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動き出す非日常

鳴り響いた警報に戸惑いを隠せない3人。それもその筈、この警報が鳴るのは相当な非常事態であることを示すからだ。


「ゲートが出現するのか!?」

「嘘だろ!?この都市には結界があるはずだろ!?」

「言ってる場合じゃないわよ!すぐに避難所に向かいなさい!」


本来であるならば、結界内に代行者(オルタナ)が出現することはない。仮にあったとしても、それは都市部以外に既に存在している、又は出現した代行者(オルタナ)が、人を食料にするため結界を破壊するため外からの侵入となる。

だが、この警報は都市部に代行者(オルタナ)が出現するゲートが現れることを示す、普通ではありえない状況だった。


「早く避難しなさい!私は指示を受けるために一回集まらなきゃ・・・!」


代行者(オルタナ)が出現したのなら、戦える者たちは命令を受けるために、決まった場所に集まる手はずとなっている。それを無視すれば命令違反となり厳重な処罰を受ける。

もとより戦闘科(アサルト)と言ってもまだ生徒の身だ。実戦経験もなく、対処方法もまだ知らない。なので、神崎はそのためにその場に向かおうとするが、


「待て!青鳥!それよりも避難を優先させろ!」

「あなたたちを守れってこと!?ここからなら学区内に逃げ込みなさいよ!?」

「違う!この街の一般市民だ!こんな緊急事態にパニックを起こさないわけがないだろう!?」

「ナオトの言うとおりだ。まず俺たちは冷静になるべきだろ?ゲートが出現するからってすぐって訳じゃない。だったら人命優先で動くべきだ。その為に俺たちは色々学んでんだろ?」

「!?」


緊急事態であっても天城と高杉は幾分冷静だった。天城は元より人を見捨てるつもりは一切なく、高杉も突然の事態に焦りはしたが、時間があるなら今できることを優先すべきと声に出す。

実際ゲートが出現する。といっても警報からすぐ、という訳ではない。正確に何分などというのは分からないが、ある程度の猶予は有るはずだからこその2人の提案だ。

しかし、彼らほど冷静になることは出来なかったのか、それとも戦闘科(アサルト)の優等生としての矜持なのか、神崎はその言葉に難を示す。


「避難誘導ならあなたたちでも出来るでしょ!?私はアサルトよ!?代行者(オルタナ)と戦うための指示を受けに行かなきゃ行けないのよ!」

「・・・ダメだ。」

「何でよ!?」

「俺たちじゃ、説得力が無いんだよ。お前じゃなきゃ皆を安心させてやることが出来ない。」


天城は苦々しく言葉を絞り出す。

天城の言うことは尤もだった。代行者(オルタナ)の脅威に怯える人たちが戦える通りはない。そこに同じく戦えない高杉や、戦う力を身に着けようともがいているが、現状有効な手立てを持ってない天城が行ったところで、市民を安心させてのスムーズな誘導は行えないだろうし、少しでも避難が遅れれば被害はその分拡大する。

そんな、自分の無力さを実感させる言葉を、身を切るような思いで口にした天城に流石の神崎も言葉を失う。


「お前が戦うだけで良いってんなら、構わない。優秀でルールを守るってことも。でも、それでも頼む。俺は見捨てたくないんだ、力を貸してくれ。この通りだ。」


そう言って頭を下げる天城。

神崎は天城の行動に非常事態であるのは理解しつつも驚きを隠せない。

はっきり言えば神崎は天城を良く思ってない。何か言えばすぐ言い返し、人を煽るような真似ばかりをする嫌な奴だと認識していた。

だが、この目の前の人物は、さっきまで言い争いをしていた人と同一人物だとは思えない程真摯に自分に頼み込んでいる。


「俺からも頼むよ。こいつ口悪いし、頭も悪いかもだけど、気持ちだけは本物だし、その為の努力もしてんだよ。」


そして、高杉も真面目な顔で頼み込む。

高杉の言葉で、より一層天城が本当に自分が思っていたような人物か分からず神崎は混乱する。

だが、時間は待ってはくれない。そのため神崎は天城の言葉を反芻する。


―戦うだけでいいなら―


そんな訳がない。誰かを守ることもせず戦うだけなら、そんなものは代行者(オルタナ)と変わらない。なので神崎は決断を下す。


「~~~っ!わかったわよ!その代わり命令違反で怒られたら責任とってくれるわよね!?」

「すまねぇ。飯でも奢るよ、ありがとな。」


そう言って笑う天城はどこかホッとしたような顔だ。

もしかしたら私は、戦うことしか考えてない思われていたかもしれないな、と思いながらも命令違反を行わせようとしながら侘びがご飯を奢るだけってどうだろうか?と考える。


「なら、俺もご相伴に与ろうかな?天城の飯うめーしな。」

「お前は関係なくね?」

「日頃の恩を返すのは悪いことじゃ無いと思うぜ?」

「・・・恩義なんてあったか?」

「銃とか作ってやってんだろ!?」

「冗談だよ。1人分も2人分もそう変わんないしな。」


そう言って笑い合う2人を見てると、神崎も強ばった顔を少し緩ませる。

非常事態だというにも関わらず下らないやり取りを交わす2人を見てると、自分が思いのほか緊張していたことを自覚する。


「おっ。少し緩んだみたいだな。なら行くか。時間も有り余ってる訳じゃないしな。」


天城は銃を装備しながら、神崎に声を掛ける。

見透かされていたことに恥ずかしさを覚える神崎だったが、流石に言い合うつもりはないのか言葉を返しはしなかったが、しっかりと首を縦に振る。


そして彼らは激震の街を進み出す。彼らにとって初めての実戦に向けて。


続きは明日。

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