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「お待たせしてすみません、父様、母様!ほら、アナも母様だよっ」
父様だ…懐かしい。
またこんな元気な姿の父様と会えるなんて。
父様が微笑む横であの女がこちらに目線をよこした。
「ふふっ、久しいわねロイドにディアナ」
今思えば不思議な点がいっぱいあるわねこれ。
父様は私たち2人を愛称呼びするのにあの女はロイドとディアナと呼ぶ。
まるで自分の子ではないような距離感だ。
はっ、馬鹿らしい。
前の私だったら久々に会えた喜びで母様〜って抱きつきに行ったけどそんなことするはずがない。
「…」
「アナ?」
あぶない。
顔に出しすぎてたわね、慎重に動かないと意味がない。
「ごめんなさい、夢見が悪くてまだぼーっとしてましたのっ」
そっかぁと私の頭を撫でる兄様。
兄様、兄様は何もしなくて良いのです。
心配も不要です。
敵は全て私が排除しますので。
「さぁ、せっかくの料理が覚めてしまう、ロイもアナも席につきなさい。皆で食べよう」
父様がいいところで話を切り替えてくれたので流れにのる。
「?なんだアナ。私の顔ばかり見つめて。私ではなく母様の方が珍しいだろ?ははっ」
私としたことがつい懐かしくて見過ぎてしまった。
てか、母様の顔なんて見たくもないわ。
「いえ、その。父様は今日もかっこいいなぁって思ってましたの」
えへっと10歳らしく笑ってごまかしてみる。
私の横で兄様が僕の僕がかっこいいもんと謎の対抗心を燃やしてる。
ちらりと目線を母様にやると私たち家族の会話など興味もないのだろう、もぐもぐと楽しそうにフレンチトーストを頬張っている。
その後、朝ごはんを終えた私は部屋に戻って今後の作戦会議に熱意を燃やす。
確か、私に専属の護衛がつくのは12歳の誕生日。
遅いな。
あの事件が起こるのが17の時だったから、逆算して5年は短い。
今から雇っても7年か、ギリギリね。
信頼関係を気付くのはもちろんあらゆる技術が必要ね。
あの女狐に対抗するには私1人では無理だもの。
仲間を探さなくては。
私は父様の部屋のドアを開ける。
「父様っ!私護衛が欲しいですっ」
父様が書類から目を上げて私をみる、仕事中だったなこれ。
タイミングミスだ。
「す、すみません。出直しますわ」
とぼとぼと部屋を出ようとした時。
「おいでアナ」
父様は立ち上がってソファの方に腰掛け横に来るように手招きした。
私はトコトコ歩み寄って父様の横に座る。
「アナが私のところに来るなんて珍しくて驚いたよ、ほら詳しく聞こうか」
あちゃーー。
確かに前の私ってこんな扉バーーン父様!って感じじゃなかったわ。
言われたことをやる理想的な可愛らしい姫って感じだったわね。
でもやってしまったものはしょうがない。
幸せな未来を掴む為だもの、父様力を貸してっ。
「お願いです、私今すぐに護衛が欲しいのです。それも1人ではなくせめて2人は欲しいです」
父様はほほぅと面白そうに口角をあげる。
それは父というよりも王の顔だった。