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姫は姫としては能無しです  作者: 吉那 薫
2/5

くるしい、水を飲みこみ過ぎて息ができないっ。

こんなところで死ぬなんてっーーーー


「アナ!アナ、大丈夫かいっ⁉︎ディアナ!」


…兄様の声?よかった、兄様だけは助かったのね。


目を開けて微笑む。


「兄様、無事だったのね。…よかった。ひっく、本当に良かっだぁ」


涙が止まらない。

涙のせいで兄様がよく見えない。


「怖い夢でも見たんだね、かわいそうに」


兄様はそう言って安心させるように私の頬を撫でる。


いやいや、怖い夢って何言ってるの?

あんだけの思いして殺されかけたっていうのに兄様のんきすぎよっ。

つまりは母様を倒したってこと、だよね?


それにしても兄様の手は相変わらずポカポカで暖かい。

まって…どういうことよ。

今私の頬に当てられてるのは右手よね?

兄様は確かにあの時右腕ごと失ったはず。


兄様の手に自分の手を重ねる。

ち、小さいっっっ。

なにこれ、っていうか私の手も小さくない⁉︎


私は自分の顔や体をペタペタ触りながら鏡の前に急ぐ。


どういうこと、水牢にはこんな効果なかったはずよ。

あれは単に水の中に閉じ込めて死ぬまで話さないという残酷でシンプルな術。


いろいろ考えながら鏡の中の自分を見て確信する。

…やっぱり幼くなってるわ。

私を心配そうに見つめている兄もやっぱり幼い。


周りを見渡すと私の部屋も元どおりだ。

襲撃された際に私の執事は確かこのベッドの前で私を庇って死んだはず。

その死体も綺麗に消えている。

血の跡も一切見当たらない。


あの女が私たちをやっぱり生かそうとして…

いいや、ありえない。

自分の子供の命をまるでいらなくなったおもちゃを捨てるようにあの女は私たちに手をかけたんだ。


鏡に手をついて俯きいろいろ考え込んでると後ろから声をかけられる。


「アナ?どうしたんだい?あ!そうだぁ。僕、アナがなかなか起きないから父様も母様も待ってるって呼びにきたんだった」


へへっと可愛らしく笑う兄様。


でもおかしな単語がたくさん聞こえた。


「あの兄様?父様って…それに母様って!待ってるってなにをですか!!!」


兄様はきょとんとした後少し考えた後首を傾げて答えてくれた。


「…朝ごはん?」


は?

はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ⁉︎


「あんなことあった後によく朝ごはん一緒にするとかできますね!それに父様は確か私が15の時に亡くなったはずですよね」


兄様は目を見開いた後少し考える仕草をした。

その後ゆっくり口を開く。


「んー、考えてみたけどやっぱり今日のアナの言ってることは意味がわからないよ。アナが15って今アナは10歳だよね?」


え。

じゅっさい?

なんの冗談です兄様。


「まだやっぱり少し寝ぼけてたみたいだね、ふふ。可愛いアナ」


そう言って兄様は私の前髪をさらっと持ち上げチュとおでこにキスを落とした。


私は未だパクパクと口を開けてるだけだ。

このよく分からない状況と幼い姿の兄様からの甘々攻撃のせいで。


「ほらっ、いくよ!母様朝ごはんご一緒できるなんて滅多にないことなんだからっ。僕でさえ母様に会ったのまだ2回しかないんだよぉ。今日で3回目だっ」


頬を赤らめて笑う兄様はどこからみても12歳の少年だ。

だとしたら、私が10歳ってのも嘘じゃないんだろう。


…そういえば昔一度だけ母様と朝ごはんを一緒に食べた気がする。

確かちょうど10歳の頃だったような。


ってことは、時間が巻き戻ったってこと⁉︎

なにをどうして巻き戻ったかなんて分からないけど、そうとしか思えない。


だったら神様がくれたこのチャンスで私は絶対に未来を変えてやる。

次こそは母様の思い通りなんかにはさせない。

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