第1章 涙
冷たい涙が私の頬を伝っては落ちた。
終わりのない痛み。
途切れることのない涙。
どれだけ泣いたかも、もう分からない。
涙はいつか枯れるというけれど、本当にこの涙は枯れるのだろうか?
もしも涙が雨のように水溜まりを作るなら、とっくに私は溺れているだろう。
私は涙の海に溺れていた。
私は息ができなくて、私はどんどんその深海に引きずられていった。
涙はとても冷たかった。
それは私の心を壊していった。
冷たい海に溺れる。
悲しみの海に溺れる。
私はもう、誰の目にも見えない場所で、ひとりで苦しんでいる。
誰にも気づかれない。
この声は、この叫びは、誰のもとにも届かない。
誰もいない場所で、私は助けを求めていた。
私は自分の部屋だった場所にいた。
私はここで、何時間泣いていたのだろうか。
私はここで、何日過ごしていたのだろうか。
誰にも気づかれないまま。
誰も私のことを見ることができない場所で。
懐かしい香りがした。
私が座っているこのベッドから、微かに妹のキアラの香りがした。
気のせいかもしれない。でも私はそれを確かに感じた。
この部屋は、確かに数日前まで、私の部屋だったのだ。
懐かしい香りが、私にたくさんの思い出をよみがえらせた。
秋が始まったばかりだというのに、とても寒かった。
まるで突然夏が冬に変わったかのようだった。あの日を境に。
そして、外は本当に暗い。今は夜のようだ。
夜は永遠に続くように思え、私はこの静寂の重さに押しつぶされそうだった。
出口の見えない無音のトンネルに突然放り込まれたような感覚だった。
床に座って泣いている自分を見下ろしているような感覚がした。
「大丈夫だよ。私はここにいるよ。」そんな私の声が聞こえた。
その声は私の中で、何度も反響した。
私が死んだのも、肌寒い夜だった。
その日は月明かりさえなく、今にも雨が降りそうだった。
そして、私は夜が来るたびに思い出す。
楽しかった日々を、素晴らしかった思い出を。
そして、何よりも二人で抱きしめあいながら語り合った夜を。
妹はあれから、毎晩一人で泣いている。
私たちがいた、あの部屋で。
私は何もできない。妹はすぐそこにいるのに。
「ただいま」
キアラはいつもそう言って私の部屋に入る。
部屋をノックして、そっと部屋の扉を開ける。
今にも泣きそうな瞳をして。
そして学校の課題を机の上に置いたまま、私たちが毎晩一緒にいたベッドに横になる。
課題は、あの日から進んでいないようだった。
もうじき秋が来る。
もうすぐ新しい学年になるというのに、一日中キアラは布団の中にいる。
食事のときと、愛猫のリナートと遊ぶ時以外は。
冷たい手を握ることも、小さな体を抱きしめることも、ふっくらとした頬にキスをすることも。
誰よりも大切な人なのに、そして、誰よりも守りたかったはずの人なのに。
もしもできるのなら、今すぐにでもその震える肩を抱きしめて、こう言いたかった。
「どんなに離れていても、私はここにいるよ。私はここにいるからね……。」
もしも私の祈りが届くならば、私はキアラの涙を止めてあげたい。
そして、もう一度彼女が笑える日を、私が作りたい。
私が隣にいられたら、どんなにいいのかと、私はこの部屋で毎日のように思う。
妹も部屋を持っていたが、まだ幼かったし、何よりも寂しがりだったから、私たちはずっと一緒にいた。
妹の部屋は物置になっていて、部屋はがらんとしていた。
だから私たちは同じ部屋で、同じベッドで寝ていた。
毎晩、私は妹に素敵な話をしていた。
王子様が貧しい少女を幸せにする話とか、兄弟で空を飛んだ人の話とか。
「私にもあんな王子様が現れないかな」そんなことを妹が言ったある日には、私は「きっと素敵な人が現れるよ!でも、いい子にしてなきゃだめだよ」と言っていた。
私が学校で読んだ本の内容を少しだけアレンジして、妹の寝息が聞こえるまで私は物語を語っていた。