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THE MANZAI20014 決勝グループC第三組

グループC二組目。

怒濤の理数系漫才あ~りんを佐々木っていうな、に続く、前評判一位、今大会ダークホースの冬虫夏草は、謎の乗り物ディクシーについてのしゃべくりからの漫才コントで、会場を特殊な気分に満ちた笑いで包みあげた。


そして、伝説のオチ。


笑いを超えたホラー漫才が一気に今大会を飲み込んだ。

さあ、次なる伝説を、続く第三組は前評判がこちらも高いダークホース、狂気の芝居力を有するハイドロキシアパタイト。

ハイドロキシアパタイト(サンミュージック)

薦田孟(32)ボケ担当

逸喜涼(32)ツッコミ担当


BGM


薦田「はいどうも、ハイドロキシアパタイトです、よろしくお願いします」

逸喜「実は悩んでいることがありましてね、相談に乗って欲しいんですよ」

薦田「相談ですか、任しといてよ、この世の中のごく一部を除きほぼ全てのことに応じてやるからさ」

逸喜「お前どんだけ頼もしいんだ。でも助かるわ」

薦田「何ぐずついてんだよ早く言えよ・・・もしかしてお前、俺の応じれないごく一部がわかったのか!」

逸喜「なんでだよ!」

薦田「諦めるな!俺が応じれない方も説得しだいでは応じるぞ」

逸喜「だったら全能の神だよ。別に俺は言うか言わないかで迷ってるつもりはねえよ!急かすな!マイペースか!さっきからお前は自作自演だぞ」

薦田「そうか?スマンな。すっと言えるとなるとやっぱりごく一部以外ということになるな、スマン、俺の早とちりだったぜ」

逸喜「だから知らねえんだって!お前が相談に応じれるテリトリーは恐らくこの世の中のほぼ全域なんだよ。今にも消滅しそうなそれ以外の域がわかる人間なんていたらそいつはただの天才だ」

薦田「天才なのか!・・・実は俺、世界の偉人を調べ上げるのが大好きでな、是非名前が知りたい、名前を教えてくれ」

逸喜「存在もしない奴の名前なんて言えるわけ無いだろ!」

薦田「是非名前を教えてくれ」

逸喜「わかんないって」

薦田「頼む、教えてくれ、名前を教えてくれ」

逸喜「なんだコイツ・・・だから、わかるわけがないだろ!」

薦田「・・・お前の名前だぞ」

逸喜「・・・逸喜だよ」

薦田「ふつうの名前だな」

逸喜「悪かったな、今さら相方の名前聞いてんじゃねえぞ」

薦田「でも案外偉人には普通の名前が多いからな」

逸喜「確かにそうかも知れんが、俺には一切関係ないからな」

薦田「もし、お前が将来偉人の伝記に載ったとしたら、俺の名前、載るかな?」

逸喜「そりゃ相方なんだから載るだろうよ」

薦田「ニヤニヤ」

逸喜「なに緩んでるんだよ!期待すんな、俺が載る予定など一切ない!」

薦田「俺は常々お前は載るべきだと思ってる」

逸喜「便乗したいだけじゃねえか!お前の努力でお前オンリーで載れるんだよそもそも。でも侮っちゃいけないんだよな、この世にはびこる悩みごとのほぼ全域に応じる力を持ってるんだから。コイツは、何かを成し遂げるやつなのかもしれない・・・おい」

薦田「何だ」

逸喜「何でも応じると言ったよな」

薦田「そうだ」

逸喜「100万円くれっつったらホントにくれるのか?」

薦田「馬鹿なのか!」

逸喜「現金は無理なのかよ!信じた俺がバカだったぜ。お前何でも応じるんじゃなかったのかよこの嘘つきが」

薦田「100万くれとか、正気か?」

逸喜「なんだよちっちぇえやつだなケチ」

薦田「じゃなくて、何でも応じれるのにたった100万円しか要求しないのかお前は」

逸喜「ちっちぇえのは俺の方だったわ!どんだけだよお前、限度はねえのかよ。100万円てのはたとえだよ!相方に金の無心なんかするわけねえだろ」

薦田「お前優しいんだな」

逸喜「お前が偉大すぎんだよ!それに・・・コレは金よりある意味えげつない話なんだよ!」

薦田「え・・・」

逸喜「考えてんじゃねえ考えてんじゃねえ!何でも聞くんじゃなかったのかよ、案外もろいな。えげつないつってもお前に被害はねえんだ。俺個人にとって、金よりもえげつないことが起きてるって話だ。というのもこれは特殊な話しでな、あれは夢かうつつかもう判然としない出来事だった。ただし、うつつといってもただの妄想、夢とはいえあまりに明晰な夢だった」

薦田「よくわからんが、それがどうしたんだ」

逸喜「俺はある妄想に憑かれてしまった、しかしその妄想が結末へと旨く向かってくれずに困っているんだ」

薦田「どういう妄想なんだ」

逸喜「何故あんなことを思い立ったのかはわからない、どうにせよそれは強迫観念の塊であり凝縮であった」

薦田「追い込まれていたんだろう」

逸喜「いや、はじまりなどもはや判然としないのである、俺はそれにより追い込まれ何より今追い込まれている、それがはじまりをつくっていたとしてももうすべては溶けあって、すべてはばくぜんとここにある」

薦田「つまり互いにひきあっているということらしいな」

逸喜「ああ。俺は、夢か妄想で、ある情景をつくっていた、なぜあんなおかしな状況をつくったんだ」

薦田「聞かせてくれ」

逸喜「ああ。雨。雨宿りのため俺は古い古本屋に飛び込んだ、陰気な黴臭い店。ほどなく雨が止み俺はそこを出ようとした、すると、待て。入口を塞いだのは大男であり、この店の主人だ。2メートル以上の背丈のうえ、頑丈な逞しい肉厚で、抵抗すれば下手をすると命に関わるだろう。俺は奥へと座らされた」

薦田「まるで監禁だな」

逸喜「いいや、マサシク監禁だ。俺はこの後、本当に脱出不可能とされるのだから。最大の苦痛はふたつだった、トイレにいけない、歯を磨けない」

薦田「トイレはわかるけれど歯くらい我慢しろよ!」

逸喜「違うんだ、この話は焼肉をたらふく食っていてお腹がパンパンな上に、口臭が半端じゃねえんだよ」

薦田「なるほど入り組んだ話しをわざわざ妄想しがちなタイプだな、めんどくせえやつだなお前」

逸喜「で、店主が疑うには近頃万引きをした上、それをまるのまま売りに来る輩がいて、その主犯で黒幕はお前に違いない。どんだけ俺が抵抗してもなにも通じない、警察を呼べばわかるといっても、そもそもそいつは警察を信用していなくて、個人的に犯人に対し制裁を下したいと思っている、そういう話しだ」

薦田「・・・で?結末でどう困ってんだよ」

逸喜「そう。結末の手前でフリーズしちまって、それから俺はそれが気になって寝れなくなったんだ」

薦田「馬鹿か!自分で造った妄想なら自分で始末しろよ!じゃあ昨日から寝てないんだな」

逸喜「いいや、3日寝てない」

薦田「なんだそれ!3日!想像を絶してるな!何の意味があんだよ何で終わらねえんだよ、そもそもこの話し何なんだよ!自分いやがらせてんじゃねえよ、そして犯行に隙がねえんだよ緻密すぎんだよお前ドMか!」

逸喜「自分でもわからない自分がわからない既に自分をこえている」

薦田「訳分かんねえやつだなお前ってやつは!わかったよ、だったらもうこうするしかねえ、俺がその凶悪な店主をやるからお前がお前をやって、落とし前をつけろ!」

・・・・・・

薦田「シュッ、シュッ、シュッ」

逸喜「何で包丁研いでるんだ・・・」

薦田「ぺろぺろ、ぺろぺろ・・・」

逸喜「なめてんじゃねえなめてんじゃねえ!鋭い刃!牛タンの切り身が床に落ちちまうぞ!」

薦田「痛っ・・・」

逸喜「うあやっちまったみたいだな」

薦田「うへへへへへへ」

逸喜「ああ恐わい恐わい!コイツやっぱ異常者だよ・・・」

薦田「困るんだよねえ、貴重な本ばかり狙ってさあキミ」

逸喜「オレじゃねえオレじゃねえ」

薦田「素直になりなよ素直に、白状するだけでいいんだからさあ・・・シュッ、シュッ」

逸喜「これ以上鋭くなんないぞ、溶けちまうぞ包丁!」

薦田「シュッ、どんだけ貴重品だと思ってえんだオメエ!」

逸喜「わあ恐ええ、恐ええ」

薦田「どれくらい貴重かっつったらなあ!本を盗られるだろうが、そして同じ本を売りに来る!貴重な本だからどうしても取り戻さなくてはならないから買い取る!すぐ盗られる、売りに来る迷わず買い取る、コッチはキリがねえんだよ!一冊の本にいくら注ぎ込み続けてるんだこのボケええーー」

逸喜「もはやお前の責任だ!わざとだろ!わざわざ楽しんでやってんだろ」

薦田「楽しくなどない」

逸喜「セキュリティが甘すぎんだよ!一旦盗られるまではまだよしとしよう、理解の範疇だ、その後だ、一旦盗まれたものならノコノコ売りにきた時点で奪い返しゃいい話じゃねえか!何平和的に再び買い取ってるんだよ、だからつけ込まれていつまでもループするんだぞ!」

薦田「業界甘くみんなよ」

逸喜「どういうことだ!」

薦田「度の違いこそあれ古本なんて人から奪い取った本を並べてるに過ぎん」

逸喜「リサイクル業界の理不尽を自分で暴くんじゃねえ!」

薦田「逆のことをされたからってその所有権はそれを現状手にしているものに移行している、この業界の鉄則だ!」

逸喜「そう言われたら筋は通るがな・・・でも向こうは盗んだものだろ、だったら所有権はお前にあるんじゃねえのか!」

薦田「理解力に乏しいな・・・」

逸喜「なに空虚ぶってんだよ、失礼だぞ!」

薦田「いっただろ、われわれはみな度の違いこそあれ奪っているに過ぎんと、つまりみな盗賊。同罪だ!そして盗品の鉄則は現行たること、のみ。つまり盗品の確固たる所有権の証は、実際それに触れていること、もうそれしかない」

逸喜「なら盗まれないようにひと目のつかない場所に厳重に保管しろ」

薦田「馬鹿か!売れなくなるだろ」

逸喜「馬鹿はお前だろ!売れる前に何度も盗まれてちゃ無意味じゃねえか」

薦田「何を言ってる・・・正気か?」

逸喜「何疑ってんだよ意味が分かんねえぞ」

薦田「古本はどうやって仕入れてるんだ?知らねえみたいだな」

逸喜「知ってるよ、さっきまで話してたじゃねえか、客から買い取るんだろう」

薦田「買取りなんて聞こえはいいが、俺からすると奪っているも同然だ」

逸喜「どういうことだ」

薦田「古物商ってのは、振り幅はあっても共通しておよそ10分の1の値でしか買い取らない、うちはそれを徹底している。ここに並んだものは買値の10倍もするものだけだ、なのにバンバン売れていくもんだ、不思議だ!そして読まれた本をまたノコノコと売りにやってくる。買い取りにやってくる客たちを俺が密かになんと呼んでいるか知っているか」

逸喜「知るわけねーだろ」

薦田「奪われもの」

逸喜「恐いんだよ、お前のそういう考え」

薦田「意味がわかっただろ!俺たちはそんな奪われものの果てのない貢ぎにて生きている、ただ待っているだけの便利な盗賊だ!」

逸喜「暴くな暴くな!どんだけ暴露してるんだよ」

薦田「だからな、この本は、例え奪われ続けても10回奪われるまでは買い戻す権利がある」

逸喜「だからキリなく繰り返してんのか!でも早く決着つけないと10回超えちまうぞ」

薦田「俺の予測では今日、10回目の奪われものがやってくるはずだ」

逸喜「ちょうど今日だったのか」

薦田「そこで決着をつける。そのため黒幕であるお前の存在は必然的にここに捉えておかなければならない」

逸喜「・・・やっぱり目的は監禁か。しかしな、残念なことに俺は黒幕じゃねえぞ!」

薦田「お前、弱そうだな」

逸喜「なんだよいきなり」

薦田「大体映画のどんでん返しは弱そうなやつが黒幕で確定だ」

逸喜「他の類例も思い出す努力をしろ!」

薦田「全てが決着するまで、時を待つことにしよう、俺は本でも読んでいる・・・シャッ、・・・シャッ、・・・シャッ・・・」

逸喜「・・・地獄だ、さっきから腹パンパンだ、こいつの本をめくる音だけが唯一の変化、そして焼肉のあとの口臭ももう限界を超えている・・・」

薦田「・・・シャッ、・・・シャッ・・・」

薦田「シャッシャッシャッシャッシャッ」

逸喜「何があった何があった」

薦田「・・・シャッ、・・・シャッ・・・」

逸喜「元に戻ったな、なんだったんだ今のは、それにしても限界だ、ダメ元で交渉してみるか。あのう、すいません?」

薦田「・・・シャッ、・・・シャッ・・・」

逸喜「漏れそう何でトイレ貸してもらえませんか?」

薦田「・・・シャッ、・・・シャッ・・・」

逸喜「それと口臭がすごいので歯を磨きたいのですが・・・」

薦田「・・・シャッ、・・・シャッ・・・」

逸喜「いつになったらソイツ現れますかねえ?」

薦田「・・・シャッ、・・・シャッ・・・」

逸喜「ダメだ、こいつには何も通用しねえ、もう諦めてソイツを待ちつつ我慢していくしかねえ」

薦田「・・・シャッ、・・・シャッ・・・」

薦田「・・・シャッ、・・・シャッ・・・」

薦田「・・・シャッ、・・・シャッ・・・」

薦田「・・・シャッ、・・・シャッ・・・」

薦田「・・・シャッ、・・・シャッ・・・」

逸喜「単調すぎる・・・もうだんだんと限界が迫っているぞ、どうしようどうしようどうしよう・・・」

薦田「シャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッ・・・」

逸喜「何だ急にまた高速になりやがった、一体何があったんだーー」

薦田「シャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッ・・・」

逸喜「ダメだこの本何ページあるんだよ、もう限界だ、錯乱しそうだーーーー」

薦田「シャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッ・・・」

逸喜「ダメだあ、ぶりぶりぶりぶりぶりどばああああああああああ」

薦田「・・・シャッシャッシャ、あ、いらっしゃい。どうもありがとうございました」


BGM


矢部「最後ド直球の下ネタでしたけど、お食事中の皆さんお見苦しい映像をお見せしたことを謝ります。それでは審査員の感想です、渡辺正行さん」

渡辺「狂気のネタを演じるには芝居がうまくないとリアルにならないと思うんですが、この二人の演技はそうとうリアルに感じましたね、ゾッとするような怖さがありました」

矢部「ありがとうございました」

岡村「なんやわかりませんけどCグループ、コワいが連発してますね」

矢部「ホンマやね、それではCグループ最終組、ワイルドカードを勝ち抜いたこの組の登場です」

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