第2話 出陣前編
私立の受験でなかなか終わりませんでした。
しかし、無事に私立受かったので良かったです。
6月6日。
アルバート率いる、約4万5千の兵士たちが西群に目掛けて進軍していった。兵糧などの準備は前日にやっておいたので、慌てることなく終えることができた。
「しかし、西群に出征するのか。アルバート大将軍はまんまと引っかかったな。まあ、知略の値低かったしな。」
ルイはボソッとつぶやく。ルイの目は見た人の能力を数値化しデータ化してくれる素敵な能力を持つ。ちなみにアルバートの知略の値は35だ。しかし、武勇は105もあるので、武勇だけで大将軍に上り詰めたある意味凄い人だ。
「さて、陛下は誰を北西群に送り込むのかな?」
ルイはボソッとつぶやき立ち去った。
6月13日
アルバートが率いた4万5千の兵士たちは、西軍でウルク王国3万と戦っていた。西群では最大の砦、バビロンの砦に立てこもり、防衛ラインを死守していた。しかし、ルイが危惧していたことがついに始まろうとしていた。
「伝令!北西群にウルク王国軍1万が進軍してきました!あと2日で北西群に到着予定です!」
伝令は門番の前で叫ぶと、失礼したといい戻って行った。そして、場内は騒然となった。
伝令が来てから大体2時間後、主だったもので緊急の会議が行われた。
「陛下。どういたしますか?このままでは、北西群が危ないです。」
「案ずるなヘンリー。何のためにアルバートに5千の兵を残させたと思っている。もう、派遣する人物は決まっておる。」
「それは誰ですか?」
「ルイだ。」
カルロは短く答えた。
「あの食糧庫長官ですか。あんな奴が役に立ちますか。」
「大丈夫だろう。なんせ、北西群が襲われることを予測していたのだからな。」
その場にいた全員の顔が驚愕に染まる。
「ヘンリー。ルイはそなたの代わりになるかもしれんな。それともアルバートかな。」
カルロは悪い笑みを浮かべながら、そう言った。
会議が終わってすぐ、ルイはカルロに呼び出されていた。ルイがカルロの執務室へ入る。
「ルイ・アルファード。ただいま参上いたしました。」
ルイが一礼して入ってくる。
「おう、来たか。早速だが5千人分の食糧と5千人の命を預かる覚悟はあるか?」
カルロはいきなり核心を言い放つ。ルイは表情を強張らせていた。
「それは僕に北西群へ援軍へ行けと、おっしゃっているのですか。」
ルイは沈痛な表情で問いかける。
「当たり前だ。他に誰がいると思ってるんだ。近衛隊隊長のアレンは動かせんし、もとより適任がまずお前ぐらいしかいないんだ。さっさと行け。お前みたいに能力が高い奴はもうそうそういないんだよ。」
「・・・・・・分かりました。やってみます。それでは、北西群の地図を貸してくださいませんか?」
「おう、それくらい貸してやるさ。あっ、そうだ。副官一人つけていいぞ。誰にするか勝手に決めろ。」
カルロはそう言うと、自分の仕事へ戻っていった。
6月14日
ルイは副官選びに悩んでいた。なぜなら適役が早々見つからないのだ。しかも彼が(勝手に)決めた条件が厳しぎるのも原因の一つだった。
1、知略が80以上であること
2、統率が80以上であること
3、遠距離攻撃ができること
この3つだった。この3つが達成できている人なんてこの国の重鎮くらいしかいなかった。
「さて、どうするか・・・。俺が率いる群の中に適任がいるかな?少し視察するか。」
出陣は明後日までにすればいいので、まだ少し時間があった。
彼が率いることになっている軍は、第8師団の半分だった。もう片方は王都の防衛のなっていた。
「さあて、適任いるのか。」
彼は目で確認する。情報が頭に流れ込む。そこでめぼしい人物を見つけた。
二コラ・ガードナー 女 19歳
統率:78 武勇:73 知略:81 統率:75 魔術:66
・弓が得意
・没落貴族の令嬢
・第15連隊隊長
ほぼ適任だった。しかし問題が一つ。それは女であることだった。副官が女=もうすでに予約済み。という感じが、社交界の中でもある。それを彼女が承諾してくれるかが問題だった。
「俺の清廉潔白を訴えれば大丈夫かな?」
凄く楽観的な考えで二コラの声をかける。
「すみません。ちょっといいですか?」
「はい。なんでしょう?」
端正な顔立ちだった。彼女の金髪は絹のように滑らかそうでさらさらしているのが感じられ、彼女の薄い青色の瞳は空のように澄み渡っていた。
「す、少しお話があるので、ついてきてください。」
少し噛んでしまったが、女慣れしていないルイはこれが精一杯だろう。
「失礼ですが、あなたは?」
二コラが問う。
「自己紹介がまだでしたね。このたびこの第8師団を率いることになった。ルイ・アルファードです。よろしくお願いいたします。」
ルイはなるべくにこやかに挨拶しようとする。顔が少し引きつってしまったが、及第点だろう。
「師団長ですか?!貴方が?失礼ですがおいくつですか?」
ルイが若かったので驚いたのだろう。
「今年で18です。」
「失礼しました。あまりにも若いので、そんなに若いのに師団長任命されるのですか。すごいですね。」
二コラが慌てふためいたのははじめだけで、あとは彼女の瞳に合う冷静さを醸し出していた。
「では、ついてきてください。」
ルイは二コラを自分の執務室へ連れて行った。
「それではお願いがあるんですけどいいですか?」
ルイは単刀直入に言う。
「この第8師団の・・・いや、僕の副官になってもらえないでしょうか?」
二コラの顔が驚愕に染まり、動揺する。しかし、すぐ冷静さを取り戻した。そしてニコラは、"何故私なんですか"という目をしてくると同時に、彼女の瞳の奥には極寒の地が見えたような気がした。
「あなたが適任だからです。それ以上もそれ以下もありません。」
二コラの顔が再び驚愕に染まる。女として求められたと勘違いしていたようだ。
「僕は、あなたに誓います。絶対あなたには手を出しません。絶対にです。そして良ければ、僕に力を貸してくれませんか?もちろん拒否していただいても構いません。断ったからって罰したり、降格したりはしません。気ままに答えてください。」
ルイは自身の清廉潔白を訴えた。
「もし、私が拒否したら副官はどうするんですか?」
二コラが疑問をぶつける。
「もちろんほかの人を探しに行きます。まあ、今回の戦争には間に合わないので、次の時になります。次の時が無ければいいですけど。」
ルイは正直にしゃべった。この大陸では珍しい彼の黒い瞳が嘘ではないことを物語っていた。
「・・・明後日には、決断しますので少し時間を下さい。・・・・・失礼します。」
彼女はそう言うと、部屋を出て行った。
「まあ、上々か。」
ルイの呟きが部屋中に響き渡った。
6月16日。
ルイは彼の執務室で出陣の準備をしていた。鎧を付け終わったと同時に彼の部屋にノックが響き渡った。
「どうぞ。」
ルイは明るく声をかける。彼は入ってきた人物がだれなのか想像がついていた。
「失礼します。」
その人物は・・・ニコラだった。
「それで、決めてくれたのかな?」
ルイは上司っぽく話す。さすがに今敬語じゃだめだと思ったのだろう。
「・・・副官やらせてください。」
二コラの瞳には決意の炎が燃え上がっていた。