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第1話 穏やかに生きたい

作者は浅学である為、歴史に関することで誤り等があると思います。修正させて頂きますので、その都度ご指摘頂けるとありがたいです。


ー数時間後ー


「はあーっおわったー!」


「お疲れ様です」


書類作業がやっと終わると、そう康久は労ってくれた。

生徒会室には今は私たち2人しかいない。

桃吉は既に終わった康久と桃吉2人分の書類を先生に提出しに行っている。

‥‥ちなみに桃吉がなぜ二人分提出しに行っているかというと、ババ抜きで激戦を繰り広げた結果である。ネチネチと繰り広げられた心理戦に、桃吉が負けた形である。


「結構大変でしたよね‥」


彼の疲れた表情にはははと笑う。


「いやいや。大変なのはこれからだぞ。生徒票を得なきゃだからな」


ポスターを張ったり、アピールをしたり。演説もしなければならない。


「本格的ですね」


「ああ、そうだな。あと、応援演説も頼まなければならないな‥‥」


そこなのだ。生徒会選挙戦にて、重要な立候補者当人による演説。それに加えて、別人物に応援演説を頼まなければならないのだ。


「それにしても、悪いな。私が終わるまで付き合わせてしまって」


生徒会室の窓の外を見てみると、もう夕日が沈みかけている。

申し訳なさから、そう言うと、彼は答える。


「いえ。僕が勝手に待ってるだけなので」


にこやかに微笑む彼に思わず苦笑してしまう。

こんなふうに言われたら、普通の女子はときめいてしまうのだろう。これでは、ファンクラブが出来るのも無理はない。

前世を知っている私だから大丈夫なものの。


「それに、撫子さんを一人で帰らす訳にはいかないでしょう?」


「‥‥」


こちらを覗き込み、そう爽やかに彼は言う。

前世を知ってる分だけ、なんていうか、うん。


お前は、いつから少女漫画のヒーローにでもなったのか、となんとも言えない気分になる。


「あっずるーい!のぶちゃんは俺が家まで送ってくつもりなのに!」


そんな微妙な空気感になってしまった中、いいのか悪いのか分からないタイミングで桃吉がもどってきた。


「俺が、のぶちゃんを無事に送り届けまーす」


そう言って、後ろから抱きついてくる。


うん。私はツッコミたい。

お前は、いつから乙女ゲームの攻略対象にでもなったのか、と‥‥


そう、私が微妙な気持ちになっている間にも二人はポンポンと言い合いを続ける。


「僕が先に送り届けると言いましたが?」


「そもそも俺の家とのぶちゃんの家近いんでーす。残念でしたー」


「だから余計不安なんですよ。桃吉先輩何するか分からないですし」


「はあ?なにそれ自分は紳士だって言いたいの?前世、本能寺の変の後一番最初に駆け付けたのは誰でしたっけー?」


「あれは!出先で武装してなかったから、仕方ないじゃないですか!‥それを言ったら先輩だって信長様を助けられなかったじゃないですか!」


「うーわー。ないわー。前世のこと言い出すとかないわー」


「先輩が先に引き合いに出したんでしょう」


「あのさ」


流石に二人の言い合いにも付き合いきれなくなった私はやっと止めに入った。

すると、二人は静かになってこちらを見る。


「悪いけど、私一人で帰れるから大丈夫だぞ」


「いや、でももう暗いですし危ないですよ」


「そーだよ!不審者とか夜盗とかいたらとーすんの!」


「いや、夜盗は流石にいないと思うが‥‥そもそもそんなもの私は一人で倒せるぞ」


私が堂々とそう言った瞬間、2人の目は途端に虚ろになった。


「ああ‥‥見える。体格差をものともせずに相手を倒すのぶちゃんの姿が‥‥」


「倒すっていうより、力の差ありすぎて不審者死んでしまいそうですよ」


「やばいよ!どうすんのさ!」


「やっぱり送ってた方がいいですよ‥‥何かあった時、不審者を無事に逃がせるように」


「じゃあ、不審者を逃す人と、のぶちゃんをくい止める人2人いた方がいいよね!よし、3人で帰ろう!」


「異論はありません」


と、なんだか訳の分からない結論をつけて、最終的に3人で帰ることになった。


まあ私的にはどちらでも良かったので、2人に従って、3人で帰ることにした。


いそいそと帰り支度をしていたのだが、桃吉が何かを思い出すかのように叫ぶ。


「ああっわすれてた!」


「は?なにを?」


「明日、のぶちゃんのクラスに転入生が来るんだって」


職員室で聞いた、とそう言う桃吉の言葉に驚く。


「すごいですね。ここの学校、偏差値高いので、編入試験はかなり難しいはずですよ」


康久の言葉に頷く。


「のぶちゃん毎回テスト1位だけど、次は危ないかもねえ」


ニヤニヤと桃吉がからかうが、鼻で笑う。


「そんなもの捻り潰してやる」


「だーかーらーそう言う言い方は‥‥まあ、いいや。転入生、どういう人か見たい?」


ひらひらと茶色い封筒を掲げる。

すごい得意げな表情で、笑っている。


「職員室でもらってきたんだ、生徒情報。せっかくだから、一足早く見ておこうよ」


「お前。それどうやって手に入れたんだ‥‥」

桃吉の表情に頭痛を覚えながら聞くと、言葉を濁してきた。


「ま、そんなことどうでもいいじゃん、見よ」


と、言ったそばから封筒を開け出す。一応それ個人情報のはずだが。

はあーとため息をつくと、隣で康久は苦笑していた。

ここまできたら、仕方ない。

転校生が気になるというのも事実だ。



「ほら、先に見ちゃうよ。名前は‥‥」


その時、だった。


その瞬間、衝撃と恐怖が入り混じったような表情が桃吉の顔に走る。


彼のこんな顔は久しぶりで、とても驚く。


「どうしたんですか」


そう言いながら、康久がその紙を桃吉から受け取り、私と共に見る。


驚いた、どころではない。


私の中に戦慄が走り、恐怖のようなものが体中を駆け巡る。


それは康久も同じようで、桃吉もそうだった。



まず、見えたのは顔。


見た途端に違和感を覚えた。

そして私達は、彼の名前を見て確信に至る。


思い出されるのは、燃え盛る火。私を燃やし尽くした業火‥‥



転入生の名前は、明智桜秀。

そして前世、本能寺で私に謀反を起こした部下は明智光秀。

恐らく、いや確実に彼は光秀の生まれ変わりだ。

私は本当に、穏やかに生きられない宿命に生まれているらしい。


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