約束した事
「成績が下がっている……」
「…………」
静かな鋭い声が御影の耳に聞こえてきた。
「最近は勉学に身が入っていないようだな。」
「…………」
御影はただ、黙っていることしかできなかった。
「学校でお前に何があるかは知らないが、このままで良いとはいませないぞ……」
「はい……」
御影は自分の父親に口答えがしたことがなく、ただ言われるがままにしてきた。
「あなた、御影さんだって色々あるのよ」
「お前には関係のない事だろう」
「関係がないって……!」
父親と使用人の言い合いはいつもの事であるが、昔は言い合いなどなく、明るい家庭だった
「御影、お前はもう部屋に戻れ」
「はい……」
御影は父親に言われ、広間の扉を閉めた瞬間に言い合いは始まった。
「御影には冬休みの初めの一週間は勉学にしてもらう。家庭教師も付けて、成績が下がってた部分の底上げをする。」
「最初の一週間はクリスマスが入ってますよ! 御影さんだって、ご友人との予定だって……!」
いつも大きな声で言い合っているから、当然この言い合いも御影の耳に届いている。
「唯……」
御影は一人縁側から雪が降る空を見上げ一人呟いた。
「あなたはいつも、いつも、成績にこだわりって御影さんのい事を考えないで!」
「他人のお前に、御影の何がわかる?」
「わたくしは御影さんが小さい時からっ……!!」
声のトーンが一つ下がり、冷たい目線で言い放つ。
「なら、言い方を変えよう……血のつながりの無いお前に……」
「っ……!」
御影の母は御影が小さい時に交通事故で他界してしまった。その時から御影の父親は変わってしまった。勉強にうるさくなり、人に冷たくなってしまった。
「あいつさえ、いれば……」
その時の父親の顔はどこか寂しいような顔をしていた。
御影は唯にこの事を伝えるか悩んでいた。唯にクリスマスに予定が入るかもしれないことを伝えておけば、もしも予定が入ってしまった場合でもなんとかなると思っていた。
「唯……クリスマスに用事入りそう」
『どうしたの?御影』
「成績が下がって……」
『またその話?正直に言えばいいのに』
「ボクには、そんなことできないよ……」
『わたしが何とかしようか?』
「それは、唯に悪いから……」
『うん。わかった。でも、御影も無理しちゃだめだよ』
「ありがとう。唯……」
『気にしないで』
唯の事を伝えて、御影は内心、安心していた。
唯は御影からの事を受けて、一人考えていた。
「御影は、それでいいのかな?わたしが御影のお父さんに言いに行っても……許してもらえるかわからないけど、行かないで後悔するより、行ってから後悔しよう!」
唯は明るく、前向きに考えていた。
『明日行くね』それだけ御影に伝えて、唯は一人寝ることにした。
クリスマスまであと2日――
多分、読んでる人いないと思いますけど、読んでいただきありがとうございます。
多分、続きます。