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父様が私に王として接しているのが嫌というほど伝わる。
それは父様が氷の属性であるのも影響しているだろう。
部屋の気温が下がっている。
「あぁ、すまない。怒っているわけではないんだよ。ただ、アナがあまりにも意識の強い瞳で訴えるからなんだか嬉しくてね」
嬉しい?
私はコテンと首を傾げる。
「はははっ、こんな目をする子だったなんて驚いたよ。やっぱりアナも王の血が通ってるねぇ。…それで、どうしていきなり護衛と?」
王の血。
なるほど、私が思っていたより父様は曲者だったみたいね。
まぁそうでなきゃ一国のの主にはなれんわな。
今まではあくまでも父として接していたけど、姫としての私の意見に父様は王として対応してくれているってわけだ。
惚れそうだわ、かっこよすぎ。
「こほんっ、姫である私にいずれ護衛がつくのは当たり前です。けれどなぜ今かと言いますと…裏切られたくないからです」
ここは本心を隠して可愛らしく欲しいからお願い!ではなく正面突破する。
たぶん、噛んだけどその方がいい気がする。
王として対応してくれてるからこそ私も芯を通すべきよね。
私は続ける。
「この国に仕える者ではなく、私に忠誠を誓い生涯私だけを主とする関係を望みます。そのため信頼を持つには時間が掛かると思うのです」
私の話を静かに効き終えた父様は口を開く。
「ふむ。王である私ではなくディアナ、君だけの命に従い裏切ることのない者が欲しいと言うことだね」
私は目を逸らすことなく力強く頷く。
しばらくして父様は執事のマルスに声をかける。
マルスは「かしこまりました」と言い部屋を出て行った。
「いいよ、好きにしなさいアナ。護衛2人でも3人でも好きなだけつけたらいい。マルスにも協力するように言っておいたからまた何かあれば頼ればいい」
ほぉぉぉ。
何人でもOKもらいましたぁっ。
やったわ。
「ありがとう、父様っ」
私嬉しさのあまり父様に飛びついた。
へへっ、やっぱり正直に話してよかったわ。
父様は一瞬驚いた後、ポンポンと撫でてくれた。
「いったいどうしたんだいアナ。今日もいままでの君からは考えられないことばかりだよ。あーぁ、なんていうかいい意味でね」
ぎくっ。
そんなにキャラ崩壊してたかな。
いやあれだけの思いしたら誰だって性格変わるよ。
大人しく言う通りに何もせずに生きる姫だなんてもうまっぴらよ。
「父様、私もう我慢しませんのっ。私は女だけど。でも、兄様を支えたいのです。そのために頑張るって決めたのです!」
父様の手がピタっと止まる。
「父様?」
「ん?あぁそうだ。私はまだ書類の整理が残っているからそろそろ仕事に戻るとするよ。ほらっ、アナも素敵な護衛を見つけてきなさい」
そう言って父様は私の頬にちゅっとキスを落としてドアの外まで抱っこしてくれた。
な、なんなんだ。
いきなりすごい子供扱いされたんだが。
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ディアナを部屋の外まで抱っこで見送ったこの国の王カイドはドアを閉めた後ポツリと言う。
「ふふふっ、てっきり王の座を狙うと言い出すのかと思ったら…兄様を支えたいとはね」
私の子供たちは思っていた以上に面白い子かもしれないな。
まぁ、無駄な争いが起きないな越したことはない。
王になるのは王の器がある者、向いてる者がなるのが1番だ。
そしてそれを支えようとする者がいる。
いい妹を持ったねロイド。
ディアナは私以上の曲者になるよきっと。