THE MANZAI20014 決勝 ファイナルラウンド第三組
ファイナルラウンド二組目、無。
頭の中が勝手にタバコを吸うためにニコチンパッチを使っても禁煙が困難で仕方がない、というしゃべくりの前半部。
そして、怒濤の伝家の宝刀、おてもやん逃げ造が随所に点在する崩壊コラージュ漫才の後半で素晴らしい漫才を披露。
意表をつくオチ、ワキ腹痛た死で次回の流行語大賞獲得を固く誓った。
さあ、いよいよ、今大会のトリ、今や会場の期待を一身に担う冬虫夏草の登場!
冬虫夏草 (ワタナベエンターテインメント)
人見公(37)ボケ担当
丈縞みつる(36)ツッコミ担当
BGM
丈縞「あらためまして、冬虫夏草です、よろしくお願いします」
人見「お前にしては口数少なないか?緊張してるんとちゃうやろうな」
丈縞「いきなり何ぬかしとんねん、してへんいうねん。それよりなんや見覚えのある導入やねんな、気のせいやったらええけども」
人見「いきなりで申し訳ないけどやね」
丈縞「なんやねんいきなり過ぎるわ、展開早いな」
人見「実は俺、ず~っと気になってることがあってやね」
丈縞「もしかして、多世界相互作用理論が解明されたんちゃうやろなあ」
人見「詳しいやっちゃな~、お前、多世界相互作用理論言うたらあれやで、パラレルワールドいう現実とは別世界に関しての新理論でまだ最近提唱されたばかりのやつやないか。なんでそんなもんにまつわる怒涛の急展開をよりによって世界を差し置いて俺の口から発表せなあかんねん」
丈縞「それはもう気になってしゃあないねんて、さっきから俺、その方面についてのお前恐怖症やねんて」
人見「その方面ってどの方面やねんな、生まれてこの方聞いたことないぞそんな方面、ほんでなんやねん俺恐怖症って、お前失礼極まりないで」
丈縞「お前それはしゃあないねんで。多分俺以外にもいっぱいおるはずやで、お前恐怖症の患者」
人見「四面楚歌ちゃうねんぞ!俺どんだけ敵多いねん。そんなんやないで、俺が気になってんのはなあ」
丈縞「なんやなんや・・・」
人見「この表示は内税なんかなあいうことやけど」
丈縞「それは全ての国民が気にしてることやないか!ご存知の通り日本の消費税が今年4月から5%から8%に増税されてやね、税込と税別では価格にいままで自分が考えてる以上の開きが生じてんねん。ほんでたまに値札の表示がひとつしかあらへんときがあるやろ、迷うねん、そんときの財布の中身のデッドラインいうたらいままでの心構えではもう越えられへん、そうなりだしたら黙っておれへんのが民意いうもんやで、お前のいうたことはいわば現時点最大級の国民の関心の的や。どのくらい気になっているかいうたらやなあ、よる、寝られへんいうくらいやで」
人見「いつにましてようしゃべるもんやね~、そんなにしゃべられてもうたら、もう俺、しゃべらんといてもようなったわ、満腹中枢刺激しすぎちゃうか?」
丈縞「誰がダイエット食品やねん」
人見「譲るからお前しゃべれや」
丈縞「急にパスくれんねんな。それやったら言いたかったことあるけどもやね」
人見「なんやなんや」
丈縞「デジャブってありますやんか」
人見「・・・」
丈縞「いやあね、つねづねデジャブって怖いなあ思ててんけども・・・」
人見「うわあびっくりしたー」
丈縞「なんやねんないきなり、こっちがびっくりするわ」
人見「なんやねんいきなり」
丈縞「どういうことやねん、今本番中やぞー」
人見「なんの用やねんな、言うとくけど今本番中やからな」
丈縞「なにを繰り返してんねん、そんなんこっちが言いたいわ」
人見「なにをいうねん、そんなんこっちのセリフやぞ」
丈縞「真似すんなや!・・・こんな速攻でくるデジャブ、生まれて初めてやで」
人見「言っとったはずやけどな、だからプランを変更してん」
丈縞「なんのプランやねん」
人見「おう、もうそんな時期やったっけ~」
丈縞「なにいうてん、おい、おい、人見!」
人見「そこは絹ごしちゃうんかったんかいな」
丈縞「絹ごしてなんやねん、意味わからんぞ」
人見「おう、おう、そんなことやったらしゃあないわな」
丈縞「お前誰と話してん?ひとりごと?うわごと?なんやねん、わからんぞ!」
人見「ほな本番終わったら行くからな、待っとけや・・・・・・すまんすまん、デジャブがどうとか言うとったな」
丈縞「もうええで!デジャブの恐ろしさはいま目の前で思いっきり特濃のやつをまざまざと見せつけられたばかりやからな。それよりも聞きたいことがぎょうさん出来たわ」
人見「なんやねん聞きたいことって、それやったらはじめからそれを話せや!白々しいやっちゃなあ」
丈縞「それが今やねん!出来立てホヤホヤやで」
人見「どういう意味や?」
丈縞「お前今なにを大声で話しててん?ひとりごとなん、なんなんや、まったくわからんかったわ」
人見「なんでひとりごとやねん、いくらなんでもこんだけでかい声でひとりでしゃべっとるやつおったらソイツ百パーヤバいやつやないか」
丈縞「それお前のことやぞ!なにを自分に言い切っとんねんな」
人見「お前しつこいぞ、だからひとりではしゃべってへんいうねん」
丈縞「どう見てもひとりでしゃっべてたやないか!ちゃういうねんやったら一体お前は誰としゃべってたんや、幽霊か?透明人間か?」
人見「その可能性は否定せんけどもやね」
丈縞「なんでやねん!そんな救いようのない可能性は否定せんかい!」
人見「電話がかかってきたんや」
丈縞「この期におよんでなにを見えすいた言い訳をしとんねん。電話なんかどこにも見えへんかったぞ、お前右手をただ耳んとこにかざしとっただけやないかい」
人見「最新式やからな」
丈縞「嘘つくなや!そんな最新式聞いたことないぞ」
人見「嘘やないねんて」
丈縞「電話なんてあらへんやないか、お前誰かとしゃべっとったよな、どっから声聞こえてん、電話ならどこに向かってしゃべってん」
人見「説明すんのが難しいけども、まあ強いて言うなら頭の中で声が聞こえるいうか」
丈縞「そんなんありえへんで」
人見「ありえてるからしゃあないやんけ。最新式やぞ」
丈縞「いや説明にもなってへんし。最新式いうたら納得するとでも思ってんのか」
人見「身をもってやってもらわんと信じてはくれへんよなあ、とにかく相手の声は俺には聞こえてるし、ただしゃべってるだけで相手と通話もできるねん。まあ、いうても、右手を耳にかざしたんわ昔のなごりにすぎんけどもな、はははは・・・」
丈縞「いやいや、時代はバリバリ今や、ケータイやスマホの全盛期やで~。人間の尾てい骨に猿の時代のシッポのなごりがありますねん、みたいな、ようわからんユーモア言われてもやね、クスリとも笑い起こらへんで~」
人見「とにかく電話やってん、ほんで内村さんからの電話や」
丈縞「なんやねん内村さんって、ウンナンの内村さんかいな、いうても俺らそんなに親しくさせてもろてへんはずやぞ。ほかに内村さんいう知り合いおらへんで」
人見「ウンナンの内村さんなわけあらへんやろ世代考えろや、あの人お笑い第三世代やぞ、そんな人と仲良くさしてもらえる訳あらへんやろう」
丈縞「じゃあ誰やねんな!いくら若手でも、親しくしとる人の数人くらいはおるやろ」
人見「わかってへんなお前。内村さんいうたら家庭持ちで収録終わったらすぐ自宅に直行しはるタイプやねんぞ、そんな先輩とプライベートでの交友なんてあるわけあらへんやろ」
丈縞「じゃあ誰やねん内村さんって。俺の知らへんお前だけの知り合いかいな」
人見「まだいうてへんかったかいな」
丈縞「たぶん聞いてへんで」
人見「内村さんいうたらあれや、ウンナの内村さんや」
丈縞「・・・やっぱウンナンの内村さんで間違いなかったやんけ」
人見「ちゃうちゃう、俺がいうてんのはウンナの内村さんや」
丈縞「よう違いがわからへんで」
人見「ウンナや、ウンナ」
丈縞「なんやねんウンナって、ウンナンちゃうんか?」
人見「こっちがいいたいわ、具志堅用高か!アザといボケをいいやがってからにホンマ、ええかげんにせえ!あのひと天然に見せてはるだけで全部計算やからな」
丈縞「そんなこと知ったこっちゃないで。ボケやあらへん、俺のは本気や!なんやねんなウンナって、そんなコンビ名、俺、聞いたことないぞ」
人見「やっぱわざとやんけ~ええかげんにせえよ!ウンナはコンビやのうてコンビニや、お前どんだけ狙いすましとんねん」
丈縞「いやいや聞いたことないぞ~、どこの世界にウンナいうコンビニがあんねんな」
人見「大丈夫かお前、ちまたじゃ結構有名やぞウンナは」
丈縞「ホンマに知らんって・・・またや。自分の記憶に今日どんだけ自信なくさなあかんの」
人見「芝居か!嘘つくなや、アザといやっちゃな~、どんだけやねん、Nの位置の間違いかたまですべて緻密に計算しとるがな。お前、具志堅用高通り越して西村知美の域に達しとるぞ、もはや」
丈縞「ホンマに聞いたことないねんてしつこいなあ、西村知美のほうが具志堅用高より上とかしらんで。そんでNの位置ってなんやねん」
人見「お前偶然とはいわせへんからな、はじめウンナをウンナンいうてたよな、ふたつ較べたら最後につく、ンが余計やな」
丈縞「そら無理やり較べたらそうやけど」
人見「ンいうことはローマ字表記ならNやで、ほらー」
丈縞「ほらー、いわれてもやね、別にお前に鬼の首獲ったような顔されることちゃうで、ぜんぜん」
人見「ほんで次ぎや。コンビニのことをコンビいうてたよな、ほらー」
丈縞「おいおい意味わからへんぞ。俺かて別にコンビニのつもりでコンビいうたんちゃうからな、本気でいうただけや、コンビ名思てただけやで」
人見「ニが足りへんねんな、ローマ字表記ならNIや、ほらー」
丈縞「ほらー、やあらへんよ、意味わからへんわ。それかて無理やりやがな」
人見「お前なにNを移動さしとんねん、ハンターチャンスちゃうねんぞ」
丈縞「お前20年も前の平日、朝の帯番組のたとえ出されても、誰もおぼえてへん、いうねん。たしかに柳生博さんの司会でやっとったけども」
人見「まあそう話や、チャンチャンやでホンマ」
丈縞「いやいやいやいや、勝手に終わらすな。全然わからへんで。まず、内村さんの説明をせい!」
人見「そっからかいな、ホンマ手~かかるな~」
丈縞「しゃあないやんけ」
人見「内村さんいうたらやなあ、板橋にウンナあるやろ」
丈縞「だからそれを知らんいうとんねん」
人見「あんねん板橋に、ウンナいうコンビニが、そこのオーナーやねんけども」
丈縞「そんなひとがお前になんの用事やねん」
人見「そやねん、イキナリ俺に木綿豆腐買うてこい頼んできてん」
丈縞「なんやそれ、どういう関係性やねん、まったく見えて来おへんねんけど」
人見「内村さんいうたら季節の変わり目、3ヶ月にいっぺん湯豆腐を食べたなるんが恒例やねん」
丈縞「なんやそれ、ほんでそのひとおっさんやんな」
人見「そうやで」
丈縞「むしろよう3ヶ月にいっぺんのペースで済んでんなあ、おっさんやたら毎日食いたなってもおかしないくらいの食いもんやけど」
人見「そう言われたらそうやけど、そのかわりに食べたなるとどうにも止められへんねや」
丈縞「意味わからんぞお」
人見「正直俺もわかってへんねん、ただ従うだけや。あのオッサン対人恐怖症でやね」
丈縞「ようそんなひとコンビニのオーナーやろうとおもったな」
人見「基本的には誰ひとりこころ許してへん」
丈縞「まともに接客できへんのとちゃうか」
人見「基本いらっしゃいませもいわへんで」
丈縞「そんなコンビニ見たことないぞ~、完全に失格やがな」
人見「まあ場所柄めっちゃ繁盛してるみたいやけど」
丈縞「なんやそれ」
人見「そんで対人恐怖症やからほかのお店には行かれへんねん」
丈縞「どういうことやねん、それじゃ生活できへんやないか」
人見「だから自分とこのコンビニの食料品のみで基本生活してるんや」
丈縞「合点がいったぞ。自分の食糧確保のためだけにそのひと開業しよったかもな」
人見「まあそういうとこもあるやろね」
丈縞「どんだけダイナミックやねん」
人見「そんで自分とこには絹ごし豆腐が3丁あってやね、基本的にそれを買って帰りはるわけや」
丈縞「ふ~ん」
人見「内村さんの湯豆腐いうたらいつも絹ごしやろ」
丈縞「いやいや、知らんよ」
人見「俺はそう思うてた。しかし今日は無性に木綿豆腐しか受けつけへん気分やねんて・・・まあ、そうことやねん」
丈縞「だから尻切れトンボはやめてくれよ。内村さんいうこうも理解に苦しむ不思議キャラ持ってこられたらやね、いまいち消化不良やねんてさっきから、俺」
人見「いつも3丁ではすまへんねん、そんで追加の3丁をいつも俺、頼まれるんが流れでな、いつも内村さん宅へついでに呼ばれんねんけど」
丈縞「そういえばお前、極度のにんげん不信にようすんなり入り込めたもんやなあ」
人見「俺かて最初は警戒されてたいうねん。でも知らん間に仲良うなってたなあ、まあ考えてみれば不思議なもんやで」
丈縞「お前もようわかってへんのかいな」
人見「そんで、いつもやったら電話かかってくんのよる9時過ぎや。でも今日は木綿豆腐やろ。自分とこ絹ごししかあれへんから今の時間に電話かけてんで」
丈縞「そんだけか」
人見「そうや」
丈縞「そんだけの用事のためにお前THE MANZAIのファイナルラウンド中に電話をとったんかいな」
人見「俺プランを変えてんねや」
丈縞「なんやプランって」
人見「このケータイは基本的には現実の世界以外の周波数しか拾わへんねん」
丈縞「え?どういうこと?」
人見「文字通りや。たとえばもう死んだ人とかからかかってきよるがな」
丈縞「また意味のわからんこと放りこみよるぞコイツ~」
人見「事実やねんからしゃあないで」
丈縞「お前がおかしいんか俺がおかしいんか・・・」
人見「そんで俺、その現実外のケータイと普通のケータイとの2台持ちしててん」
丈縞「やっぱりお前がわからんわ・・・」
人見「2台持ちすると月々の維持費がかさばんねん」
丈縞「お前この状況よう普通に受け入れて対処してるよな、俺やったら絶対にできへんぞ」
人見「そんでプランを変更すれば月2000円が浮いてくんねん、大きいぞ~月当たりの2000円は~」
丈縞「お前死んだひととかからかかってくる電話が頭の中にあんねやろ」
人見「まあそう解釈もできるなあ」
丈縞「そう解釈しか出来へんいうねん。お前そんな危険なもんをよう持とう思たなあ」
人見「まあ残念なことにそれは自分の意志ではないんやで。」
丈縞「どういうことやねん」
人見「まあ、おいおい話すけどもやね、ほんで、現実世界以外の連絡はいうてもそんなにはないねや」
丈縞「それかて怖なるやろ」
人見「いいや、もう慣れてん、むしろ楽しいくらいや。ただ、困った事に、これ、着信音が頭ん中やろ」
丈縞「おう」
人見「だからめっちゃうるさいねん」
丈縞「なんやそれ」
人見「まあ2000円のためや思て我慢してるけども」
丈縞「お前もしかして2000円のためだけにその着信音を我慢せなあかんのか?」
人見「そうや、めちゃくちゃ心臓に悪いうえに頭割れるほど痛なんねん」
丈縞「アホか!俺やったら2000円ケチらんと静かなほうをえらぶで。まあひとの金銭感覚なんてとやかくいえへんけどもやね」
人見「そうやで。そんで自分勝手かもわからんけどやね、その着信音にはさすがに耐えられへん、ほんで本番中やけどでないわけにはあかへんかったんや」
丈縞「無視しとけば切れるんちゃうんか」
人見「無理や。湯豆腐んときの内村さんは執念深いんや、恐らく1時間でもベル鳴らし続けよるぞ」
丈縞「そら無理やな。なら本番中なんやからせめてマナーにしとけよ」
人見「お前根本的にはきちがえてんぞ」
丈縞「何がや!」
人見「バイブの揺れは頭蓋骨直撃や!着信音の比にもならん」
丈縞「サイレントは!」
人見「それやねん。実はコレをくれたんはある高度な存在でやね」
丈縞「正直それはすんなり納得できるぞ。お前の話しは信じがたいけどもでもそのくらいでないとつじつま合わへんからな」
人見「コレをくれたんはある任務のためらしいわ」
丈縞「それにお前が選ばれたんかいな」
人見「そうやねん」
丈縞「どうしてお前やねん」
人見「知らんよ。今夜もかかってくるかもわからへん、たとえ本番中でもサイレントにはできへんいうわけやで」
丈縞「俺ら漫才師ちゃうんか!せめてファイナルラウンドまではやめとけよ」
人見「無理や無理や。というのもコレをくれたんが・・・情報統合思念体やねん」
丈縞「知ってるぞーーそれ~~!!」
人見「なんや知ってんやったらはなしはやいやんけ、ドギマギして損したわ」
丈縞「涼宮ハルヒの憂鬱に出てくるやつやないかい!」
人見「そうなんか?それは知らんかったけども」
丈縞「知らんわけないやろが!それ以外には出てけえへんぞ!」
人見「お前がどういおうが関係あらへんよ」
丈縞「お前、それ、2次元やんか」
人見「正確には4次元やけどもな」
丈縞「ようわからんけど、そんなんで死人とかとしゃべれるんかいな」
人見「死人以外にもなんでもやで。この前おもろかったんが、ゴッホとしゃべったときや」
丈縞「なんや、ゴッホってあのゴッホかいな」
人見「そうや、有名な画家の。むこうの世界から電話があってやね、俺に、そっちの世界ではようさん俺の絵売れてるらしいやないか、いうてくんねん」
丈縞「ホンマにそんなんいうたんか?」
人見「当たり前や、嘘つくわけあらへんやろ」
丈縞「一字一句?」
人見「そうや」
丈縞「嘘つくなや!なんで関西弁やねんな」
人見「知らんよ。翻訳ソフトが入ってんねんって多分」
丈縞「でもなんで標準語ちゃうねん、訳すんやったら標準語のほうがええんとちゃうん」
人見「知らんいうねん、頭ん中俺やし、そこは俺に合わせてくれとんのちゃうんかい」
丈縞「まあそれやったらわからんでもないけども」
人見「気にすんなや。ほんでな、ゴッホがいうには、そんだけ売れてんのやったら今生活苦しなったからそっちの売上コッチに振り込んでくれいうねん」
丈縞「振り込んだんか?」
人見「お前アホか、あの世に向かってどうやって金なんか送金すんねん、ほんで百歩譲ったとしても、どうして俺がゴッホなんかに送金せなあかんねん、赤の他人やっちゅうねん」
丈縞「それもそやな。ゴッホもアホやで。でもゴッホの絵やったら、もうあの世では有名なんちゃうんか?真面目に絵~書いて生活すればええのに」
人見「それが1枚しか売れてへんらしいで、しかも安い値で」
丈縞「生前と変わってへんやん、まるっきり」
人見「境遇なんていつまでも変わらへんもんやねん、期待なんて禁物や!ほんで何か気づかんかった?」
丈縞「何がやねん、とにかくいろいろ突飛すぎてて受け入れるだけで精一杯や」
人見「そうやのうて、たとえあの世でも日常ず~っと続いとって、絵が売れへんかったら画家は生活苦で困りはてるいうことや」
丈縞「確かに~、貧乏で苦労するんはたとえあの世かて俺らと一緒や」
人見「な、おもろいやろ~・・・うわーーっ」
丈縞「どうした人見・・・もしかして、電話か!」
人見「お前レアやで、情報統合思念体からの連絡や、何といっても週3回しかないねんで」
丈縞「思てたよりレアちゃうやんけ」
人見「もしもし・・・そうなんすか、わかりました、ほな」
丈縞「何やってん」
人見「お前ラッキーやで」
丈縞「何がやねん」
人見「お前にも任務があって、お前に俺とおんなじ電話を送信したそうやで」
丈縞「どういう意味やねん」
人見「もうすぐ俺とおんなじ状態になるぞ」
丈縞「いらんいらん、そんなんいらんぞ~ハメられとるぞ俺~!陰謀や~」
人見「まあそんなにアセんなって」
丈縞「覚えとけよ~!情報統合思念体~」
人見「どうやら来てるみたいやで、ほな俺からお前にかけてみるで」
丈縞「うわあ、うるさい!ほんで着信音細川たかしなのはなんやねん」
人見「レアやで」
丈縞「こんなん嫌やで、もしもし」
人見「な、ほんまやったろ」
丈縞「ようわからんねん」
人見「なにがやねん」
丈縞「電話かどうなんかわからんいうねん!近くでしゃべってるからや」
人見「それもそうやな、でもすぐに、いろんなひとから電話あるはずやで」
丈縞「変え方教えてくれ」
人見「なにがや」
丈縞「この着信音嫌や、俺クリスハートでギリギリいっぱいやねんから」
人見「お前案外狭いやっちゃなあ」
丈縞「しゃあないやろ、頭いっぱい鳴り響くねんぞ!細川の甲高い声がテンション高すぎんねん」
人見「知らんで、変え方なんて、今どきのスマホには取説はあらへんよ、自分でネットか何かで調べろや」
丈縞「お前の着信音ってなんやねん」
人見「決まってるやないか、着信音、1や」
丈縞「ええなあ。一番飽きのこないプレーンなやつやないかい」
人見「これはこれで甲高いことにはかわりないねんぞ、どっちもどっちやで」
丈縞「うわあ、なんや急に!お前の声と細川たかしが、急にダブって聞こえよるぞ!壊れたんちゃうか?」
人見「壊れてんのはおまえのほうや!ちょっと考えてみらんかい!キャッチホンや」
丈縞「あ」
人見「はよう取らんかい、待たせすぎると相手が不安になりよるぞ」
丈縞「うわあ、こころの準備出来てへんわ。死人やったらどうしよう」
人見「そんなんすぐなれるいうねん。それどころやないぞ、いろんなひとからかかってくんねんからな、はよ取らんかい!」
丈縞「もしもし・・・え!ホンマか!やったなあ、連絡ありがとな」
人見「お前喜んでるやんけ、ええことあったんかいな」
丈縞「誰やと思う?」
人見「もしかして、お前ちゃうやろな」
丈縞「・・・そやねん。未来の俺からやった、なんでわかんねん、お前すごいなあ!」
人見「で、なんの報告やってん」
丈縞「このあと俺ら、THE MANZAI優勝するで」
人見「お前ひきょうやぞ~。こんだけ大衆の面前でいうてもうたら優勝する以外なくなるやんけ~、タイムパラドックスは起きへんねんぞ~」
丈縞「よっしゃ~、人見、俺らこれまで頑張ってきてホンマよかったなあ」
人見「いくらなんでも喜ぶんは早すぎるやろ、結果が出てからにせえよ」
丈縞「帰ったら何しよかな~、でもチャンピオンいうことはそう簡単には帰られへんいうことやな、帰るんは、恐らく、明け方や」
人見「なにを暴走させとんねん、漫才中や!でももう収集付けへんくなってもうとるわコイツ、どないもこないもならんな・・・うわっ、びっくりした~もしもし・・・なんやて」
丈縞「レギュラーも決定やで~」
人見「丈縞!おい丈縞!」
丈縞「なんやねん、喜びに水を差すなや」
人見「ノンキすぎんねん!問題や、それどころやない」
丈縞「なにがやねん、俺らもうすぐ優勝すんねんでそれどころとかおかしいこと抜かすなや」
人見「今2時間後の俺から連絡があった」
丈縞「それがどうかしてん?」
人見「地球上が、オーストラリア大陸の一部を除いて、洪水に飲まれて潰滅状態らしい、命を取り留めるためには今すぐ本番をやめて逃げるしかないらしい」
丈縞「お前正気か!みすみす優勝を逃すなんてことできるかいな!」
人見「お前こそ正気に戻らんかい!みすみす命を逃すなや!」
丈縞「・・・人見。たとえ2時間という短い時間でも、THE MANZAIという夢の舞台でチャンピオンとして死んでいけるなら本望や」
人見「・・・ふははははは」
丈縞「なにがおかしいねんな」
人見「お前、おめでたいやつや」
丈縞「どういう意味や!」
人見「芝居はもうやめや」
丈縞「え!ちゅうことは嘘やったんか」
人見「まあ、そうやな」
丈縞「じゃあ地球が滅亡するいうのは・・・」
人見「それはホントや」
丈縞「え?」
人見「もう、沈んどんねん」
丈縞「どういうことや!意味がわからんぞ!」
人見「地球は今の今滅亡を遂げたんや。情報統合思念体が人類を救うため下した決断、物理的な救出が不可能ならば、これまでの世界とそっくりな仮想空間を作り上げ人類の意識のみをまとめてそこへアップロードさせるというものや」
丈縞「信じられるか!そんなんマトリックスやがな」
人見「そうや、まさしくあのとおりやで。そしてそれをソツなく行うためにはにんげんは笑うてる状態が一番なんや、だからまさしくこの、THE MANZAIファイナルラウンドの舞台、つまり俺らが選ばれたいうことやで。手術でいう麻酔みたいなもんやな、どうや、まったく気づかへんやったやろ」
丈縞「嘘や、そんなん嘘やで!」
人見「バッチリのリアクションや!こんなに慌ててるいうことは自分が違う世界へとまたいだことが本当にわかってへんなによりの証拠なんやからね」
丈縞「はっ!」
人見「あんまり重く捉えんなって、現実との違いなんて全くわからへんから、今までの人生と、ずーーっといっしょ。ほならここでやめさしてもらいますわ」
丈縞「なんや見覚えのあるオチやないか~、デジャブなんてもうええわ」
BGM
矢部「・・・・・・」
岡村「・・・なんやろ、めっちゃ怖いねんけど」
矢部「・・・一本目をはるかに超えて恐怖ですね・・・」
岡村「矢部さん、次いかな・・・」
矢部「・・・そうやね。さて、いよいよ次は今大会の結果発表です」