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THE MANZAI20014 決勝 グループB第二組

食に対して異常なマニアックさを示すツッコミの箔座と、食どころか一般常識すら危ういボケのちゅうきちの織り成すラーメン店をテーマとしたズレ漫才で、グループBの幕開けとなったChile。

上々のウケと評価を受けて温まった会場に登場するのは第二組の木曽義仲。


木曽義仲(人力舎)

今永セイジ(35)ツッコミ担当

たかの実篤(35)ボケ担当

BGM

セイジ「はいどうも木曽義仲です、よろしくお願いします。」

たかの「家が買いたい!」

セイジ「・・・・・・金はあんのか?」

たかの「300万ほど」

セイジ「以外と持ってんだな」

たかの「豪邸を買いたい」

セイジ「豪邸なんてお前いくらすると思ってんだ。まあ300万もあれば頭金くらいには・・・」

たかの「一括で買いたい」

セイジ「割り込むな割り込むな!300万じゃ豪邸は無理だぞ」

たかの「セカンドハウスが買いたい」

セイジ「さっきから矢継ぎ早に!要求が多すぎんだよテロリストか!お前一軒目も買ってねえのにセカンドハウスはねえだろ」

たかの「買わねば」

セイジ「何だそのキャッチコピー。一括じゃ無理だよその額じゃ」

たかの「大丈夫もうすぐ増える予定だ」

セイジ「なんだ宝くじでも買ったのか?」

たかの「家を買う予定だ。一括で」

セイジ「だからその金どうすんだよ」

たかの「家を買うから増えるんだ・・・300万から一億300万円に一気に増える予定だ」

セイジ「は~ん、お前ひょっとして借金してんのか」

たかの「そうだ借金だ」

セイジ「お前どこの世界に金はあんのかと聞いて借金の額答えるやつがいんだよ。300万も何に使ったんだ」

たかの「恵まれない人々のために義援金を送った」

セイジ「そのチャリティーは恵まれてもいないヤツが借金をしてまでやっていい行為とはみなされねえんだよ」

たかの「世界から飢えをなくそう」

セイジ「まずはお前からなくしていけ!」

たかの「買いたい・・・どうしても買いたい」

セイジ「何なんだ一体!家なんてそう簡単に買えるもんじゃねえんだぞ」

たかの「家を買うために、まず、やっとかなきゃならないことがある」

セイジ「まずは目の前の借金を返せ!」

たかの「まず俺は、子役にならなければならない・・・天才子役として、デビューをせねばならない・・・」

セイジ「けっこうな歳だぞお前、無理だよ今さら」

たかの「大人になっても売れっ子街道を突き進んでいく・・・しかし、いつしか時代に忘れ去られ、俺は芸能界から下火になって消えていく」

セイジ「ずっと消えてるやつが言ってんじゃねえぞ」

たかの「ほどなく、突然の、潔癖キャラで再ブレーク・・・」

セイジ「聞いた話だな」

たかの「バラエティの司会をこなしいつしか冠番組も数知れず、テレビをつけて彼を見ない日はない・・・」

セイジ「坂上忍だろ!」

たかの「ああ~、坂上忍になって家を買いた~い、家を買うとか買わないとか堂々と発言できる立場になって毎週毎週、家を買いま~、す、とか買いま~、せんとか言ってみてえー」

セイジ「お前坂上忍になりたいのか」

たかの「なりま~、す」

セイジ「魔法少女か!言っとくけどお前は坂上忍にはなれねーぞ!ただなあ、俺の言うとおりにしておけば家だけは買うことが叶うかもしれない」

たかの「ホントか?」

セイジ「俺にまかしとけ!まずな、お前、1万円くらいは用意できるだろう」

たかの「可能だ!この世には消費者金融があるからな」

セイジ「いっとくけど消費者金融は貯金箱じゃねえからな。もっとまともな方法で用意しろ、お前のAランク越えの貧乏査定額は膨れ上がる一方だぞ」

たかの「1万はすぐに用意できるだろう、で、どうすればいいんだ」

セイジ「八百屋に行くんだ。ここは京都、季節は秋だ。この時期この店は一流の料亭の板前も出入りするような、野菜の品質には定評のある八百屋なんだ」

たかの「何言ってんだ、もしそうだとしても、八百屋に不動産物件は売っていないだろう」

セイジ「まあまあ、あんまり急ぐんじゃねえ、まずはちゃんと聞くこった。この店で一層目を惹く品がこの店の中央に飾られている、かごに盛られたそれは、独特の、そして高級な香りを漂わせている・・・秋口、そして京都の八百屋といったらそう・・・」

たかの「タマケツか・・・」

セイジ「使用する文字は当たってんだよ。何だタマケツって、下品だな!下品な間違いしてんな。マツタケだよ!この店の中央に飾られたマツタケは3万円。お前はいくら持ってるんだった」

たかの「何だよ何が関係あるんだよ、俺が持ってんのは1万円だよ!」

セイジ「だよな!だったら今が攻め時だぞ!普段は高級料亭がすぐに買い占めちまう、しかしこの日はたまたまその料亭が店休日と来ている。一流の店が出入りするとは言え、普段は庶民が気兼ねなく買い物できるような小さな店なんだ。そして今は夕暮れ時、閉店もそろそろ近くなってきた、まさしくタイムセールが開かれようとしている、そしてお前は運良く今、この店にて立ち会っている。店主がいま、3万円の札を、1万円に換えた~、さあ、1万円のマツタケ、買いますか、買いませんか?」

たかの「買いま~・・・すとはならないだろ普通!俺はマツタケを買うか買わないかで悩みたいんじゃないんだよ!そんなことしてる暇はねえ!一億円からすれば1万円なんてチリみたいなもんだ。でもしかしだ、それをコツコツ貯め込んでいつしか少年は豪邸を買える身分になっていくんだよ!」

セイジ「だったらたとえば交番の目の前に千円の入った封筒が落ちていたとしよう、お前はそれを拾うんだな?」

たかの「馬鹿にしてんのか!千円といったら一億円と比べたら10万分の1なんだよ!俺は千円を見てもああ、10万分の1が転がっているとしか思わねえ。お前、仮に10万分の1円が道端に転がっていたとして、拾う気になるか~?」

セイジ「千円は10万分の1円じゃねえぞ!それにお前は1万円なら簡単に使えないんだよな。矛盾してるだろ、その法則をつかえば1万円だって言ってみれば1万分の1円だぞ!お前は1万分の1円なら節約すんのかよ」

たかの「するわけないだろうそんなはした金~」

セイジ「馬鹿か!おなじこと聞いてんだぞ、お前の検索エンジンどうなってんだよ。なんなんだその条件の不一致!お前のその崩壊した金銭感覚じゃ、絶対に豪邸なんかにはたどり着けないからな!」

たかの「お前さっきから聞いてりゃなあ、失礼な言い草じゃねえか」

セイジ「じつに妥当だぞ」

たかの「お前、俺が何の考えもなしにただ単に金銭感覚を崩壊させているとでも思ってんのか」

セイジ「言ってる意味が分かんねえぞ!金銭感覚の崩壊という現象には、理性の差し挟める余地なんて1ミリだってねえんだよ!」

たかの「それは単純に、お前の思い過ごしだー!」

セイジ「何だ急に、昭和か!正義の見方という名をしているお前は昭和のヒーローか!」

たかの「とおぅっ」

セイジ「じゃねーよ」

たかの「俺は自分の金銭感覚を狂わせることであえて借金地獄という果てのない世界へと身を置くことにしているのだ。」

セイジ「あしたの見えねえ地球防衛軍だな。その手の与太話にあえてと使ってるやつとか一番信用できねえパターンだよ」

たかの「借金苦に光を失った俺は無軌道にギャンブルの毎日に浸った」

セイジ「人でなしだわ」

たかの「雪だるま式に増えていく借金、そこで詐欺まがいの悪い連中に釣られ、悪事に手を染めることもあった」

セイジ「よくもまあここまでぬけぬけとしていられるもんだな」

たかの「どれだけ悪事を働いてもよくてトントン、しかしすぐに増えていく借金の額・・・」

セイジ「社会の二等辺三角形があるとしたらお前は確実に底辺だ」

たかの「幾度目かの借金、プラマイゼロ。しかし不幸にもここで決定的な転落は訪れた、まさかの義援金300万円・・・」

セイジ「やっぱお前、馬鹿、確定だろ。まさかの、その流れでの義援金だったのか」

たかの「俺は幾度にも渡って多大なる借金とその返済という光の見えない闇黒のサイクルに果てのない車輪運動を繰り返していく1匹のモルモットに過ぎない。そしてそのたどり着くはずのない無限という道筋を駈けぬけたモルモットはひとつの真理に到達する。結局、真面目に働いて、稼ぐしかないと」

セイジ「当たり前の景色が違って見えてんだろ!お前はある意味幸せな野郎だぜ!」

たかの「そっから先の俺はもう邁進するほか道はなかった。借金を徐々に返済していき、100万、200万、300万・・・義援金で抱えてしまったはずの借金を俺はいつの間にか払い終わっていた」

セイジ「結局は最初からそうすべきだったんだよ、お前は」

たかの「まだまだ俺は、返し続けなければならないんだ」

セイジ「何を返してるんだ?無意味なもんを返済するくらいなら、買いたい家のために、まともにローンを組め!そしてそれを返済しろ!」

たかの「俺は歩を休めない!100万円、200万円、300万円・・・もはやありもしない借金を、払い続けることが、俺の生活自体へとまるで一心同体に重なり合った」

セイジ「もはや俺にはついていけない境地への突入だわ」

たかの「そしてとうとう、借金の返済額が、一億300万円へと昇り詰めた」

セイジ「いったいどこのヤミ金に返済して続けているんだお前は!素直に貯金でいいんだぞ、別に」

たかの「そこで俺はとある法律事務所に相談を持ちかけて、借金の過払い金請求が可能であることを知る」

セイジ「お前の馬鹿さ加減と一緒だ。巨額!」

たかの「過払い金は、なんと、ピッタリ一億円だった。俺はその金で一括で豪邸を買う」

セイジ「とんだ棚からぼた餅だな!今現在お前の部屋訪問したら大量のぼた餅に埋もれて窒息寸前のお前にもれなく出くわすわ」

たかの「今だ!今しかない!ぼた餅の土砂崩れに埋もれ全身べとついた状態でも構わない、もはや身なりなんてどうでもいい、今俺に家を買うか買わないかを聞いてくれ、お願いだ!」

セイジ「ほんとに喋れんのか、聞くぞ・・・」

たかの「はやくしてくれ!もう時間がない」

セイジ「じゃあ行くぞ。家を買いますか?それとも買いませんか?」

たかの「か、い、ま、~・・・・・・」

セイジ「おい、おい、しっかりしろ、しっかりしろ・・・ダメだ。どうも、ありがとうございました」

BGM

岡村「なんや、すごいネタでしたね」

矢部「社会の底辺を見てるようなね、こうならんとこう気を付けようおもうたわ。さて、審査員の感想を聞いてみましょう、志村けんさん」

志村「なんだか救いのない話しでしたね。貧乏で衰弱していく人が死に際に見た幻覚みたいなね。ボクがやるコントもこういう人たちよく出てくるのでキモチ、わかりますよ。よかったと思いますよ」

矢部「はい、ありがとうございました、続いては第三組です」

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