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三人寄れば、喧しい

「見つけたわよ!」


 射撃訓練場の扉を開け放ち、大声を出して青い髪を靡かせながら近づいてくる生徒。

 その女生徒を見た天城は、


「おい、ノブお前なんかあの子怒らせたか?」

「ブツブツ・・・んあ?なんだ?」

「いや、何でもない。怒られてこい。」

「え?なんで?誰に怒られんの?」

「俺は知らねーよ」

「何言ってんだ?」


 天城と高杉は言い合ってる中、彼女はずんずんと2人との距離を詰めてくる。

 そして2人の目の前に仁王立ちする。天城も高杉も身に覚えがないが、相当ご機嫌斜めなことは見て取れたので、お互いに「ああ、こいつが何かやらかしたか」と考えている。


「どうしてくれるのよ!」

「早く謝れよノブ。」

「あんまり女子を怒らせるなよ、ナオト。」

「ん?」

「え?」


 お互いに非を認めろ、という言葉を聞き不思議な顔をする2人。

 そんな態度がお気に召さなかったのか、さらに表情を険しくする目の前の女生徒。


「おいおい!なんかすごく怒ってるぞ!?ノブ!どうせお前だろ!?」

「どうせってなんだ!だいたいトラブル起こすのは決まってナオトの方だろ!?」

「女子に関してはお前だ!この間女子に悪態吐かれた上にビンタまでくらってたじゃねぇか!」

「み、見てたのかよ!?あれはお前あいつが悪くてほらそのアレで!」

「わかるかっ!やっぱお前だろ!」

「2人ともよ!!特にそっちの三白眼!」

「んだと青馬!どうせそっちの勘違いだろ!?この乾麺が原因だろ!」

「誰が乾麺だ!ぶん殴るぞっ!?」

「誰が青馬よ!?これはポニーテールよ!女の子に対して失礼でしょ!」


 3人揃ってギャーギャーと喚き散らす。ここが人の多い場所なら苦情の1つでも来そうだが、幸いにしてここにはこの3人しかいない。

 そして、最早ただの罵り合いになっていったが、それなりに時間も経ち、息が切れつつある頃、天城と高杉はそもそもなんで彼女がここまで怒ってるのかを問いただすことにした。


「で?なんでそんに怒ってるの?」


 問いただす役は高杉だ。

 高杉は女性に甘い。ならばこそ適材適所ということで、天城は高杉にその役を譲り、自分は傍観者になろうと一歩後ろに下がろうとするが、高杉に手を掴まれ、隣に立つ。


「(可愛い女の子と話せるんだ!役得だろうが!)」

「(お前だけ逃げようなんてそんな虫のいい話ある訳無いだろ!)」


 互いに言葉に出さず、目だけで全てを雄弁に語っていた。

 そんな様子を見ながら未だ不機嫌なままの彼女はゆっくりと喋りだす。


「・・・そうだな。少し冷静でなかったようだ。すまなかった。」

「え?少し?ほ~ん?」

 その言葉に早速茶々をいれた天城は、彼女に睨まれ、高杉からは鋭すぎる肘鉄をくらい、その場に蹲ることになる。


「えっと・・・。冷静でなかった。ってことは、その話し方が君の素ってことだよね?」

「・・・そう・・だ。私は、少し話し方が硬いが、多めに見てくれるとありがたい。」

「うん、まぁそれはいいんだけど、理由は話してくれる?っていうか自己紹介もまだだったね。」


 天城と話す時と比べ、随分穏やかな声で話しかける高杉。

 そして、自己紹介もまだと言われハッとしたような顔になり、少し落ち込んだ雰囲気を出しながら、落ち着いた様子で言葉を出す女生徒。


「すまなかった。自己紹介が遅れたな。私は神崎。神崎結華(かんざきゆいか)だ。」

「俺は高杉忍。で、こっちの芋虫みたいなのが、天城直人(ゴミ虫)だ。」

「ノブ・・・、てめぇ・・・。」

「そうか。よろしく頼む高杉くん。ゴミ虫くん。」

「受け入れんなぁ!天城直人だ!」


 天城は、立ち上がり抗議の声を上げる。だが、高杉と神崎の2人は天城を無視することに決めたようだ。


「自己紹介も終わったし、なんで怒ってたのか教えてもらっていいかい?」

「・・・そうだな。それはだな・・・私はこの学園の戦闘科(アサルト)於いて優秀な成績を収めている。」

「「は?」」


 唐突な自慢話に2人は間抜けな声を出す。


「そこでだな、優秀な私は威厳が欲しいのさ。誰が見ても憧れるような存在になりたい。だからこそ、普段の生活から、授業中なども品行方正であるよう心がけているし、実際多くの人には尊敬の念で見られていると思う。優秀で隙も無く、冷静な女性だと。」


 語られる内容を2人は呆然としながらも聞いている。


「だが、そんな私が今日、食堂であろう事か、その・・・大笑いをしてしまった。そのせいで見ていた生徒からは私の威厳は無くなっただろう。昼休みを終えてからも。腹を抱えて大爆笑していた、と噂が立つくらいにはな。だからこそ、私の威厳を無くした原因である君たちを怒鳴りつけた、ということだ。」


 そう言って話は締めくくられた。語られた内容に2人は無言。顔を俯かせ思案顔だ。


「解ってくれたか?」


 彼女の問いに2人は顔を上げ、大きく息を吸い込み、吐く。そして2人同時に声を上げる。


「「くっだらねぇ・・・」」


 そんな理由で怒られては堪らない。2人は彼女の評価を『優秀な生徒』ではなく『アホの子』として認識した。















続きは明日。

誤字・脱字は気をつけてますが、あれば報告お願いします。


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