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勇者の紋章  作者: 斎藤雨
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彼の家庭事情

小坂と別れた後、スーパーで今日の夕飯の材料を買って家に帰ってきた。

結局、小坂の問いに対する答えは、俺の中でも曖昧なままだ。

自分が一体どうなりたいのか、何がしたいのかもわからない。

ただ流されるままに日々を送るだけで、自分から進んで何かをしようとしない。

自発的に行動を起こしたのなんて、卒業式の「あれ」くらいだろう。


それすら失敗に終わったのだから、本当にどうしようもない。

俺は一体何がしたいのだろうか?

と、夕飯を作りながら考えている所に、妹が帰ってきた。


「ただいまー!」

「お帰り。夕飯もうすぐ出来るから、手を洗って待ってろ」

「はーい!」


現在、この家に両親はおらず、妹の(あゆむ)と二人で暮らしている。

幼いころに母を亡くし、父は仕事で世界中を飛び回っているらしい。

滅多に家に帰ってこない父は、帰ってくる度に変なお土産を置いていくばかりだ。

おかげで物置の中がカオスになってしまった。


「高校には慣れたか、兄ちゃん?」

「まあ、何とかやれてるよ。お前の方はどうなんだ?2年生になっても気は抜けないぞ。」

「大丈夫だよ!ちゃんと良い先輩になってるから!」

「本当かな?」

「本当だよ!今日だって1年生の子に告られちゃったし!」

まだ1ヶ月しか経っていないというのに、もうそんな事になっているとは…


「で?何て返事したんだ?」

「断ったよ、可愛い女の子だった!」

まあ、予想通りだった。


この妹の顔は同性に好かれやすい。

有体に言うとイケメンなのだった。

弟に間違えられることも多く、女子から交際を申し込まれることも少なくない。

よって、この答えも分かりきっていた。


「泣かせた女は数知れずだねっ!」

「お前が言うと冗談にならないな...」


食事を終えて、居間で寛いでいるところに声を掛けられた。

「そういえば、帰ってくる途中で瑞希ちゃんに会ったよ」

「...そうか」

「帰り遅いよね?何か部活とかやってんのかな?」

「...さあ」

「どうかしたの?何だか返事が淡泊だよ?」

「...どうもしてない、よ?」

危ない危ない、こいつは俺に関するあれやこれやを知らないのだった。

上手く話題を逸らさなければ。


「か、帰りが遅いのはお前もだろ?」

「私は仕方ないよ、二駅離れてるんだから」


そうだった、歩の通っている中学校はここから二駅離れている。

その距離を徒歩で通学しているのだ。

なぜ電車で通学しないのか理由を聞くと、「お年寄りに席を譲らないような若者に対する怒りを抑えられず、そのまま喧嘩になってしまうから」らしい。

正直よくわからない理由だ。


「電車じゃなくても、せめて自転車を使えばいいのに...」

「いや、自転車とか乗れないし!」

「え!?お前自転車乗れなかったの?」

知らなかった。

そういえば乗っている所を見たことが無い。


「そもそも、あんな不安定な乗り物が存在すること自体どうかしてるよ!」

言うほど不安定な乗り物でもないけどな。


「人間は地に足を付けて生きるべきだと思う!」

「意味は伝わるけどな...」

そういう意味で使う言葉じゃないだろ、それ。


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