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父様の許可も下りたのでマルスと護衛選びに励んでいる。
でも護衛ってどうやって選ぶんだろう。
前は父様が選んでくれた人だったからなぁ。
強い人はもちろんだけど、身軽な人も欲しいし、頭脳面で秀でた人もいいなぁ…うーん。
「姫様、もしよろしければ護衛を育てるための訓練学校に直接足を運ばれてみるのもよろしいかもしれませんね」
訓練学校?
え、そんなものあるんだっ。
びっくりだよ。
「マルスぜひ行ってみたいです!」
そんなこんなで今はその訓練学校とやらに来ている。
なんか今時だよねぇ、護衛になるためだけの人材を集めて育てるなんてさ。
ここには家族の次男とかもいるらしい。
ま、家にいても爵位継がないとなるといい就職先欲しいよね。
「マルス、少しお願いがあるんだけど…」
マルスを目を見開いた後少し考え、「仰せのままに」とやらやれと言った感じで了承してくれた。
そんなこんなで今は姫の(私の)護衛を選ぶための会場にいる。
一国のの姫の護衛になりたい者や、素質のある者たちが集められている。
「おい、お前!あまりキョロキョロするな下品だな。そんなんで姫様に仕えるとか夢見すぎだろっ」
元気いいなぁ、無駄に筋肉モリモリだし。
てか下品でなんだよ下品て、そんなんで悪かったな私が姫なんですけどねっ、今ショートのヅラかぶってメガネかけてるからわからないかもだけどっ。
何を隠そう私も男の子として受験者に混じっているのだ。
マルス、無理言ってごめんねほんとありがと。
「聞いてんのよチビっ」
かっちーん。
チビはよくないよ、チビは!
よーーし、やったろうやないかぁっ。
言い返そうとした時、私と変わらないくらいの小さな男の子が割り込んできた。
「ねぇ、僕もチビなんだけどさ。それってなんか問題あるの?え?もしかして身長制限なんてあったっけ?」
ケラケラ笑いながら黄色い髪を揺らすその男の子。
っ!!!
さっきまで私の横にいたその男の子は、一瞬で私の目の前の筋肉モリモリの肩に乗りナイフを首に当てている。
「よっわ。まじかよ殺る価値もねぇわ」
さっきまでの陽気さを感じさせない雰囲気。
身軽さと素早い動きでからの右に出る者はいないでしょうね。
…それにしても口悪いわね。
私はスタスタ近づいてその男の子の耳を引っ張る。
「こーーらっ、やり過ぎだからっ。ほら降りてっ」
私はグイッとさらに引っ張る。
「へ?あれ?いててててててっ!俺君のこと助けたんだよね?これおかしくない⁉︎」
助けた?
なんだ暇つぶしに出てきただけかと思ったけど違うのね。
彼は彼なりの正義のために行った行動、か。
「ふふっ、それは気づかなかったよありがとっ」
黄色い髪の男の子はべーーっと舌を出して人混みに消えて行った。
それにしても多いわね。
とりあえず今いる人数半分くらいは減らしたい。
遠くにいるマルスと目が合うと、小さくうなづいた。
「では、始める前にこのような事に参加させてしまい申し訳ないとのことで姫より感謝の印です。
どうぞ皆様、お召し上がりください」
マルスがそう合図したと同時にたくさんのメアドが料理をずらっと並べる。
各々が料理に手をつけはじめる。
もちろん私もねっ。
さぁ、頑張るとしますか。
私は飲み物を手に色々なグループに会話に混じる。
会話と言ってもたわいのない話ばかりだ。
ふむ、これで全員かな〜ん?
あの人まだだわ。
隅に1人何も口にせずにたたずむ男に声をかける。
「やぁ!こんなところで1人で何してるの?料理も美味しいよ!みんなと食べないの?」
へらっと人好きする顔で話しかけてみた。
「お腹空いてませんので。それに皆さん、毒でも入ってたらどうするんでしょうね」
こいつ…面白いわね。
姫が用意したと言ってる料理にさえ信用しない警戒心の強さ。
でも確かに一理ある。
だって、姫本人の口から進めたわけじゃないもの。
「そっかぁ」
私がそう言って立ち去ろうとした時、その長身の緑の髪を結んだ男は口を開いた。
「怪しいと言ったら君もです。君も私と同じで一口も食べてないのに料理を美味しいと言ったのもそうですし。1人だけーーっ」
男が続けるのを無視して私は喋った。
「ありがと。とっても興味深い時間だった。…ふふっ、視野まで広いとは有望ね」
私は右手を高く上げてパチンと合図をした。