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THE MANZAI20014 決勝 グループA第三組

攻撃的な掛け合いに始まる二組目のプラスティックトゥリーは、二階から目薬をやってみたい、というテーマの漫才コントを、トコトン細部にとらわれる事で観客へのひっかかりを作りあげた。

刻み、というワードを連発することで分かりやすい笑いをつくり、好評を得た。


つづく三組目は、至近距離である。

至近距離(太田プロ)

岩渕司(33)ボケ担当

柄本清継(34)ツッコミ担当


BGM

柄本「はいどうも至近距離ですよろしくお願いします。俺らもこうして大きな大会に出さしてもらえることになりましたけど、ホンマ幸せやなあ思いますよね」

岩渕「まさしくそれこそ実力主義で勝ち抜いてんねやないか」

柄本「ぶっちゃけそうやけど、少しは控えめにならんかい。それはそうと、振り返ってみると一年いろいろありましたね」

岩渕「はいはい」

柄本「俺らもおかげさまで一年間忙しくさせていただきました、ぼちぼち世間も騒がしくなってきて今年もそろそろ終わりやなあ感じることが増えてきましたね」

岩渕「クリスマスも近かなって来たな」

柄本「クリスマスかいな。俺なんかは毎年ひとりさみしく過ごすんがもう定番ですけど、お前は今年のクリスマスに予定でもあるんかいな」

岩渕「なんや俺にデートのおさそいかいな」

柄本「ただきいてるだけや。自分のさみしさをなんで相方とのクリスマスデートで埋め合わせせなあかんねん」

岩渕「実をいうと今までお前に黙っててんけど、今年のクリスマスのことで困ってたことがあってな」

柄本「なになに、人に相談するほどクリスマスに思い入れがあったんかいな」

岩渕「そうやねん」

柄本「仕事でずーっとおんのにプライベートでの俺とのギャップハンパやないな。ならもしかしてお前姪っ子おったやろ、そのプレゼントに悩んでるとかなん」

岩渕「それはもうあげてしもうてん」

柄本「これから更に忙しなるかもしれへんけど、それはいくらなんでも早すぎるやろ」

岩渕「毎年恒例でな、11月中旬に送るようにしてん」

柄本「それはただのプレゼントやん!クリスマスちゃうで。お前自分の子とちゃうんやからそんな前々から準備しとく必要はないんとちゃうん」

岩渕「遅らすよりはいくらかマシやろう」

柄本「早すぎんのもおかしいやろが」

岩渕「姪っ子もこの時期に慣れてしもうとるからおっちゃんのクリスマスプレゼントまだこんの言うてるらしいで」

柄本「姪っ子も姪っ子や」

岩渕「遅れんように毎年定期便で花キューピットと決まってんねん」

柄本「もっと可愛らしいオモチャとかにせえよ、なんで花キューピットやねん。小さい子に上げるもんちゃうやん、どっちか言うたら企業のあいだとか世慣れたもんどおしでつかわれるもんやで」

岩渕「それは人それぞれやないか。うちの姪っ子はオシャレやねん」

柄本「まだ4歳やん。ませてんなあ。ほんで花キューピットやったら時間の指定は綿密にできるやん」

岩渕「そうや、だからこそ毎年お世話になっとんねん」

柄本「それやったらせめてクリスマスの直前くらいにしとけよ普通」

岩渕「クリスマス時期の混み具合は想像の域を軽々超えてきよんねん、遅れてもうたらどないするんや」

柄本「お前の姪っ子に対する感覚、取引業者に対する感覚と近いねん。一ヶ月以上前倒しするくらいやったら俺からすれば遅れても構わんおもうねんけど」

岩渕「もう姪っ子の中では確立されたもんがあんねん。下手に遅らせてしもうたらおっちゃん死んだんちゃうんかいうて無垢な存在を泣かせてしまうことになるやんけ」

柄本「ややこしい関係になってはるわー。もはやしがらみ以上やで」

岩渕「姪っ子の件はもう済んでんねんから安泰や。それよりどうにも解決できへん問題があるんや」

柄本「そうやったそれを話さんといかんかったわ」

岩渕「今年のクリスマスのことや」

柄本「それでなにが困てっんねんな」

岩渕「実は俺、毎年決まったメンバーでクリスマスをやるようにしてるんや」

柄本「お前そんなんしてたんかいな、全然知らんかったわ」

岩渕「まあ、俺を含めて男3名女3名の固定メンバーやねんけど」

柄本「うわっ、めっちゃ羨ましい、合コンやんそれ、絶対楽しいやんか」

岩渕「まあはたからするとそう映るわなあ」

柄本「いや本人たちはもっと楽しいで。なんで黙っててん、俺も参加したいくらいやわ」

岩渕「クリスマスに相方とパーティーはないやろ。まあ今まで話さんかったんはその必要がなかったからなんやけど。去年までは問題なくやってこれたんやから」

柄本「なんやねんこのギャップ!お前ええなあ、俺毎年ひとりやで」

岩渕「いうとくけど今そんなたるみきった状況とちゃうからな」

柄本「なんかこじれたんかいな」

岩渕「そうやねん。毎年恒例のプレゼント交換があってな、そこで問題が生じてんねや」

柄本「なんがあったんかしらんけどももういっかいだけ言わせてくれ、お前めっちゃ楽しそうやん」

岩渕「だからちゃうねんて」

柄本「なんでやねんな」

岩渕「ただ交換するだけやったら面白みがないからすこし趣向をかえて、ひとりだけはプレゼントふたつもらえる権利をもてる、そして外されたひとりはさらに罰ゲームをせなあかんルールをつくってるんや」

柄本「お前らすごいやん。やっぱどう考えてみても楽しいはずやで」

岩渕「そうや。最初のほうはよかったんや。じゃんけんで勝負をする、罰ゲームは全員からのしっぺ攻撃と決まってたんや」

柄本「和気あいあいとしてるやんけ」

岩渕「ところがな、それが定番化しすぎてそろそろ飽きがきてしもうてん」

柄本「年に一回だけやのにそんなもんなんかいな」

岩渕「やり続けていくと人間には変化が必要とされ始めんねん」

柄本「ふかい話やな」

岩渕「常識や、俺らはそれを身をもって思い知らされたんや」

柄本「重大すぎるやろ、もっと力抜いてみたほうがいいと思うで」

岩渕「深く関わってしまうと、そう簡単にはいかへんようになってくんねん、そんでな、その、じゃんけんで決める、というのを変えないかん、実はその重責を、俺が背負わされることになってしもうたんや」

柄本「重い重い、重すぎるで。それやったら俺にまかせえや、考えたるから」

岩渕「ほんまか?ホンマ感謝するで」

柄本「ええよええよ。それやったら、あっちむいてホイでええんちゃう?」

岩渕「えっ?」

柄本「だからやね、いままでじゃんけんやったんやから、それにプラスしてあっちむいてホイをすればいいんちゃう?」

岩渕「それはアカンで、あっちむいてホイいうたらさいごに指を上下左右に動かさなアカンやろ」

柄本「当たり前や、それがルールやねんから」

岩渕「そんときにや、近くに置いてあった箸に指がぶつかってもし転げでもしたらどないすんねん」

柄本「そんなん誰かが拾って戻せばいいだけの話しやんか」

岩渕「アホか」

柄本「何がやねん」

岩渕「俺らはすでに、戦場で育てられた女子高生みたいな状況やねんぞ」

柄本「なんやねんなそれは、どんな状況かまったく理解できんぞ」

岩渕「女子高生いうたら多感な時期でやな、箸が転げても笑うてまうくらいな年頃やねん」

柄本「それは知ってるよ」

岩渕「しかし俺らに蔓延するマンネリはもう度を超えてしまっとんねん、いわば戦場や。戦場いうたらそこいらじゅうに地雷がバラまかれとんねん、そんな中でうっかり箸でも転がしてしまえば地雷が爆発して死傷者が出てまうやんか」

柄本「どういう状況やねん」

岩渕「もう凄まじい均衡状態と思うてもらって構わへん」

柄本「それほど危ないパーティーなんてどんなパーティーやねんな。ほなわかったわ。なら危なないようにすればええねんな。やったらあれや、画用紙を用意して、六本線を引くねん、それを線でつないであみだくじにすんのがいいで」

岩渕「ふざけてんのか、あみだくじくらいで打破できるなまやさしい状況ちゃうんやぞ」

柄本「どういうことやねん」

岩渕「もっともっと、突拍子もないようなアイデアは発想できへんのかいな」

柄本「それならわかったわ。簡単や、アレしかないで」

岩渕「ええのがあるんかいな」

柄本「もちろんやで、俺に任せときいや。まず最初にヘリを六機用意せえ」

岩渕「なんやねんなヘリって、お前一機用意するだけでも破格やぞ、それが六機やなんてそんな億単位の金誰が用意すんねん」

柄本「でも突拍子もないことにつながっていけばええねんやろ」

岩渕「そうなるんやったらまかせるけどもやね」

柄本「まず、金は事後請求や。もちろんゲームに負けたもん持ちや」

岩渕「なるほど、罰ゲームな」

柄本「そうや、続きを聞きや。ほんでまず六人を目隠しでそれぞれのヘリに乗せて上空に連れて行くんや」

岩渕「もうその時点で全員罰ゲームになってもうてるやないか」

柄本「何をフライングしとんねん、まだ序の口や。そんでヘリを上空に並ばしてやね、それから六機それぞれが長いロープを陸へ向かって垂らすんや」

岩渕「ロープなんてどうすんのかいな、まさかそれを伝って俺らが降りていかなあかんとかやないやろな」

柄本「いやいやそんなに単純やあらへんで」

岩渕「まだあるんかいな」

柄本「当たり前や。ヘリは上空でキレイに並んどんねん、そこをうまく利用せん手はないやろ」

岩渕「どういうことやねん」

柄本「六本の隣なりあったロープがたて方向に下がってるやろ」

岩渕「おう」

柄本「その間をな、更に細かくロープを、今度はよこ方向へとそれこそ何本ものロープをつかって隣なりあった六本のロープの間隔をつないでいくんや」

岩渕「いまいち何言ってるかわからんわ」

柄本「なんやイメージできへんのかい、つまりや、ロープを使って巨大なあみだくじをつくんねん」

岩渕「なんやねんそれ。だいいちやな、ロープとロープを何箇所もつないでいくってそんな危険なことを誰ができんねんな、まさか俺らちゃうやろな」

柄本「お前ら素人にそんなことできへんよ、そこは世界の戦場を渡り歩いた一流の特殊部隊を雇うねん」

岩渕「また金かかるやん。特殊部隊六人なんてヘリ六機をレンタルする値段では済まんぞ。つまりは費用は全額罰ゲームに回されるっちゅうことやろ」

柄本「そうや、罰ゲームのリスクは高ければ高いほどオモロなるからな」

岩渕「どんだけリスクをインフレさしとんねん。でも考えてみいや。戦場を渡り歩いた一流の殺人兵器がやな、こんな日本人男女6人のためのわけのわからん任務にいきなりそいつらの誰かが疑問を抱きよったらどうすんねん、キレられたら俺たちひとたまりもないぞ」

柄本「そんだけ金は弾ませるから心配すんなや」

岩渕「俺らの金やねんぞ。それに、それもあるかもしれんけど、ある意味ここでは話は別やで、一流の人間の考えてることなんて一般人には到底理解できへん、おそらく金というよりも快楽を追求してるはずや、そうなってきたら俺らみたいな連中のためにやな、こんな無意味な任務を遂行せなあかん自分にいつ憎悪を感じてしまうかなんてわからんわ。はっきり言うて時間の問題や」

柄本「大丈夫やて、一流ならば簡単にコトを済ましてしまうよ」

岩渕「俺が言うてるんは別の論点や!それをこなす技術くらいはあるに決まってるよ、むしろそれがギリギリのくらいのなみの人間のほうが逆に都合がええくらいやがな。しかしそんな高度な任務を簡単にこなしてしまいよる別次元におる神セカイの住人いうたらやな、俺らがなんど生まれ変わっても到達できへんくらいの遥かなるプライドがそびえ建っとんねん、問題なんはその自尊心のほうや、一般人のお前がそれをどうやとか勝手に決めつけんなや」

柄本「でもそれも含めてスリルちゃうん、殺されるんは一番ハラハラすんで」

岩渕「極限のスリルやんけ」

柄本「極限なんかまだまだこれからや、なんとか無事に神の人間たちをプライド傷つけんと巨大なあみだくじは完成すんねんけどね、つぎこそお前らの出番や、それぞれのヘリからやね、お前ら真っ逆さまに降りて行くんや」

岩渕「俺たちは特殊な訓練はいっさい受けてへんぞ、恐怖で一ミリも動かれへんに決まってるわ」

柄本「そこはプレゼントへのモチベーションうまく使ってどうにかせえや」

岩渕「お前な、俺らの毎年用意するプレゼントの緩さ加減を見くびらんといたほうがええぞ、生半可な気持ちで心許してその秘密の扉へ近寄ったなら、それを期に転落の人生が待ち構えるかもわからんぞ」

柄本「どんだけ尋常やないねんな」

岩渕「それに真っ直ぐ降りるだけやったらまだしも、死ぬ思いでたどり着いたんがあみだくじのよこのラインのロープやったらそんときの絶望とどう向き合っていかなあかんねん」

柄本「もちろんやで。強制的に隣のロープへと移動していかなあかんわな」

岩渕「よこ移動で浴びせられる風圧のえげつなさ考えたことあんのか」

柄本「そこは死ぬ気でくぐり抜けるしかないやろ」

岩渕「そらおのおの死がかかってる真正の死ぬ気やからホンマに死ぬ気でいくことにはなるやろうな」

柄本「そうや、すべては意気込みにかかっとんねん」

岩渕「あちゃー、やってまいよたわー」

柄本「は、何をいうてんの急に」

岩渕「今までの勢いに水を差すようでホンマに申し訳ないけどな、今な、俺、不幸にも盲点を垣間見てしもうてん」

柄本「なんやねんイキナリ、この計画に手抜かりなどないはずや」

岩渕「それがあんねんて。ヘリを上空に飛ばすには警察へ届け出がなければあかんやろ、そんでこの命を賭した戦いの火蓋に向かって日本の警察がそうやすやすと申請を許可するわけがあらへんわ。あかん、あきらめなあかんわ。やっぱりこんなん現実的ではあらへんかったわ」

柄本「なんやますます好都合やないか」

岩渕「どうしてやねん」

柄本「警察の許可が降りんのは確実や、ということはゲリラしかあらへんやん。つまり警察に取り押さえられた時点で関係者全員アウトや」

岩渕「逮捕されるんかいな、そんなん無理やで」

柄本「何をいうてんねん、これでまたひとつ罰ゲームのグレードが上がったやん」

岩渕「お前生死のつぎは罪状を持ち込んでくるんかいな」

柄本「いよいよリスクが熟成し始めたな」

岩渕「お前警察に見つかったときの俺らのモチベーションにもう少し親身になってくれよ、命をなんとかとりとめた人間みながすぐに向かっていかなあかん場所が刑務所の中やと決まっとる状況なんて、これ以上に虚しい仕打ちはないぞ」

柄本「そんなに心配すんなや、警察も案外節穴かもしれへんから」

岩渕「そんなこといい出したらキリなくなってくるわ。逆に目ざとい可能性だって十分あんねんぞ。そうなってくるとまたひとつハードルは上がって行くねんで。俺たちが仮に死者をひとりでもだしてみい、それこそムショから一生出てこれへんようになってまうぞ」

柄本「罰ゲームのためや、そこは我慢するしかないやろ」

岩渕「もう誰ひとり死人を出すわけにはいかんぞ、みな必死でやり通すと思うで」

柄本「せやろせやろ。こっからはいたちごっこやな。いかにリスクを高めていくかやで」

岩渕「なんやと、燃えてきたわ。こっちかて負けへんからな」

柄本「ようし、まずお前ら全員に賞金首の情報をリアルタイムにばらまくねん」

岩渕「何してくれんねん、こっちは袋のねずみやぞ」

柄本「これで緊張間を上乗せすんのに成功や」

岩渕「炊きつけられたらこっちはますますタイム伸びていくばかりからな、成功しても知らへんで」

柄本「ただ今回ばかりはすこし現実的なラインを狙っていくねん」

岩渕「なんのことやねん」

柄本「それこそ情報流すんを一流の殺し屋集団にしてもうたらすぐ終わってしまうからな、そこはリアルにB級路線や。殺し屋のレベルを二流もしくは三流以下にすんねん。間に合うか間に合わへんかギリギリのラインが一番ドキドキするからな」

岩渕「いうとくけどそんな生ぬるい連中に、俺らの燃え盛るモチベーションにはたどり着くことは絶対できへんぞ」

柄本「それやったら秘策を使うまでや。徐々に垂れ流す情報の範囲を拡大していくねん」

岩渕「それをしてもうたらもうルール違反やないか。お前パンデミック知ってるやろ、お前のやろうとしてることはあれと同じ事やで。感染の連鎖がある一定のラインを超えてもうたらもうオシマイや、被害は一気に世界中に蔓延すんねんぞ」

柄本「だからこうすればいいねん」

岩渕「なにがや」

柄本「お前らによう似た人たちをあらかじめ探しといてやね、その人を指名手配の写真に使わせてもらうねん」

岩渕「どういうことやねん、ここに来て全く理解できんくなったぞ」

柄本「想像力を働かせんかい、殺し屋集団が情報を得るとするやろ、そんときお前らの名前とお前らに似た人たちの写真とには情報の誤差が生じてんねん。そこで混乱すればするだけお前らには猶予が増えていく仕組みやねん」

岩渕「お前余計なことすんなよ!たくさん言わなかん事あるぞ、まず第一に、指名手配の写真に協力してくれる間抜けな人間なんておるわけあらへんわ」

柄本「そこはもう死を選ぶしかあらへんくらいの借金持ちに絞っていけばすぐ見つかるわ」

岩渕「そんなうまくいくわけあらへんし、万が一おったとしたら絶対顔みたないわ、地の底にまで落ちぶれた自分を見るようなもんやねんぞ」

柄本「そこはお前らがショック受けへんように顔は伏せておくわ」

岩渕「そうしてくれたとしてもやね、第二にや、殺し屋が間違えて俺らの身代わりの方を殺してもうたらどないすんねん」

柄本「罰ゲームのハードルどんどん上がっていくやんけ、棚ぼたや」

岩渕「アホか。罪の重さが地球の重さ超えとるわ。もしものことが起こってもうたら見ず知らずの人間とその遺族に対して生涯かけて償っていかなあかんねんぞ」

柄本「それこそ因果応報や」

岩渕「それと第三や、実はこれを一番言わなあかんねん。お前情報を流すんは一流の殺し屋ちゃうねんぞ」

柄本「そうや」

岩渕「お前二流三流の人間に顔の見分けなんてつくかいな、それを見通すんは一流の人間のみに限られてる芸当やで。お前のほどこしたトラップになんかまったく引っ掛かりよらへんわ、そいつら結局俺らの居場所に直行して顔もたいして確認せんと殺してすぐ帰りよるわ」

柄本「意味のないトラップやったかもしれん、それはすまんかった」

岩渕「でもよくよく考えてみたらそのほうがマシかもしれんわ」

柄本「なんでやねん」

岩渕「だんだん腹たってきたわ」

柄本「何がやねんな」

岩渕「今俺らは命をかけそしていろんな罪を綱渡りして頑張っとんねん」

柄本「いいことやないか」

岩渕「もし助かったとしてや」

柄本「それは素晴らしいことやで」

岩渕「ちゃうで。お前俺らのソックリさん使ってわけのわからん指名手配写真ばらまいてくれたやろ」

柄本「今さらそれがどうかしてん」

岩渕「アホか!全てが無事に終わったとしてそんなんがウチのご近所にバレてもうたらどうしてくれんねん。とんでもない恥さらしや。その結末を想ったらことが順調に運んでいたところで構わんと俺、飛び降りて死を選ぶかもな」

柄本「そこは頑張って生き延びていかんかい」

岩渕「無理な話しやで」

柄本「解かった、そこまで言うんやったらニセの指名手配写真は取り消しや」

岩渕「おう、そうしてくれると助かるで」

柄本「そん代わり指名手配の写真は本物になるからな、死のリスクは最大級やで」

岩渕「そんなもん余裕で受けて立ったるわ」

柄本「言うたな。ならもっと辛くしていくで。まず場所や。場所は石川県白山市上空で決定や」

岩渕「この前異例の竜巻被害が起こったとこやないか。ニュースで見たけど立つことすら不可能な状況やったで」

柄本「ますます本格的になってきたな」

岩渕「どんだけの恐怖を綱渡りさすねん」

柄本「いやいやまだまだやな。空中戦は完璧やとして、無事降りてこられたときのことを考えて地面に大量の、日本にはまだおらん強力な毒グモを放つねん、これで精神を追いやんねん」

岩渕「それはアカンやろ」

柄本「大丈夫やって、毒グモかてそれほど高いとこには上がってこられへんはずや、勝負はラストスパートの集中力のみや」

岩渕「俺が気にしてんのは毒グモの危険性ではない」

柄本「じゃあ何やねん」

岩渕「そんくらいお前が言うとおりどうにでもなるわ。せやけど、生態系はどうなんねん。そんな最強の生物やったら一気に日本の生態環境を分っ壊し寄るぞ。そうなってしもうたらもう永久戦犯や。さきのさきの未来まで俺らはずっと破壊者と罵られ環境団体ひいては多くの国民達のクレームを一心に背負つづけなならなくなってまうやろ」

柄本「そこは耐えていかんとしゃあないで。それが嫌なんやったら早いとこ終わらせて一目散に逃げていくしか方法はあらへんわ」

岩渕「最早俺らは何のためにたたかっとんねん」

柄本「希望を見失うなや。さあ、もうすぐ最後の試練や、大きな木箱でできた頑丈な宝箱を用意すんねん。頑丈やから叩き壊そうにも鍵以外にはとてもかなわへん。その鍵をやな、バラバラにして隠してしまう事で合う鍵穴を探さなアカンくなるんや」

岩渕「あみだくじだけで終わっても十分な戦いやったんちゃうんかい」

柄本「それではまだ締りがないねんて。その鍵をどこへ隠すかがポイントや。猛獣に飲ませんねん」

岩渕「そんなことしたらそいつと戦わなあかんくなるやんけ。いくらなんでも無理やがな」

柄本「よう聞かんかい、それで終わりなわけあらへんやろ。ヒグマとアムールトラにそれぞれ飲ますねん」

岩渕「ヒグマとアムールトラ言うたらそれぞれ最強の猛獣同士で、しかも天敵同士やないか」

柄本「その通りや。そいつらが殺し合いをやった後に、勝った方は必ず相手を食い始めるはずや。そこを狙うねん。いくら猛獣でも金属は溶かさへんやろう、そして勝ち残った猛獣が敗れた猛獣を食らっているときに、その裂けた胃袋を狙って鍵をゲットするという流れや」

岩渕「そんなにうまくいくとは限らへんやろが。せっかく裂けた胃袋からお目当ての鍵が見えていても、食らってる猛獣が相手の胃袋ごと鍵を飲み込んでしまったらどうすんねん、結局振り出しに戻るやないかい。そしてそれを繰り返していってみい。最後の最後でほかのすべての猛獣を食い殺した最強中の最強の猛獣を、か弱い人間に過ぎん俺たちが戦いを挑まへん限り、もう鍵を手に入れることはないんやからな」

柄本「せやから胃袋を食われんうちに隙を狙っていくしかあらへんやんか」

岩渕「それにやで、最終的に勝ち負けはあったとしても最強の猛獣と猛獣や、その戦闘力にそう大差はないはずや、死闘になるんは必至やで。猛獣同士の全力で殺し合っていく様子を間近で眺めながらその勝敗がついてしまうんをその真上で待ち続けなあかん状態って、その悲しみをどう表現していいんかわからへんくなるほどのレベルやで」

柄本「それはそうやな。でもな、このくらいの無茶をすれば、お前らのマンネリも解消できるんとちゃうか」

岩渕「十分や。でもしかしやで、こんなチョモランマ級のハードルに上げといて、プレゼントには何を入れんねんな!下手なもんやったらしまいのしまいに生き残った仲間うちに逆上されたすえ、殺されてまうやないか」

柄本「ええねん、何も入れんといて」

岩渕「どうしてやねん」

柄本「勝ち残った命が何よりのプレゼントやないかい」

岩渕「なるほどな。わかったわ、このおまえのアイデア、持ち帰ってみるわ。今日は柄本、ホンマおおきにな」

柄本「ああ、頑張りいや」

・・・・・・3年後。

柄本「お、お前、岩渕やないか。あのあとはホンマ大変やったやろ」

岩渕「柄本やん、久しぶり。ホンマに大変やったで。運よく死者はひとりも出えへんかってんけど、でもいろいろくらって3年間ムショ暮らしやったわ。でもあんときは最高やったで。出所した皆んなとこの前も話してたんや、あんときは最高やったな、あんなスリルは後にも先にもあらへんなあいうて。柄本にあえてラッキーやで、今年ももうすぐクリスマス会があんねんけど、どうや、今回もお前にひと知恵貸してほしいねんけども」

柄本「コワイコワイ!お前からは逃げさしてもらうわ」

BGM

岡村「長~い漫才でしたね」

矢部「ホンマですね、感想聞いてみましょう、関根勤さん」

関根「いやあ、すごかったね。ながいながい、でも長くても飽きさせない漫才だったと思いますよ、見事です。あ、それと、途中からボケとツッコミが完全に入れ替わってましたよね。でも、ボケ役の岩渕くんが、ツッコミに回りながらも、すべてを受け入れていくあたりがやっぱり最高のボケ役だなあと関心してしまいました。いずれにしても素晴らしいものを見せてもらったと思います」

小池「高評価でしたね」

矢部「ホンマですね。さあ、次はAブロック最終組の登場です」

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