はどうするんですか?

それに私は嫌ですよ、私はナユタについて行くと決めましたし、他の人達となんて……」


 レナも激しい剣幕で。


「だいたい、その問題のナユタはどうするのよ!真っ先に困るのは、あんたでしょ!」


「それはそうなんだけど、皆のためも思って」


「皆って誰!?どこの誰の誰それさん?」


 僕も怒気に当てられ、だんだん怒りが湧いて来る。


「皆って言えば分かるだろ、なんで僕が責められなきゃならないんだ!」


「責められるのは当然でしょ。あんた私達のこと、どうでも良いと思ってるんじゃない?」


「なんでだよ!どうでも良かったら、こんな提案なんてしない!」


「いいえ、違うわね。そう言っておいて、私達の方が邪魔になったんじゃない?」


「なんでそう捻くれるんだ!この分からずや!」


 アルトが邪魔をする。


「落ち着いて下さい!この話はなかった事にして、今まで通り仲良く行きましょうよ」


 今まで通り?

 こんな女がいる中で、やっていけるわけがない!


「無理だね。こんな脳筋女と、また仲良くお手て繋いで頑張りましょう?冗談を」


「こっちこそ、低レベル過ぎて弱いあんたとなんて願い下げ」


「弱い?誰が?」


「え?低レベル過ぎて馬鹿なの?他に誰がいるっていうの?」


「この際だし白黒つけようか、女だからって容赦しないし」


「キャー、怖い。なんかどこかで犬が吠えてるんですけど、レベル低すぎ背も低すぎで見えなかったー」


 僕達は立ち上がる。

 レナが物干し竿を1本、店から購入し膝で半分に折る。


「あ、ごめん。別に剣でもいいのよ」


 投げられた棒を受け取る。


「剣は生憎、鍛冶屋に出しておりまして。そっちこそ、どうぞどうぞ、遠慮なく抜いていいですよ」


「弱い相手にはこれで十分。なんならもっと短く折りましょうか?」


「素手でもいいんだけど、そちらに合わせようかと、棒で叩きのめされた方が堪えそうだし、躾がいがありそう」


「もう話すことはないわ」


「こっちも」


 棒の殴り合い。

 この野郎!

 魔法もスキルも使わない。

 素の状態で勝つ!


 開始早々、渾身の一撃がレナの腹部へ決まった。

 苦悶の表情、チャンスだ。

 ここは一気に畳みかける。


 はずが、すんでで手が止まった。


 大事な人を傷つけている。

 こんな事をするために、冒険者になりたかったんじゃない。

 一緒に楽しんで、笑って、時には泣いたりするためだったはず。


 それなのに。


 少し冷静になり、辺りを見渡す余裕が出来た。

 アルトが泣いている。

 違う、こんな風に泣かせるためでは決してない。


 完全に手は止まった。


 そこにレナの一撃が頭部に決まる。

 良い一撃を食らった。

 

 意識が飛びそうだ。


 それでも倒れないよう、必死に足に力を込める。

 こんな一撃だけでは、とても今回の事を償えない。


 どのくらい殴られていただろうか、ボコボコの僕。

 いつのまにか野次馬が出来ていて、歓声があがっている。

 こっちは散々だというのに、良い見世物だ。


 あれ?なんで喧嘩してたんだっけ?

 宙が回る。

 もう駄目だ、何も考えられない、僕の負けでいいや。


 ついに限界を迎え、薄れゆく意識。


 ブラックアウト。



 気付いたのは、別邸のベッドの上だった。

 起き上がろうとし、全身に痛みが走る。


「く、あの馬鹿力め!」


「馬鹿で悪かったわね」


 隣には本人がいた。

 椅子に座り、前屈みで膝で頬杖をついている。


「いや、その、良い意味での馬鹿というか」


 言い訳をし、毛布を被る。

 しかし、毛布はすぐに剥ぎ取られた。


 体をよく見てみると、これでもかと全身包帯のグルグル巻き、まるでミイラだ。


「アルトが回復してくれたんだからね、後でお礼を言っておきなさいよ」


 僕はしょんぼり、仕方ないので敷布を纏う。

 その敷布もすぐに剥ぎ取られる。

 もう隠す物がない。


 レナは急に頭を抱え、奪った敷布を被る。


「あー、もう。ナユタ!最初の一撃の後、全く手を出さなかったでしょ!

それなのに私、頭に血が上ってて、フルボッコしちゃったじゃない……」


 気付いていたのなら、もう少し早く止めて欲しかった。


「まあ、おかげさまでスッキリしたけど。で、どうするの?」


 僕は何もない天井を見上げ、思ったことを口にした。


「どうして冒険者になりたかったのか考えてた。

色んな敵を倒したり、色んな場所へ行ったり、そこで笑ったり、怒ったり、時には辛いことも。

それは今回のような喧嘩じゃないと思った。

いや、違う、今回も含まれるかもしれない」


 上手く言葉に出来ない。

 レナは黙って聞いてくれている。


「うん。それで」


「他のパーティでも、その色んな事があると思う。

もしかしたら僕達より、もっともっと凄い事だってあるかもしれない。

けど」


「けど?」


「それを一緒に分かち合いたいのは誰か、って考えると、やっぱりレナとアルトが良いなって」


 レナはなぜか黙って僕の頭を撫でる。

 そして耳元で囁いた。


「私もナユタとが良いな」


 顔が近い。


 近いです!


 その時、勢いよくドアが開かれアルト参上。


「目覚めない男子には、キスで目覚めさせよという文献が、がが、が!?

あ、すでに実践ずみでしたか、これは失礼しました」


 レナは慌てて僕から離れ。


「ち、違う!してないわよ!」


 アルトは意地悪な顔に変わり。


「またまたー。良いんですよ、本当の事を言って下さい」


「だ・か・ら、し・て・な・い!」


 そういえばアルトが回復してくれたんだ、ここはお礼を言っておかないと。


 僕は痛む体を押して、ベッドの上で土下座する。


「アルト回復ありがとう!そして心配かけてごめんなさい」


「ちょっと、無茶しないで下さい。骨にヒビが入ってるかもしれないんですよ!」


「今更言えた義理ではないのは、重々承知しておりますが、レナとアルトと一緒にしたいんです!」


「え?えー!したいって、キ、キスですか!?」


 ちがーう。

 そもそも、それはしてない。


「言葉が足りませんでした。冒険をしたいんです。

どうかもう一度パーティを組んで頂けないでしょうか」


「なんだ、冒険ですか。え?パーティって解散してましたっけ?」


 頭上からレナの声がする。


「してない。パーティ自由の方針だったじゃない。

ということで自由なら、私はよわっちいナユタと組むわ。

そっちの方が面白くなりそうと思わない?『あんな低レベルが、ドラゴンを倒しただと!?』とかあったら」


「それは面白そうですね。

元々、私はナユタから離れるつもりはありませんでしたし」


「う”う”、びなざぁーん(皆さん)」


 僕は泣く。


「そろそろ顔を上げなさい、リーダー」


 僕は顔を上げると、2人は満面の笑顔だった。


「ずえながぐおねがいじまず!(末永くお願いします)」


「「こちらこそ」」


 その時、窓から光が見え、大きな音が聞こえる。

 花火があがったようだ。

 アルトが窓を開け、空を見上げる。


「ここからでも花火、見れそうですね」


 レナも隣に立ち。


「馬鹿は動けなさそうだし、ここで花火鑑賞でもしましょうか」


 そう言い、お菓子や飲み物をとってくる2人。


 腹に響く重低音、夏の夜空に大輪が咲く。


 僕達は憑き物が落ちたように、いつもと変わらず笑っていた。


 花火はもうすぐ終わるだろう。

 けど、僕達の関係は終わらない。


 そうであって欲しいと、最後の花火に願った。

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