雑談
放課後、長かった授業が終わり、魂の呪縛から解放されたかのような晴れやかな気分だ。
たとえヤンキーなスタイルに身を包んだところで、中身が変わることはない。
授業にはきちんと出席するし、宿題だってやるし、家に帰れば両親不在の家で家事をこなさなければならない。
真面目な良い子なのだった。
そんなわけで、学校が終われば一人でまっすぐ家に帰る。
それを一カ月続けてきたので、久しぶりに誰かと一緒に帰ることになると、何を話したらいいのか分からない。
「何でお前一人なんだ?長沼はどうした?」
「長沼は部活で一緒に帰れないってさ。」
こういう時、間を持たせるのはあいつの役目なのだ。
正直、一人で帰った方が気が楽だった。
「部活って、何部に入ったんだ?」
「バスケ部だって。先輩からずっと勧誘されてたよ。」
なるほど、あいつの体格なら納得だ。
「で?今日はどうしたんだよ?」
理由もなく一緒に帰るようなことはないだろう。
中学時代はよく三人で帰っていたが、現在の俺は一人だ。
この一カ月間、一緒に帰ることを避けていた。
何か話があると考えるのが自然だ。
「いや、別に大した用もないんだけど.....」
「.....。」
また間が出来てしまった。
何なんだ一体。
用が無いなら一人で帰りたいのだが.....
「いや、お前高校に上がってからずっと元気ないから...
その金髪も似合ってないし。」
「ほっとけ!」
余計なお世話だ。
正直俺も今の自分に無理があるとは思っている。
それでも、この現状を変える方法が、俺には分からない。
だからいつも一人なのだ。
「せめて恰好だけでも元に戻せよ。今よりはマシになるかもしれないぜ?」
「別に、困ってないし.....」
「意地張るなよ...」
「...意地とかじゃねーよ」
そう、断じて違う。
強がってなんかいない。
「長沼も部活始めたし、そもそもクラスが違うからな」
「別に、一人だって問題ないだろ....」
クラスで話す相手がいないだけだ。
何の問題もない。
「でも、お前はこのままじゃいけないって思ってるんだろ?」
「.....」
反論することが出来ない。
確かに、俺は現状に不安を抱えている。
「お前は一体どうなりたいんだ?」
その後、俺が口を開くことはなかった。
小坂も俺の気持ちを察してか、何も言っては来なかった。
やっぱり一人で帰ればよかった。
そうすれば、こんなことを考える必要もなかったのに。