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勇者の紋章  作者: 斎藤雨
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勇者になれなかった者たち

「は?」

今、なんて言った?

単刀直入に?というには前置きが長すぎる気もしたが。


「勇者、って?俺が?」

「うん、まあ、そういう反応になるよね、普通。寧ろ、二つ返事で了承されてたら、君の正気を疑っていたよ....」

良かった、どうやら正しい反応だったみたいだ。


「そうだねぇ、一体どこから説明したものかな?」

「すみません、説明して頂けるのは大変ありがたいのですが、そろそろこの拘束を外してもらえませんか?」

流石にずっとこのままはきつい。


「残念だけど、それはできないね。話が終わるまで、君をここから出すわけにはいかないよ。」

やっぱり、ここから出ることは叶わないのか...


改めて監禁部屋を見回す。

窓は無く、ドアが一つだけの、閉鎖的な部屋だった。

そして、その一つしかない外へと通じる道も、この花菱さんの真後ろにあった。

隙を見て逃げ出すのは、どうやら難しそうだ。


くそっ!

やっぱりあのサングラスの人を怪しいと思った時点で逃げ出すべきだった!

第一印象の9割は見た目で決まるという。

人を見た目で判断することも、時には重要なのだった。


「じゃあ話を始めるけど、何から話したらいいかな?」

「この状況について納得いくようなら、何でも結構ですよ...」

「そうだね、君は30年前の魔界侵攻については知っているかな?」

「はい。あの、魔王が攻めてきたっていう?」

30年前、この世界に魔王が攻めてきた。

現在に至るまで語り継がれている、歴史上最も大きな事件だ。


「結局、攻めてきた理由や原因めいたものは分からなかったけどね。魔王はこの世界を滅ぼそうとしていた。」

「それが一体なんだっていうんですか?魔王は倒されたし、もう終わった話でしょう?」

そう、魔王はもう倒されたのだ。


「確かに、世界各地から集まった英雄たちによって魔王はもう倒された。ゲートは閉じて戦争は終わった。ということになっている。表の歴史ではね。」

「?」

話が見えない。


「失敗だったんだよ、魔王討伐は。」

「はあ!?」

失敗?


「じゃあ、今も魔王は生きてるってことですか?」

「いや、失敗したのは魔王を倒すことにじゃない。人選だよ。」

人選、魔王を倒した英雄たちの?


「彼らに何か問題があったんですか?」

「うん、彼らは魔王を倒せる者たちではなかったんだ。実力が足りなかったということではないよ?ただ、彼らは選ばれなかったんだ。」

「選ばれなかったって、何に?」

「...『勇者』に。」


勇者、さっきから使われている表現だ。

俺の想像している勇者は、RPGに出てくるあれだ。

それに選ばれなかったとは、どういう意味だろうか?


「確かに彼らは英雄と呼ばれるだけの力を持っていた。しかし、魔王を滅ぼすことが出来るのは選ばれた勇者だけだった。結果、彼らは失敗した。」

「失敗したって、具体的にはどうなったんです?」

「具体的には、魔王を滅ぼすことができなかった。それどころか、魔王からの呪いを返されたんだ。」

「その、呪いっていうのは?呪われた人たちは大丈夫だったのか?」

「今も生きてる人を何人か知っているけど、呪いについてはよく分からない。他の人たちも同様だ。」

魔王の呪いって、言葉的にヤバそうな臭いがする...


しかし、ここで疑問が生じた。

「あれ?さっきと言ってることが違いませんか?」

さっきは言っていた、魔王は倒されたと。


「そうだね、魔王は倒された。それは事実だ。でも、それは制限時間付きだったんだよ。」

制限時間、何の?とは聞かない。

ようやく察してきた。


「魔王は10年の眠りの後に復活する。そして、もうすぐその10年だ。」

魔王が復活すれば、再び戦いが始まる。

そして、今度は本当に終わらせるために、勇者の力が必要だ。


「改めて、今度は君に問おう。私たちのために、勇者になってくれないか?」

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